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Cheers インタビュー


音のない世界で

26/02/2015


 



音のない世界で
永田麻衣インタビュー


先天性聴覚障害を持つ永田麻衣さんが、ある出来事ををきっかけに一念発起してワーキングホリデーで来豪。いま自分のやりたかった夢を実現している。2月22日に、キャメレイで行われる永田麻衣さん講演会『私の幸せ』に先駆け、弊紙がインタビューを試みた。現状に至るまでに垣間見た、運命的な人とのつながりと人知れぬ努力に迫る。


先天性聴覚障害とは?

遺伝性もしくは妊娠中のウイルス感染などの何らかの影響により、出生時から聞こえの不自由な方を聴覚障害者と言う。聴覚障害になった部位により、外耳・中耳の障害による伝音性難聴や内耳、聴神経・脳の障害による感音性難聴、その両方が原因となる混合性難聴と分けられるが、聴覚障害の原因や種類、聞こえの程度がさまざまなため、聴覚障害者を分類し定義することは非常に難しい。また、耳から情報が入り難い聴覚障害者にとってコミュニケーションをとるには視覚からの情報が重要で、代表的な手話や読唇、筆談、メール、チャットなど可能な限りの方法で、少しでも聞こえを補い情報を得ようとしている。

 

 

1986年、愛知県で産声を上げた麻衣さんは、1歳のときに先天性の聴覚障害が判明した。幼少期はどのように過ごされたのだろうか。

幼少時代は自分の耳が聞こえない、周りと違う、ということは全然気にしておらず、普通に過ごしていました。ろう学校と保育園を交互に通っていた時期もありましたね。また発音を練習するセンターにも通いました。小学生でもハンデのことはそこまで気にせず過ごしました。担任の先生がすべての教科を受け持つため、とても理解がありました。
 

中学校にあがると途端に勉強についていけなくなり、周りのサポートがないと何もできないことを痛感。辛い日々を過ごし2年生に上がる頃、ろう学校への転校を決意。多感期の彼女にとってあまりにも辛い選択だった。

席替えも私だけは1年間同じ場所で、隣の人にノートを見せてもらったりして授業を受けていました。部活はテニス部に所属していました。最初は姉と同じバレー部に入部したかったのですが、顧問に「耳が聞こえない人は無理だ!」と言われてしまい…。帰宅部にしたかったのですが、部活に所属することが必須だったため、校長に絞られた卓球部、テニス部、文化系の3択からテニス部を選びました。同級生のテニス部員から耳についていじめられたこともありました。先輩たちに守られながらどうにか過ごしていましたが、2年生に上がる前に限界を感じ、転校を決意しました。
 

ろう学校に転校してからも自分の耳の聴力に悩むように。その頃は親を恨み、当たる時期もあった。

ろう学校に入るまでは、耳の聞こえない人はみんな、私と同じ程度の聴力なのだと思っていました。しかし電話をできる人も、口を見なくても話せる人もいることを知り、ショックを受けました。私の聴力は全校でも悪い方であることを知りました。しかし、ろう学校で覚えた手話でみんなとコミュニケーションが取れたため、会話などを学ぶことに関しては壁はありませんでした。反抗期であったせいか、耳の聞こえない娘を産んだ親を心から恨んだ時期もありました。いまでは「大変な思いをして育ててくれてありがとう」という感謝の気持ちに変わっています。
 

高校もろう学校で過ごした麻衣さん。短大へ進学するとともに、久々に健常者の世界での生活が始まった。

短大では周りがどうこうではなく、自分との戦いの日々でしたが、友達からのサポートを受けながら無事に卒業できました。バイトもなかなか見つからなかったのですが、理解のある場所と出会い、キッチンハンドとレンタカー業務のバイトにも励みました。
 

20歳からは約6年間、積極的に障害と折り合いをつけてOLとして仕事に励んだ。もともと海外に興味があり、昔から海外で生活してみたいと思っていたが、現状の生活の中で、なかなか海外生活への第一歩を踏み切れずにいた。そんなある日、思いもよらない出来事が彼女を襲い、転機が訪れる。

交通事故で死にそうになりました。「一度しかない人生、このままでいいのか?」と改めて考えるようになり、すぐに行動に移しました。
 

オーストラリアのワーキングホリデー制度と出会う。難聴とリンクする不思議なめぐり合わせ。

留学にあたり資料を集めていたところ、オーストラリアにワーキングホリデーの制度があるということを知りました。オーストラリアは人工内耳を作った国ということを知っていたので、その文化を目で見たかったという思いもあったのが、オーストラリア留学のひとつの理由でした。
 

