インスタグラムで切り取る、日本のあまり見られない『日常』 写真家 Q. Sakamaki | Cheers インタビュー

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インスタグラムで切り取る、日本のあまり見られない『日常』

 

Documentary photographer

 

 写真家 Q. Sakamaki 

 

インタビュー

 

 

5月10日から6月9日までの間、ジャパン・ファウンデーション・シドニーのギャラリーにて写真展『Unseen Everyday Japan』が開催されている。インスタグラムを用いて、あまり見られない日本の『日常』を切り取った作品が並ぶ同イベント。今回弊誌ではそのキューレターを担う、世界的に活躍するドキュメンタリーフォトグラファー、Q. Sakamakiさんにインタビューをした。

 

 

以前オーストラリアに住んでいたことがあると伺いました。当時といまはどのように違いますか?

 

30年以上前にワーキングホリデーで来たことがあったのですが、当時と今とではもう別世界ですね。とりあえずビルが高くなったのと、昔はもっとワイルドでエネルギーが溢れてた。スワットとかも多かったし、麻薬も多かったですね。今は逆に安定はしてるけどエネルギーをあまり感じない。昔住んでたブロンテにも行きました。家は残ってたけどブロンテももうすごく変わってました。当時ボンダイやサリーヒルズ、パディントンには空き家やブロークンビルディングが結構あったけど、今はどこも高級住宅街ですもんね。

 

今回開催されるエキシビジョン『Unseen Everyday Japan』のコンセプトをお聞かせください。

 

簡単に言えば「日常」。インスタグラムを見てみれば日常の定義は人によって違います。でも食べ物とか、レストランとか。そういうありきたりな日常だけでは面白くない。それ以外にも、現実にはいっぱい起こってる。俗に言うフォトドキュメンタリー、フォトジャーナリズム。そういう世界の「日常」は特に日本ではあまり知られていないというか、興味がある人は興味があるんだけど、興味ない人はまったくない。あまり見られない「日常」。そういうものを日常的なものとして取り入れていきたい。それが、『Unseen Everyday Japan』のコンセプトです。

 

今回の写真の撮影方法というのは?

 

3人がアイフォンで、あとはDSLRもしくはミラーレス。「孤独死」という作品だけは、フィルム撮影しています。普通あのような状況ではアクセスができないんだけど、特別に仕事関係でアクセスしてて、撮影する時間は長く取れないので、コンセプトをマミヤの6×7を使用して、フィルム1本だけって決めて撮った作品ですね。

 

そのフィルムカメラとデジタルカメラ、携帯カメラ。すべて深く経験されていると思いますが、サカマキさんにとってそれぞれの立ち位置はどういった感じでしょうか。

 

やっぱりフィルムが圧倒的にすごいですよ。写真には白が大事なんですが、デジタルだとその白を出すのが今の技術では不可能だから。ハイコントラストのときは情報が全部飛んでしまう。ただし、フィルムから直接スキャンするとあまりデジタルと変わらないです。フィルムはプリントしてからスキャンすることで初めて良い色を出すことができます。だからフィルムはコストと労力がかかる。その意味で考えるとデジタルの方がいいかなと思うけど。クオリティだけで言えばフィルムですね。

 

なるほど。では逆にデジタルを使う状況とは?

 

デジタルは夜に強いのと、あと生産スピードですね。だんだんやっぱりみんな、私も含めてデジタル化してますよ。たまに、フィルムも撮影に持って行くんですけど、なかなか使わないですね。

 

サカマキさんのウェブサイトには、被災地や紛争地など多くの作品を残されていますが、どのような気持ちで現地に赴き、シャッターを切っているのでしょうか。

 

