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Cheers インタビュー


オーストラリアを制した日本人スイマー、次は世界へ

22/05/2010


 

NSW州の水泳界で数々のメダルを獲得し、また、数々の記録を打ち立ててきた松尾亜美選手がとうとうオーストラリアを制し、この国の代表選手として国際大会に臨むこととなった。幼い頃から彼女を見守ってきた鬼頭亮介コーチが語る、「経験としてロンドン・オリンピックに出場し、リオデジャネイロ・オリンピックで勝負してほしい」という言葉からは、亜美選手の無限の可能性が伺える。見かけからは想像できないような力強さで高い壁を乗り越え、夢へとまっすぐに向かう亜美選手と、それを支える鬼頭さんに話を訊いた。

オーストラリアン・エイジ・チャンピオンシップ(以下、AAC)では、実に7つのメダルを獲得されました。大仕事を終えたばかりですが、現在はどのように過ごされていますか?

亜美:大会後に1週間のお休みを取って、また練習を再開しました。今は来週に行われる学校の州大会に向けてトレーニングしているところです。

今振り返って、最も自分の泳ぎのできた種目、また逆に自分らしい泳ぎのできなかった種目を教えていただけますか?

亜美:一番良かったのは金メダルを取って、自己最高記録も更新できた200メートル自由形です。良い泳ぎをできなかったのは200メートルの個人メドレー・・・。なんか緊張してしまって。

鬼頭:メドレーに対しては苦手意識があると思うんですよね。自由形と違って、メドレーには彼女があまり自信のない背泳ぎや平泳ぎもあるので。気持ちの部分であまり乗っていなかったように思います。

 

昨年はケガ(足の骨折)もあったということですが、今大会にはどのような気持ちで臨まれましたか?

亜美:いつも通りというか、特に不安もなく臨めました。

鬼頭:自信があったんだと思います。それだけのトレーニングを積んでいますから。練習していても自信を持ってできているというのが伝わってきました。

骨折の原因を教えていただけますか?

亜美:昨年の9月に学校の授業でサッカーをやっていたときに挫いてしまったんです。

鬼頭:まったくコーチ泣かせです(笑)。最初は靭帯まで損傷しているかと心配していたんですが、それに関しては大丈夫だったし、思ったよりも早く回復してくれました。

療養中はどのように過ごされましたか?

亜美:2週間くらいは水に入ることもできなくて、4週間経った頃に特別なギブスを使用して、プールでの練習を始めました。

鬼頭:松葉杖を突いてやってきて、ギブスをはめたまま泳いでいたんですよ。亜美はキックが強みなので、足首の可動域が狭まらないかと心配したんですが、その後は良好なので安心しました。

亜美:ケガをしているときはやっぱり落ち込んだし、本来なら大会に出場する予定だったので残念な気持ちでいっぱいでした。でも理学療法を受けながら、リハビリをして、万全な状態に戻すことができました。

前回2008年のインタビューでは、短距離の50メートルが得意と話されていましたが、今回は200メートルでも金、400メートルでは銅メダルを獲得していますね。そこはこの1年半で変化した部分と言えるのでしょうか?

亜美:2008年の頃に比べて、練習量はずっと増えていますし、最初は短い距離が好きだったんですが徐々に変わってきて、今は200メートルが一番好きです。

鬼頭:我々コーチ陣としては、亜美には短距離から長距離まで分け隔てなく泳いでほしいと思っています。50メートル等の短距離は、日本人にとって成功しにくい種目なんですよね。短距離では、年齢が上がるにつれて、パワーや身長で勝るオーストラリア人のほうが有利になってしまうんです。長距離のほうが選手寿命も長くなりますし、自由形に関しては全種目に出てもらおうと思っています。本人には好き嫌いがあるとは思うんですけど。

亜美:本当は800メートルとかはあまり好きじゃないです(笑)。

亜美さんは強心臓の持ち主で大舞台でもあまり緊張されないと伺いました。

亜美:う~ん、最近はけっこう普通に緊張します(笑)。

鬼頭:段々と参加する大会のレベルが上がってきているので、必然的に緊張も増すんだと思います。以前にはテレビで観ていたような選手たちと一緒の大会に出たりするんで。

亜美:でも緊張はいいことだと思います。プレッシャーがあったほうが頑張れますから。

鬼頭:亜美の場合は、変にリラックスしているときはまずダメですね(笑)。"絶対に勝ちたい"っていう強い気持ちがあったほうが、良い結果を出せるタイプなんです。

現在13歳ですが、頭の中は水泳のことでいっぱいですか? 他の同級生のことを見てうらやましいと思うことはありませんか?

