豪日交流 七人のブルー 子サムライ の出稽古 | Cheers インタビュー

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1月10日、真夏のシドニー空港に降り立った日本のサッカー少年7人(全員小学生)。TOCの生徒たちだ。TOCとは、Touch Of Classの略で、英語とサッカーを教えるスクール(東京:http://www.naocastle.com/blog)。主催するのは、今矢直城TOC代表。真新しいヒルズ・スポーツ・インドア・センター(セブンヒルズ)で行われたオーストラリア側のFUTBOL TECの夏季キャンプに合流。相撲で言う〝出稽古〟である。合計42名の子どもの中には、2022年のワールドカップに備えて選手として育成されている子もいた。TOCシドニー夏季キャンプは、1月11日~14日まで4日間行われ、日本の少年たちは、シドニーの家庭にホームステイして、実際に異文化を体験した。

将軍家指南役は3人。TOC今矢直城代表は、兵庫県生まれの29歳。ヌーシャテル・ザマックス(スイス・スーパーリーグ) 、ラ・ショー=ド=フォン(スイス2部)、ニュージーランド・ナイツ(Aリーグ、NZ)、マルコーニ・スタリオン(NSWプレミアリーグ)、VFBリューベック(ドイツ)で活躍してきた。

オーストラリア側のコーチは、トリフィロ兄弟。 兄のジェイソン・トリフィロさん : U17のオーストラリア代表。2005年のワールドカップ・ペルーに出場。2人とも、テクニシャン系。サッカースクールのフットボール・テックを主宰。今回共同開催で合意し、TOCシドニー・キャンプが実現した。
弟のグレン・トリフィロさん : 2008年にU20のオーストラリア代表でベトナム遠征。2006年、2007年にオーストラリア高校生キャプテン。現在パースグローリー所属。


今矢代表は、TOCシドニーキャンプの目的をこう語る。

「日豪の架け橋を目指したい。選手時代からの夢で、日本でサッカー・スクールを開いて、オーストラリアにつなげていきたいと強く思っていました。私自身、10歳でオーストラリアにきて、文化の違い、考え方の違いを肌で感じとってきました。それを、子どもたちに経験してもらいたいんです。ライフ・エデュケーション、人生をどうやって生きていけばいいのかをオーストラリア人は分かっていると思います。人生にはこれが大切だということを、オーストラリアで経験してほしいという願いがあります。必ずしも一流のサッカー選手にならなくても、別の分野で生かしていけばいいわけです。そのためには、日本の中だけで終わるのではなく、とにかく海外に出て、外を見るということが大事です」

今いる場所で全力を尽くす
今矢代表は、折に触れ、自分の思念をノートに書き止めている。

「ジュニアチームから17歳以下までのチームを含めると100人以上の選手がユースチームにいたが、最終的にプロサッカー選手になれたのは自分と、イギリスのウエストハム・ユナイテッドのキャプテンで活躍しているルーカス・ニール選手(当時15歳=最近トルコのガタラサライに移籍)だけだ。まあ、自分と彼との間には、かなりの格差があるが…。彼は、シドニーに帰っても決して気取りもせず、人間としてもできていて、尊敬できる素晴らしいプレーヤーのひとりである。しかしユース時代にうまかった周りの選手が、プロになろうとした道を20歳にもならぬままになぜ、諦めていったのか…。自分もサッカー以外にも人生はあるだろうと思うし、サッカーを続けるには犠牲にしなければならないことも出てくると思う。どんな道を選ぶにしても、今いるその場所で、できることを精一杯やっている人はやはり美しい。そしてその努力がまた、新しい道を生み出すと確信する」

試行錯誤からの展開!
今矢代表は、2日目、日本の子の動きが鈍い…と悩んでいた。このまま行けばずるずるいく…ここは手を打つ時だ、と。

「2 2の練習試合をやらせました。オーストラリアの子と組むのです。これが転換点でした。とにかくコミュニケーションをとって、『今のはゴールだとか、そうでないとか』、オーストラリアの子が助けてくれたんです。日本ではありえないようなことが起きて、ここはこうしようと、対応能力を磨く必要があるというのは分かったと思います。ルールなんか関係なくなって、なんとしても勝とうとするオーストラリア側がせこくて、このまま黙っていたらだめだというのが日本の子にわかって、その時初めて「What?」とか、「No goal」とか、英語が飛び出し、テンションは高くなりました。私が日本でコーチしていても変わらなかったろうと思う子が、ここでがらっと変わったり、現地のコーチの指導を受けて、視野が広がったと思います」「今回の目的は、もうひとつ。私はオーストラリアが大好きなので、オーストラリアの子どもたちに、日本の子どものテクニックを見せて、触発したかったこと。特に、ボールを持ってからの動きなどですね。そういうものを、こちらの子どもたちが修正していければ、世界トップレベルの選手になっていくと思います」