基本的に全部一緒なんですよ。「人間のドラマ」というか、戦争とか被災地とか何か有事が起こったときは、人間の凝縮した部分が現れる。せっかく生まれたんだから、その人間の凝縮した部分を自分なりに表現したい。何で人間が生まれて、何で生きてる? 何でいがみ合う? 何で愛し合う?とか。そういうものを自分なりに見つけて答えを出したい。普通の人間が一生かかってもわかんないこと、なかなか見られないことが、戦争の現場では短時間で見れた気になる。答えは出ないかもしれませんよ。でも少なくても片鱗だけでも経験できる。だから行っちゃうのかな。よく麻薬って言われるんですけど。

 

かなり危険な場所にも足を踏み入れているようですね。

 

間接的ですけど銃で撃たれたこともあります。カイロでリンチされて目隠しされた上に刑務所に4日入れられて、半分拷問みたいなことも受けたり。ブラジルではうまく友達になれたと思っていた人間から首を絞められて気絶していますしね。2003年、イラクにアメリカ軍が進行したときには、何か起こったときに逃げるチャンスがちょっとでも生まれるという理由で靴をはいて寝たりしていました。そういうのが後にPTSDで蘇ってくることがあります。

 

特に心に残っている被写体はありますか?

 

リベリアもすごかったけど、パレスチナは鮮明に記憶に残っています。パレスチナは世界の縮図で、すべてが起こる原因だと思っているんだけど、自分で理解しているようでまだやっぱり見極めてなくて。もっと何かあるんじゃないかと常に感じている。だから惹かれますね。あとブラジルも印象強いかな。自分でポルトガル語を覚えて、ストリートキッズとゆっくり時間をかけて友達になって入り込んでやってったから。逆に俗に言うホットスポット、いまで言えばシリアや北朝鮮など、時事的でジャーナリストがたくさん集まるようなスポットは意外と印象が薄かったりしますね。ホットスポットよりも自ら赴くフィーチャースポットの方が印象深いです。

 

写真というツールを通じて世界にどのようなことを表現したいと考えていますでしょうか。

 

自分で感じたエモーションを少しでも人とシェアをしたい。単にそれだけですね。エゴの部分でもあるかもしれないけど、自分と一緒に、何か少しでも楽しいことやプラスになれるようなことを共有できたらと思っています。

 

動画の進歩も目覚ましいですが、動画での作品などもありますか?

 

最近また動画にも興味が出てきました。デジタルカメラに搭載される前に何回か自分でもやってましたけど、一度決定的なスティールを逃してからは、動画をやらないようにしていました。総合プロジェクトとして動画は可能ですからね。

 

オーストラリアで撮りたい場所はありますか?

 

以前に自分が住んでたところ。ブロンテ周辺とか自分が関連したパーソナル的な場所ですね。オーストラリアはいつでも戻って来れると思ったけど、気が付けば30年が経ってしまいました。戻ってくるからには大きなプロジェクトをやりたいという気持ちがなかなか戻れなかった理由のひとつです。例えばアボリジニは来たからには撮ろうと思うけど、アボリジニのプロジェクトやるのってすごく時間かかるから。

 

以前はライターをされていたとバイオグラフィーで拝見しました。ライターを目指すきっかけ、写真家を目指すきっかけとなったのは、それぞれどのようなことだったのでしょうか。

 

写真をやってみたいなと思ったきっかけは、実は30年前オーストラリアに来たときでした。知り合いの知り合いが写真をやっていて、チラチラっと見て面白いなあっと感じ始めました。その当時は『小説野生時代』に小説を投稿していたりして、小説家を目指していたこともあって。駆け出しのライターになってからは、原稿と写真の両方をやりました。写真に惹かれたのは、自分の感じたこと、表現したいことを文章で書くよりも、写真の方がより早く、自分が行きたいレベルまで行けるかなって思えたから。文章だと思いを正確に伝えるレベルまで行くには時間がかかると思いました。日本語や英語でも書けるけど翻訳にするとまたニュアンスが変わるし。でも写真なら、より世界とシェアする何かが掴めると感じて。

 

今興味のある被写体は何でしょうか?

