オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」
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Cheers インタビュー


オーストラリアで活躍する日本人

24/12/2009


シドニーのFOX Studios内にあり、オーストラリア最大と言われる映像プロダクション「Animal Logic」に所属するKojiさん。Compositorという映像処理における大事なポジションで、数々の有名テレビCMやハリウッド映画の製作に携わってきた。そうして確固たる地位を築いたKojiさんだが、キャリアの始まりから今に至る道は用意され、整備されたものとは正反対と言えるものであった。日本人として、叩き上げの人間として、業界の第一線で活躍する映像クリエイターに話を聞いてみた。

Digital compositorとして活躍されていますが、どのようなことをする職業なのか教えていただけますか?

最終的に皆さんがご覧になるテレビの画面や映画のスクリーンに流れる画像そのものを僕たちCompositorが仕上げます。アクション映画で使用されるワイヤーを消したり、撮影された背景素材にCG(コンピューター・グラフィックス)を合成したりするのも、僕たちの仕事です。海外ではレベルや経験によって、任せられる作業がJunior Compositor、Middle Compositor、Senior Compositorと大きく3つに分かれます。僕は今の会社とSeniorとMiddleの間ぐらいのレベルで契約を交わしていて、全般的に広く合成作業を任されています。

「I,ROBOT」の監督で知られるアレックス・プロヤス氏の新作「Knowing(主演ニコラス・ケイジ、2009年3月公開)」に参加されていますが、どのような作業を担当しているのですか? 作品はもう完成したのですか?

納品が2月6日なので3月公開に向けて、忙しい毎日を送っています。大きな映画だと何社か分けて作業をするのですが、この映画のVisual Effect(視覚効果)は今働いている会社が全工程を受け持ってやっています。

スパイク・ジョーンズ監督の「Where the Wild Things Are(2009年12月公開)」にも参加されていますが、こちらの進行状況はいかがですか?

この作品には20007年の10月から製作に加わりました。2007年のクリスマス前に撮影された素材の一部に問題があり、作業がストップするというハプニングがありました。問題がない撮影素材はそのまま作業を継続したのですが、その後この作品は公開延期になってしまいました。余談ですがたくさんのJunior、Middle Compositorが同じクリスマスの連休前に突然の解雇となりました。僕は運良く契約の最後まで作業ができたんですけど。やはり日本と違って会社が必要ない人材と判断すれば、すぐに解雇されるのが海外のやり方なんですよね。僕もいつもドキドキしながら作業をしています(笑)。

シドニーの映像スタジオで働かれているということは、完全英語環境ですよね? 苦労することなどありますか?

Compositorという職業は経験値やセンスもそうですが、一番重要なのはコミュニケーションだと思います。コミュニケーション能力は絶対に必要になってきます。そして海外だと表現の仕方も全然違ってきます。特に色の表現には最初戸惑いましたね。「Coolな色にしてくれ」とか「もっとWarmに」、「もっとJuicyに」などなど・・・。今は求めているものがわかるようになりましたけど。英語は最初に半年間だけ語学学校に行ったんですけど、それでも正直ほとんど何を言っているのか理解できない状態でしたね。でもやはり仕事上コミュニケーションは必要なので、場数を踏みながらなんとかやっています。プレゼンなども理解してもらおうと頑張ってやれば、向こうもちゃんと聞いてくれますからね。

なぜオーストラリアで働くことになったのですか?

日本ではテレビCMをメインに仕事をしていたんですが、オーストラリア撮影の作品が多くて、僕がオーストラリアに行けば、現地で編集まで出来て、作品を海外で仕上げられるようになると思ったのが最初ですね。でも当時の日本のプロデューサーにはアイデアを理解してもらえず、こっちに来て個人で仕事を探したんです。

日本ではTV関係のほかにミュージッククリップなどの製作にも携わっていたということですが、今振り返ってみて当時の仕事はどうでした? 

日本での仕事のプロセスは本当に大変でしたね。ひとつ15秒のCMを作るのに、何日も徹夜をして仕上げたりとか。また、コンセプトが決まっているのに、突然の変更があって終わりが見えなくなったりもしますし。でも仕上げて、その作品をテレビで観るとものすごい達成感があるんですよね。好きなことをしていると仕事も楽しくなるので、一度も苦しいと思ったことはありませんでした。ただ日本での仕事では責任が重要視されていたように思います。それとセンス、スピード、テクニックの3つを教わったように思いますね。こっちでは英語環境で苦労することもありますが、仕事内容自体は海外の方が楽だと思います。

大学進学をされなかったということですが、高校卒業後はどうなされていたんですか? また、その時点で自分の目標なり、ヴィジョンといったものは定まっていたのですか?

父親を早くに亡くして、母子家庭だったので、とても進学したいと言える家庭事情ではなくて、高校卒業後は迷わず就職先を探しました。高校のときの授業でコンピューターを使って図面を描くということをやったときにすごく楽しくて、夢のような仕事だと感じたことがあったです。それでそんな仕事ができたらいいなと思っていたですが、当時はコンピューターに触れる仕事に就けるのは大卒組ばかりで、僕ら高卒は工場で働くことが精一杯な感じでした。そうして自動車部品工場や機械メーカーなどを転々としていたんですが、最終的にCG部のある設計事務所に就職することができたんです。

そこで現在のキャリアに繋がる技術を習得されたんですか?

