ホームレスを救い職につなげるFull Circle 元K-1ファイター イアン・シャファー | Cheers インタビュー

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現在オーストラリア全土には10万5237人のホームレスがいる。そのうち男性が約56パーセントで、女性が約44パーセント。NSW州が最も多い2万8190人だ。毎週日曜日の午後5時、ウルムルの警察署の裏の公園には、80人を超すホームレスが『Street Buffet(ストリート・ビュッフェ)』と呼ばれる配給を得るために集まる。今回は毎週60人のボランティアが各々の料理を持ち寄って振る舞うボランティア団体の発起人で、以前、日本の格闘技団体K-1で活躍した経験を持つ、イアン・シャファーに話を伺った。

 

 

ボランティア活動を始めたきっかけは?

 

ストリート・ビュッフェを始めたのは7年前。いらなくなった洋服をチャリティボックスに入れようと思い教会を訪れたときに、あるホームレスの人たちと出会ったんだ。彼らは私が寄付しようとしていた服をその場で着てみたり、私の香水をつけたりして、気がつくと私の前にホームレスの人たちの列ができていた。その光景を見たときに『ストリート・ビュッフェ』をひらめいたんだ。

 

 

偶然の出来事が『ストリート・ビュッフェ』の始まりだったんだね。

 

そうなんだ。次に訪れたときには、スーパーでパンやチキンを大量に買い込んで自分で作ったサンドイッチを配って一緒に食事をした。とっても喜んでくれたよ。しばらくそんなコミュニケーションを続けていると、他にも協力者が手をあげてくれて、団体を結成したんだ。ロゴを作ってフェイスブックに載せると『ストリート・ビュッフェ』は瞬く間にクチコミで広がった。現在では公認のボランティア団体に認定されている。この国ではとても光栄なことなんだ。

 

 

毎週どれくらいのホームレスが集まるの?

 

毎週80人から100人くらいが集まるよ。クリスマスパーティには300人以上。冬の間はホームレスの数が少なくて、夏は子供も多いから倍くらいの人数が集まることもある。

 

 

現在の活動目的〝フルサークル”とは?

 

当初はただ食べ物を提供するだけだったけど、徐々にどうしたらこのホームレスの列を減らすことができるか、と考えるようになったんだ。食べ物を提供する以外に、どう彼らを助けることができるのか。ホームレスを救い、職につなげてあげることで今の生活から脱出させる。〝フルサークル〟の発想。例えば、面接のためにヘアカットをしたり、正装を提供してホームレスの人たちに自信を取り戻してもらい(団体では『ストリート・スタイリング』と呼んでいる)、社会に戻る希望を持つきっかけを作ったりしているよ。

 

 

フェイスブックを見てみると、実際に美容師のボランティアを呼び掛けていたりしているね。

 

あとは私が経営するクリーニングビジネスに採用するために、2日のトレーニングコースを受けてもらっているよ。最近コースの第一弾を終えたばかりなんだ。

 

 

ストリート・ビュッフに集まるホームレスに仕事を提供することはなかなかできることではないね。

 

この国ではホームレスに対する偏見が根強いから、なかなか仕事につくチャンスがないんだ。ホームレスのほとんどがドラッグやアルコールの依存症によって路上の生活になってしまったと考える人が多いけど、もちろんそういう人もいるけど、実際はそういう人ばかりではない。ホームレスの多くには、とても悲しいストーリーがあるんだ。あまりにも衝撃的な経験をしたことで、私生活に支障が出るほどのトラウマを持ってしまったケースは多いね。子供を亡くした人や虐待を受けた人。ドラッグやアルコールよりももっと心の闇は深いんだ。私たちもいつホームレスになるかわからない。そうならざるを得ない出来事がいつ起きるかわからない。ホームレスの中には、ちゃんとした教育を受け、大企業で働いていた人もいる。ラップトップとWiFiを使っているホームレスだっているんだよ。

 

 

イアンもティーンのときにホームレスを経験したと聞いたけど?

 

幼少期に負ったトラウマがきっかけで、家を出て悪い連中ととつるむようになった時期があったんだ。長年、自分の受けたトラウマについて怒りを抱いていて、いつしか怒りはストリートでの度重なる喧嘩へと繋がった。私が恵まれていたのは、それが必然的にプロフェショナルのファイティング・キャリアへと導くことができたこと。ただ怒りを関係ない人たちにぶつけるのではなく、良い方向へと向けることができたんだ。ファイティングを引退した今はその怒りは癒されたと感じているよ。

 

 

衝撃的な経験がきっかけで家を出てしまい行き場所を失う。まさにストリート・ビュッフェに来るホームレスの人たちと同じ状況だったんだね。そしてイアンは抜け出すきっかけをつかんだ。

 

10人のデカい奴らにクラブでボコボコにされたことがあった。それを知った父親がトレーニングを勧めたんだ。格闘技のトレーニングを始めてからは心が入れ替わり、家にも戻ったよ。その後、国内で試合をこなしていたときにプロモーターのレイ・マツムラさん(弊紙コラムニスト)がスカウトしてくれて、K-1に導いてくれたんだ。いま振り返って思うけど、父親やレイ・マツムラさんなど、周りのサポートがなかったら、状況から抜け出すことはとても困難なことだった。だからファイターとしてキャリアを積んで成功したからこそ、コミュニティに恩返ししたかったんだ。

 

 

 

自分の経験をホームレスと話したりする?