亜美:ありますね。友達と一緒に出かけたいと思うこともあるんですけど、ほとんど毎日練習があるんで無理ですし、休みの日もゆっくりして疲れをとって終わってしまいます(苦笑)。でもそれも水泳が好きだから我慢できるんです。

亜美さんにとって、水泳の一番楽しい部分はどういったところでしょうか?

亜美:やっぱり"勝つこと"ですね。勝ったときの気持ちというのは忘れられません。練習仲間たちと一緒に行うトレーニングも楽しい時間です。

一番つらい部分は?

亜美:"負けること"です。どうしても落ち込んでしまいます。あと、毎日朝4時45分から始まる朝練もつらいです(笑)。

 

NSWの代表は以前に経験されていますが、次はオーストラリア代表として大会に臨むことになります。気持ちの部分でこれまでとの違いはありますか?

亜美:さらに緊張が増すと思います。でもその分、モチベーションも上がっています。

"オーストラリア代表"というのは、亜美さんにとってようやく辿り着いた地点でしょうか? それともまだまだここからという気持ちでいますか?

亜美:まだまだ、ここからが勝負だと思います。始まりの地点だと考えています。

鬼頭:目標はもっと高いです。近いところだと日豪の間で2年に一度行われる対抗戦が来年また開催されるんですけど、それにも興味がありますね。すでに日本のコーチ陣も亜美の存在は知っているんです。そこに乗り込み、オーストラリア代表として、日本の選手と競い合ってほしいと思います。

将来的に日本に舞台を移して水泳をするということは考えていますか?

亜美:それは考えてないです。ずっとオーストラリア代表として、水泳を続けていきたいです。

体格的に優れているオーストラリア人に競い勝つことのできる秘訣はどういったところにあるのでしょうか?

亜美:何だろう? キックには自信があるし、体の大きいオージーと競っても怯むことはないです。

鬼頭:やっぱり気持ちの部分ですよね。精神論になりますが、"負けない"っていう自信が彼女を強くしているんだと思います。16歳、17歳のオージーの男の子たちと練習していても、亜美が勝っちゃうんで、自然と自信は付きますよね。キックの強さというのは、筋力があればいいというものでもなくて、柔軟性など、色々な要素が必要になります。先天的なものが大きいと思うので、それは親に感謝という感じですね。

7月に開催される「トランズ・タスマン・シリーズ」での目標を教えていただけますか?

亜美:メダルを取りたいですし、表彰台に立ちたいです。

鬼頭:そのためには彼女の自己最高記録を更新しなければいけませんね。25メートルのショートコース・プールなので、そこは亜美に有利に働くかと思いますけど、やはりこのぐらいの大会になると速い選手はいっぱいいますから。まだ大会までは時間があるので、それまでにさらに調子を上げていけたらと考えています。

今後、亜美さんが目標としていくべき選手というとどなたになりますか?

亜美:ヨラーン・ククラ選手かな?

鬼頭:ヨラーンは14歳なんですけど、昨年のAACでは、亜美が今年出した記録より断然速いタイムで優勝しているんです。同世代だし、今後は意識していかないといけないですね。

では最後に亜美さんの夢を教えていただけますか?

亜美:オリンピックです! いつか出場したいです。

鬼頭:いつか? ロンドン、行こうよ。

亜美:う~ん、ロンドンはちょっと無理だと思う・・・。でもその次のブラジルには行きたいです!

鬼頭:行けると思いますよ、このままいけば。彼女は10歳の頃からオリンピックに出たいと言っていて、今もその気持ちはまったく変わっていません。色んな壁はあるかと思いますが、ぜひ夢を叶えてほしいですね。

それではオリンピックでの活躍を楽しみにしています。

亜美:ありがとうございます! がんばります!

鬼頭亮介
1975年生まれ、34歳。大学卒業後、IT企業に勤めるも、2000年にWHビザで来豪。シドニーオリンピックを生で観戦後、当初は指導者の資格がない状態でカーライル・スイミング・クラブで水泳コーチを始める。熱心な指導を続け、2003年には優秀な被雇用者に贈られるエンプロイー・オブ・ザイヤー、その1年後には水泳指導者資格、オーストスイム主催のルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。その後、水泳コーチとして永住権を取得。

松尾亜美
1996年生まれ、13歳。幼少時からシドニー日本人会水泳部、カーライル・スイミング・クラブに所属。2006年、州大会で数々のメダル獲得や大会新記録を達成。2008年、200メートル自由形のNSW州代表選手に選ばれる。2010年4月に行われた「オーストラリアン・エイジチャンピョンシップス」で7つのメダルを獲得。オーストラリア代表として、7月にニュージーランドで行われる国際大会に出場する。


CHEERS 2010年06月号掲載

 


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