存在感とテクニック Lyall Moloney | Cheers インタビュー

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「シドニーなんて田舎でつまらない」と日頃思われている方、ジ・エンドです。在豪している日本人の方にもっとシドニーのローカルシーンを肌で感じてほしいというお節介な思いで始まったこのコーナー。メジャーどころからアンダーグラウンドまで活気あふれたローカルミュージックシーンをご紹介します。今回はステージに立つと1人とは思えないくらいの存在感とテクニックを持つLyall Moloneyさんにお会いしてきました。自身のアルバムをエチオピアで制作したり、合唱団でヨーロッパを回ったりと、あまりお目にかかれないようなエピソードの数々、そして巷で最近よく見るようになった彼のバンド「Black Paintings」のお話を聞いてきました。

お会い出来て嬉しいです。前回のソロライブで一度お会いする機会を得てから、またゆっくりとお話ができたらと思っていました。ライエルさんの音楽経験を教えてください。

ライエル:こちらこそ。9歳ぐらいから既にギターで遊んでいたんだけど、13歳ぐらいから真剣にギターを弾き始めたかな。13歳の時に田舎の方に引っ越して、他にやることもなかったし毎日熱中してギターばかり弾いていたよ。ヴィクトリアとニュー・サウス・ウェールズの境にあるオーバリーという大きい街なんだけど、周りには牧場しかなかったからね(泣)。16歳頃から曲作りを初めて、周りの高校生も趣味でやっていて、途中で止めたりしていたけれど、僕は止めなかったね。

合唱団にも入っていたと聞きましたが?

ライエル:そうそう。2007年から2009年までは大学の合唱団に入っていて、そのお陰でヨーロッパを2回もツアーで回ることができたんだ。大学ではジャズとギターを専攻していて、ウィーンで開かれた国際合唱団大会では優勝もした。でも、一番の経験は、やっぱり歴史に残る教会で歌えたこと。ウィーンのセント・マークス教会、ローマのサンタマリア教会、そしてチェコのプラハ城まで…僕の音楽経験上一番輝かしい思い出だね。今まで勉強したものの中でも、合唱団に入って学んだことが今でも僕の音楽人生に一番大きく影響してると思う。

すごい経験をされましたね。そしてエチオピアにも滞在していたと聞きますが…。

ライエル:2010年の2月から5月の4ヵ月間、姉と一緒にエチオピアに住んでいたんだ。そこでは地元の美しい景色や人々の関わり合いに浸って30曲ぐらい書いたかな。でも、長身の白人なんて地元では僕1人だし、注目を浴びない日はなかったね。若干疲れることもあったけど、そのお陰ですごく特別な経験をさせてもらったよ。ある日ギターを持って街中を歩いていたら見知らぬ人に「君はミュージシャンか?」と話しかけられて、面白いものを見せてくれると言うので好奇心でついて行ったんだ。実は彼は地元のラジオ番組のディレクターで、最終的にはエチオピアでは有名なミュージシャン、カサフン・テヤ(Kassahun Teya)と番組でライブジャムをすることになったんだ。

す、すごいですね。偶然と言うか運がいいと言うか…。

ライエル:自分でも信じられないよ。ローカルの音楽は僕らの知っているような音楽とは大分違っていて。ファンクとレゲエのミックス、10人編成のビッグバンド、それにみんな「肩」で踊るんだよ! そこで書いた30曲を絞ってその場でレコーディングして、今はシドニー出身で1980年代に活躍した「The Church」のティム・ポウルズがミクシングを手伝ってくれているんだ。それとは別に僕のもう一つのバンド「Black Paintings」(以下BP)のミニアルバムは2年ほど前、曲をひたすら書いていた頃にレコーディングされたもので、その時のメンバーを初期メンバーとしてバンドが始まったんだ。

ではあなたがソロとバンド両方の楽曲を書いているということですね。その2つのプロジェクトの境目はどこなんでしょう?

ライエル:曲それぞれの「荒さ」と「雰囲気」かな。BPはもっと本能剥き出しで鋭いという感じだね。バンドの楽曲はあまりジャンルに捕われないようなものを選んでいて、世界的に有名なアメリカのミュージシャン「Tom Waits」を思い出させるようなオーガニックなサンプルを使ったビートから、典型的なレゲエまでこなせるような姿勢を忘れないでいたいんだ。僕のソロとなると、やっぱり使える楽器が限られて音の分厚さは減るけど、その分柔らかい雰囲気を持ち味にしているよ。

ソロライブでのセット・アップを教えてもらえますか?

ライエル:もちろん。使っているマイクふたつの内ひとつが普通のマイク。そしてもうひとつのマイクでは僕が歌うメロディーを繰り返してリプレイするようにディレイペダルを通して、更にそれをその場で録音して何度でも再起動できるようにループペダルに繋いでいるよ。ナイロン弦のアコースティックギターもマイクと一緒にループペダルに繋いであるから同じような効果を得ることができるんだ。マイク2つにギター1本、何も高価なものは使ってないよね(笑)。

使い方次第で十分な効果が出るものなんですね。

ライエル:そうなんだよね。アコースティックギターにも色んな使い方があって、弦を奏でる音色だけじゃなくて、ギターのボディを叩いたりして打楽器としても使える。さらにその場でそれを録音してリプレイすると、フルバンドがいるような錯覚も造り出せるんだ。音楽の深みや、雰囲気作りの選択肢を多いに増やしてくれる。それから、合唱団のボイストレーニングでは通常の歌い方では使わない声の使い方まで習ったから、これを駆使して雰囲気作りにも励んでいるよ。

それはアルバムにどのように反映してますか?

ライエル:アルバムのレコーディングはギター、マイクとエイブルトンを使って僕がエチオピアで滞在していた部屋で収録したものなんだ。大きい部屋で、自然なエコーがたっぷりあるところで。ボーカルのメロディーをたくさん録音したよ。録音しすぎて、少し削らなきゃいけないところもあったけど、すごく生々しくて人間味のあるものができたと思うよ。アルバムはライブを始める前に仕上げたものだから、逆にライブに反映されていると思うよ。

どんな音楽を聴かれるんですか? 憧れの人と言えば?

ライエル:間違いなく「Tom Waits」だね。でも最近「Leonard Cohen」のライブを見てきて、彼は詩において天才だと思った。もちろん「Tom Waits」もだけれど。他にも「Bob Dylan」や「Nick Cave」も尊敬しているよ。1人だけは選べないや(爆)。

今年はどんな年になりそうですか?

ライエル:1月にソロアルバムの微調整が終わって今はミクシングしているから、その発表のための資金を集めているのがまずひとつ。そのアルバムのツアーも4月から予定していて、ブリスベンとメルボルンをできるだけ回るつもりなんだ。フルのバンドじゃないし、器材も少ないから1人旅の感覚でできそう。BPの方でもアルバム分の曲はもう作成したから、4月のツアーの前にそれをレコーディングできたらいいな。ライブは同じ楽曲でもいつも違うように演奏しているつもりだから、みなさんも是非見に来てください。

Lyall Moloney(ライエル・モロニー)
2010年活動開始。音楽大学在籍中は合唱団の一環として、国際ツアーに参加、ウィーンの合唱団国際大会では優勝を飾る。その後、2010年にはギターとともにエチオピアで4ヵ月を過ごし現地でアルバム制作に至る。ソロ活動の他にも、シドニーで注目を高める自身のバンド「Black Paintings」の楽曲も手がけている。現在はエチオピアで制作されたアルバムをシドニー出身バンド「The Church」のドラマー、ティム・ポウルズとともに発表に向けて進めている。


 

CHEERS 2011年3月号掲載


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