 

もちろん共感できることはたくさん話すよ。彼らが心を開いてくれるからね。ただ、彼らの生活を変えてあげたいと思うけど、ファイターとして成功したことは口にしない。成功することだけが正しいわけではないからね。彼らの生き方をリスペクトしたいんだ。あるホームレスは、うつを乗り越え、ストリートから脱出することができた。でもまたホームレスに戻ってきた。路上がハッピーな人も中にはいるんだ。それに変にアドバイスすると暴言を吐かれるからね(笑)。彼らはハッピーアワーのために来てるから、それをリスペクトする。彼らのためにあの場を提供し、いつでも手を差し伸べることができる準備をして、その場にいてあげることがいまは大切なんだ。

 

 

暴言はよく吐かれるの?

 

毎週のようにね。「ピザじゃなくてチキンがよかった(怒)」とかね。でもこの活動は私にとって教会のように感じているよ。新しい週が始まる前に心を浄化してくれる。現実を知ることができる。毎日、どうでもいいことに頭を使ってしまうけど、何が大切か、その本質を気づかせてくれるから、とても楽しんでやっているよ。

 

 

今後の展開は?

 

まずはいまやっていることにフォーカスしているよ。ホームレスを雇用し、社会復帰を望む人がいれば手伝うこと。ストリート・ビュッフェはいい「フック」になる。信頼を得て、いい関係を作るきっかけになるからね。それぞれの名前や状況、経験を知り理解してあげる。そして社会復帰を目指している人がいれば、雇用できる対象になるかを見極めることもできる。全員が全員、職に就けるわけではないからね。ホームレスの人たちがどんな経験をしてきたか私たちにはすべてはわからない。周りと同じように職に就くことだけが正しいことじゃないんだ。今後はストリート・ビュッフェ以外にも、色々なサービスを提供していきたい。実現したい夢や希望、アイデアはまだまだあるんだ。

 

 

政府はもっと何かをやるべき?

 

メンタルヘルスのケアに政府は焦点を当てるべきだと思う。例えばあるホームレスは戦争を2度経験していて精神的にやられていたんだ。だからアルコールに手を出し、資産や家族を亡くし、ホームレスになった。ホームレスになったのは結果で、彼らが本当に必要なのはお金ではなくメンタルヘルスのサポートなんだ。そして存在を無視されないこと。シドニーが裕福になるたびに、ホームレスはどんどん端へと追い出され、居場所を失ってしまう。マーティンプレイスのように。まるで家畜のように。特に女性はレイプなどの被害に遭いやすい悲惨な状態になっているよね。だから政府には税金の無駄遣いをせずに、メンタルヘルスをサポートするような団体をバックアップするために、税金を有効に使ってくれることを望んでいるよ。

 

 

税金の無駄遣いとは?

 

囚人を1年間刑務所に入れるのに必要な額が年間8万ドル。少年院は年間5・5万ドル。救急で一夜過ごすのに必要な額は800ドル。これって税金の無駄遣いだと思わない? 大切なのは犯罪を犯さないために根本の解決を目指すこと。それは表面的に経済面をサポートするだけではなく、精神科医に毎週会ったり、グループセラピーに通うなど長期的な思考で、犯罪に手を染めない精神的健康を手に入れることだと思うんだ。

 

 

日本人がボランティアに参加することやクリーニングビジネスで仕事をするチャンスはある?

 

もちろんあるさ。でもせっかく寿司や刺身を持ってきてくれても、誰も食べてくれないから気を付けて。彼らはバーガーとか、コーラとか、ジャンクフードが好きだからね(笑)。クリニーングコースやジョブに興味のある方はぜひ連絡してほしい。早いペースで働くことができるし、英語の上達にはもってこいさ。

 

 

 

 



 ボランティア団体 
Street Buffet

開催日時:毎週日曜日
17時~18時15分まで(4時10分から準備)
場所: Woolloomooloo Police Station
10/164 Cathedral St., Woolloomooloo
Eメール:thestreetbuffet@gmail.com
FB :Street Buffet
ボランティア人数:毎週60人前後
活動内容:ボランティアがフードプレートを持ち寄る




Kapers Cleaning
FB:kapers cleaning
End Of Lease Cleaning、Commercial Cleaning、Strata、Pre Sale Cleaning、Site Cleaning
参考サイト: www.homelessnessaustralia.org.au/index.php/about-homelessness/homeless-statistics

 


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