英語圏のオーストラリアでは手話はもちろん、言葉も通じない。来豪にあたり不安はなかったのだろうか。

不安に思うようなことは正直何もありませんでした。日本でも言葉の壁にぶつかることは何回もあったので「何とかなるでしょう」という楽観的な考えでした。英語もまったくできないのですが、あまり深く考えず、手話というよりもジェスチャーでなんとかなる!と思っていました。




 

現在はお昼にドッググルーミングサロンでウォッシャーとして働き、夜はジャパニーズレストランのキッチンで働く麻衣さん。ドッググルーミングサロンのオーナーとの運命的な出会いとは。

求人サイトで仕事を探しているときに、ペットサロンの求人情報を発見しました。私は犬が好きでトリマーを夢見ていた時期もあり、経験はなかったのですが、そこで働きたいと思いすぐ応募してみたんです。いつも聴覚障害があることを伝えると断られるパターンが多かったので、半分ダメもとで連絡をしてみました。そうしたら、オーナーさんから返事を頂き、「私は聴覚障害者と一緒に働いたこともある。障害は関係ないから、一度会いましょう」と言ってくれ、面接の機会を与えてくれました。

緊張しながらペットサロンのドアを開けると、なんとオーナーさんが手話で挨拶してくれて、とても驚きました。面接中は夢中に手話でいろんなお話をしました。「ほかにも応募してくれた人がいるのでまた連絡します」との言葉で面接は終了しました。私は正直不採用になると思っていました。合否の連絡を待つ間もウォッシャーについて大切なことなど、色々と教えて頂きました。どうしても素敵なオーナーと一緒に働きたいという思いが通じ、「ぜひ一緒に働きましょう」という連絡が入ったときは、とても信じられなくて、ひとりでガッツポーズをしたのを今でも覚えています。
 

「ひとりでオーストラリアに来た勇気に感動をした」と語るのはドッググルーミングサロンオーナーのヒロミさん。IPG(International Professional Groomers)の資格を、オーストラリアでは日本人で唯一保持している彼女は、以前、手話通訳者の勉強をしていたことがあり、麻衣さんとは細部にいたるまで手話と読唇でコミュニケーションをとる。「休憩中は休んで」と言ってもノートを持って、ヒロミさんの作業する後ろへ立ち、カットの勉強をしている麻衣さんの姿が印象的だそう。現在はシャンプーやブロー、爪切り、耳掃除、あら刈りを担当している麻衣さん。「とってもやりがいがある仕事ですね。日々勉強の連続です」と自分のやりたかった仕事の夢を叶え、いま心から楽しんでいる彼女の姿はとても輝いている。

そんな麻衣さんが、ワーキングホリデーで来ている皆さんへ伝えたいこと。それは「やりたいことは失敗を恐れず、とことんチャレンジしてほしい」という思いだ。志を持ちオーストラリアに来た方が多い一方で、実際の生活は思い描いていたものと違う、という方は決して少なくないはず。困難を恐れず、本来オーストラリアに来てやりたかったこと、掲げた目標を思い出して、失敗を恐れず限りある時間のなかでチャレンジして行ってほしい。

2月22日には、キャメレイのノースシドニー・リーグスクラブにて麻衣さんの講演会『私の幸せ』もあるので、興味のある方はぜひ会場に訪れてみてはいかがだろうか。

 

取材協力:

Scissorhands Grooming
Tel:(02) 9747 1141
Shop3 2A-4 Burwood Road, Burwood,NSW
日本人経営のドーックグルーミングサロン。オーナーのヒロミさんは、オーストラリアで唯一日本人のIPG(International Professional Groomers)資格保持者。機械的に頭数をこなして効率よくグルーミングするよりも、一匹一匹の特徴を見ながら時間をかけてグルーミングすることを心がけている。
 

 

 

プロフィール

 

永田麻衣さん

1986年、愛知県で誕生。1歳の頃に聴覚障害があることが判明する。20歳から約6年間、OLとして勤めあげる。そのさい、同僚とは、筆談や話してもらったことを読唇してコミュニケーションを図ったり、ミーティングではPCテイク(ワープロソフト等を用いて文字を入力し、その画面を聴覚障害の方に提示する方法)を利用するなど積極的に障害と折り合いをつけて仕事に取り組む。オーストラリアは人工内耳を作った国で、ろうの文化をより知りたかったこともあり、ワーキングホリデーで10ヵ月前に来豪する。現在は手話ができるというオーナーの元で昼はドッグウォッシャーとして、夜は和食レストランに勤務し、二足のわらじで働いている。

 


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