少しだけ教わり、あとはマニュアルを読んだりして自分で覚えていきました。地元テレビ局の番組タイトルやキャラクターなどシンプルなものを製作していたですが、CGを製作するのは初めてで、毎日が楽しかった覚えがあります。ただ全国版のテレビCMはずっとクオリティの高いCGを作っていて、それを見たらもっと上を目指したいと感じるようになり、東京で働き始めたんです。

独学で映像業界に関わるようになって大変だったのはどういったことですか?

僕自身は苦労と思ったことはないですし、むしろ今となっては独学でよかったのかなと思っています。確かに誰も教えてくれず、自分で納得しながら身につけていくのは楽なことではないですけど。皆が帰った後に、勤務時間外で夜中まで勉強したりしていましたし。そこまでできるのは、やはり好きなことだからですけどね。独学ということで一つだけ大変だったのは、自分のやり方で正解なのか、不正解なのかの答えがないということでしたね。でもそれにしても今になって言えるのは"プロの世界では結果が良ければ全て良し"だということです。結果的にいいものができるのならそれが正解なのです。それに自分で見つけた技術は、誰のものでもない自分自身のテクニックになりますから。

困難な時期や状況も数多くあったことと思いますが、山口さんをここまで走らせてきたものとはなんなのでしょうか?

東京の職場で仕事を始めたときは、僕が大学や専門学校で教育を受けておらず、新人でありながら年齢がすでに30に近づいていたこともあって周囲からの僕に対する抵抗を感じたりもしました。部下ができてもなかなかついてきてくれなかったりもして、最終的にはそこを辞めることになって。そんな風にして入ったこの業界ですが、それでも助けてくれた人たちがいるんですよね。そんな僕を認めてくれたひともいますし。それに冷遇されたときの体験が、ある意味でのパワーにもなってくれています。仕事で結果を出せば、誰も文句を言えないと思いますから。同じく受けた恩に対しても、仕事で返したいと思ってやっています。

忙しい毎日を送られていると思いますが、日々の中で安らげるのはどういったときですか?

仕事が終わった後に同僚とお酒を飲んだりする時間が楽しいですね。作業中は黙々と仕事をしていますが、プライベートな時間は楽しく過ごすようにしています。仕事と休みのメリハリは大事ですね。キャンプやBBQなどのアウトドアも好きで、皆と過ごす時間を大切にしています。

帰国して日本を拠点にすることはないのですか? また夢や挑戦したいことをお持ちでしたら聞かせていただけますか?

日本を拠点にするというのは最近考えていることです。仕事はこれまで通り海外を中心にしながら、映画のプロジェクトが終わったら日本でゆっくり過ごすという風に、行ったり来たりできたらいいなと思っていて。オーストラリアで一番大きな会社で働くという当初の目標は達成することができました。今は他の国でも認めてもらえるのかということに興味があります。世界で活躍している日本のCompositorというのは非常に少ないのが現状です。そんな中で自分自身の技術レベルを確かめるためにも、海外の他の地域へも行ってみたいと思っています。国はどこでもいいのですが、まだ色々と挑戦していきたい気持ちがありますね。

シドニーで可能性を求めたり、夢を追ったりしている人たちにKojiさん流のアドバイスをいただけますか?

まず最初に自分が何をやりたいのかを、探してみたらいいのではないでしょうか。見つからないひと、先が見えないというひともたくさんいるでしょうが、焦らなくてもいいと思います。迷うのは悪いことではないと思いますし。ただ気になることがあれば、まずそれを実行するべきだと思います。行動に移さなければ、結果はわかりませんから。どの道にも必ず壁はあると思います。学校に行くのにもお金が必要ですし、時間がなかったりもするでしょう。でも回り道をしようとも、その壁を越えれば、何かが見えたり、何かをつかむことができるはずです。もし違うなと思ったら、また別の道を探せばいいのです。とにかく諦めないこと。諦めたら、そこで道は閉ざされてしまいますから。

Koji Yamaguchi

岐阜県出身。Digital compositor。高校卒業後、いくつかの転職を経て、独学により映像業界で働くチャンスを得て、テレビ業界を中心に合成や編集部門で活躍。その後、さらなる可能性を求めて来豪。FOX Studios内にある映像会社「Animal Logic」に勤め、オーストラリア、ヨーロッパ向けのCMや数々のハリウッド映画制作に携わる。



作品リスト
【CM】
愛知万博
トヨタ・カローラ
フォルクスワーゲン・ジャパン Lupo
フォルクスワーゲン・ジャパン Polo "Ripple"
フォード・ジャパン "focus"
ハーゲンダッツ・ジャパン "Green tea"
資生堂 "Kiss"
資生堂 "Peekaboo"
HONDA "FORZA"
Yahoo! JAPAN
MIZUNO "T-ZOID"
Nestle Japan "Breaktime"
Phlip Morris "Marlboro"

【映画】
(2006年)
"Rogue"/ Dimension Films
"The Condemned"/ Lionsgate
"The Painted Veil"/ Warner Independent Pictures
"Charlotte's Web"/ Paramount Pictures
"The Marine"/ 20th Century Fox
"See No Evil"/ Lionsgate


CHEERS 2009年3月号掲載


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