心地よい手ごたえ!
Beyond the Camp

ホームステイ先のホストの献身的な協力もあって、今矢代表は予想以上の成功を喜ぶ。そして、日本の子どもたちのマナーの良さから、逆(子どもたちが日本に行く)はいつ実現するのか、という声がシドニーの親たちからあがっている。「サッカーがユニバーサル・ランゲージと言われるゆえんです。来年もまたやりたいです」と、〝来年〟を描く。TOCも新年度は、現在30人の生徒を50人か60人に拡大することを検討している。子どもの評判の良さとは全く関係なく、彼は、帰国当日、小学生に2つのことをさせた。ホストファミリーに手紙を書かせた(写真下)。日本語を英語にしてあげたのも彼だった。さらに、子どもたちの親にも手紙を書かせた。大事なことである。感謝の気持ち、報告…親から離れたときに何をすべきかを教えたのである。子どもが書いた手紙は、やがて彼らの〝決意〟へと昇華する。前進させるためには、中心の車軸がしっかりしていれば安心だ。「良い選手ということに限れば、オーストラリアの選手の方がハングリーです」。可愛い子どものポテンシャルがゆえに、彼の目は鋭く捉えていた。執念こそ勝利の母と言いたいのだ。「不屈。始める人のことではなく、続ける人のこと」というレオナルド・ダ・ビンチのメモとも一致する。同じ時代に生きるなら、自分の生き方が、誰かに勇気と希望を与えるものでありたいと、彼は心の中で願っている。(終わり)(文責:北村 元)

1) 波塚 陽介くん 小学校4年  

「TOCのチームを作って、オーストラリアのチームと戦ったことが一番楽しかった。皆頑張って、高校生にも勝ててよかった。ホームステイは楽しかった。また、来たい。シュートの威力というのが勉強になった

2) 本橋 周馬くん 小学校4年  

「オーストラリアに来て、技術がちょっと上がったと思います。オーストラリアの人たちはうまかった。日本の人が使わないフェイントが勉強になった。ホームステイは楽しかった。ご飯食べる時も楽しかったし、家に犬もいたし、プールもあったので、また来たいです」

3) 杉山 豪希くん 小学校5年  

「こちらへきて楽しかったのは、日本グループとオーストラリア・グループで対戦できたことです。負けはなしで、勝ちと引き分けだけでした。英語で伝えるのは難しかったけど、ジェスチャーを使えばなんとか伝えられるとわかった。オーストラリアの人は、マルセーユルーレット(註)を使ったり、体で当ててドリブルしてきたり…勉強になりました。ホームステイは楽しかったです。家の人がとてもよくしてくれました」  註:フェイントのこと、この表現は日本人以外あまり使わない。ジダン(仏)のテクニックからついた。

4) 梅田 至くん 小学校6年  

「こちらの人は体が強いから、もっと鍛えなくちゃと思いました。相手の人は体はめっちゃくちゃ強かったけど、日本対オーストラリアの子ども同士でやった時は勝てました。とても楽しいキャンプでした。練習をちゃんとやっていなくて、上から下に1個落とされました。ショックだった。こちらの人の家に泊めさせてもらって、家にプールがあって泳ぎました。ホーステイの人に親切にしてもらいました」

5) 大竹 晃平くん 小学校6年  

「日本では経験できない体格の差を実感できました。当たりが日本人よりも激しかったです。こんなこともするんだ、ということもありました。オーストラリアの人は負けたくないという気持ちの強さを感じました」

6) 板倉 達弥くん 小学校6年  

「オーストラリア人とサッカーできたのが、何より楽しかったです。全部が勉強になりました。来たかいがありました。コーチから言われたことで、一番頭に残っていることは、次の動きを考えろ!ということです」

7) 下澤 悠太くん 小学校6年  

「今度のキャンプで一番勉強になったことは、日本と違って、プレッシャーが早いことです。オーストラリアの人とサッカーできたことが一番うれしいです。外国の人とやったのは、初めてです。シザーズ(註)とか、抜いた後の次の動きなどをもっと磨きたいです。コーチから『やる気があるのか!』と言われました。いや、びっくり! ホームステイは優しくしてくれたので、気軽に楽しめました」 註:内側から外側、あるいは外側から内側へ、ボールに触れずに腿を上げることなく、ボールの横を高速でまたいでディフェンスを惑わすフェイント。逆シザーズもある。


兄のジェイソン・トリフィロさん


弟のグレン・トリフィロさん


CHEERS 2010年03月号掲載


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