 

いままで日本を知らなかったから日本に興味があります。2009年から「チャイナアウターランド」というコンセプトで中国をやったら、今度は日本にも興味が出てきて、そこに震災が起こったわけですが。自分のアイデンティティに関わるようなもの。日本人のアイデンティティ、もしくは人間のマイグレーション的なアイデンティティ。人間はひとつの場所から移動することは歴史を見れば当たり前なことで、それを自分なりに表したい。自分自身が小さい頃から、父親の仕事の関係で色んなところに引越ししたことが、今考えると自分の行動や発想に大きい影響を与えているのかなと。戦争でたくさんの場所に行って、いま外から日本を見たときに、自分のアイデンティティという意味で中国や日本を見つめたくなってるんだと思います。

 

北朝鮮やシリアなどの情勢が不安定な地域がありますが、戦争と向き合ってきたサカマキさんにとって、いまの日本をどう感じていますか?

 

日本の中にある戦争に興味がありますね。戦後、当時は自分も戦争に全然関係ないと思ってたけど、ある意味日本は今でも戦争が続いている。逆説的な意味で。特に私が海外から見ていると日本にはいっぱい問題がある。戦後、日本は外部の力で180度コロッと変わっちゃったから。普通は経験を踏まえながら国民皆で考えながら徐々に変わっていく、成長していくものなんだけど、日本てその経験を感じたり、考えたりすることを遮断させられちゃったでしょ。憲法もアメリカから持ち込まれたものだし、戦後、戦争は日本が悪かったっていう風潮になって。もう戦争のことを言うこと、考えることを事態がタブーになったから。それ自体がイコール戦争が続いてるんですよね。それをビジュアル的にどうやるかは難しいんですけどね。食べ物ばっかりがインスタグラムにあがってるのも、ある意味いまだ続く戦争の影響かもしれないですね。

 

サカマキさんの背中を追うように、世界を回り、写真や動画をネットで配信しながら旅をする若者も最近では目にします。写真家を目指している若者にアドバイスをお願いします。

 

「写真は写真じゃない」。写真の裏にある自分の考えや感覚、一番気持ちいい何か訴えたいものを見つけて、自分に正直になること。それを写真でいかに表現するか。要するに自分を見せたいんだけど、例え自分が写ってなくても、本当のコンセプトは自分。そういう考え方が写真ですね。ドキュメンタリーで行くのならそこにドキュメンタリーの定義を入れて。あと撮る前には常に周りをみる。決定的チャンスを逃さない意味もあるし、私の場合、セキュリティ面の問題もありますが、写真のメインの被写体以外の周りをコンセプチュアル的に見ることですね。写真はイコール時代と社会と常に繋がってるという意識。文化的なこととか、人間の色んなうねりとか、そういうものが絶対にあるから。

 

最後に、今後のご予定をお聞かせください。

 

ニューヨークに戻ってから、夏は日本の東京写真美術館ワークショップを海の日を挟んで前後3日間で行います。よかったらぜひお越しください。日本ではまだ終わらない戦争の視察を本格的に行おうと思っています。

 

  


Unseen Everyday Japan
場所:The Japan Foundation, Sydney
Level 4, Central Park, 28 Broadway, Chippendale
期間:5月10日~6月9日まで
開演時間:月~金: 10am-6pm 土: 10am-1pm
日曜定休
入場:無料
Web:jpf.org.au/events/unseen-everyday-japan

 

 

 

プロフィール
Q. Sakamaki

NYを拠点とするジャーナリスト・写真家。世界の紛争地、社会問題などを取材し、世界各国のメディアやアート・ギャラリー、美術館で発表。「ワールド・プレス・フォト」「アメリカ海外特派員クラブ・オリヴィエール・リボット賞」など国際的に権威のある賞を多数受賞。
代表作品「戦争?WAR DNA」「Tompkins Square Park」など。
http://www.qsakamaki.com/


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