ノーザンビーチで活躍する日本人サーフボードクラフトマン 秋野晋吾 | Cheers インタビュー

ノーザンビーチで活躍する日本人サーフボードクラフトマン 秋野晋吾 | Cheers インタビュー

Cheers インタビュー

 



静岡の御前崎で育った秋野晋吾さん。日本にいる頃はウェットスーツ工場で働いていた彼が、1年間のアメリカ留学を経て、その後オーストラリアに来たのは 2004年。もともと経験のあったウェットスーツ工場へ飛び込みで仕事を求めるが、シドニー周辺ではその工場自体が意外と少ないことがわかり、マンリーに住む友人の紹介でサーフボードのリペアショップで働くこととなる。
そこで勉強をしながら訪れるサーフィン関係者たちとネットワークが広がったという晋吾さん。ノ
ーザンビーチを代表するシェイパー・ヘイデン・コックスとの出会いもそのリペアショップでのことだった。

 

2006年ごろまで勤めていたリペアショップが経営難で倒産し、その後のことを悩んでいたときに当時よくショップに顔を出していた同い年のヘイデンに相談を持ちかけたら、その日のうちに一緒に働こうって誘ってくれたことがきっかけでした。

そんなめぐり合わせから始まり、当時駆け出しだったヘイデン・シェイプス(以下HS)で働くことになった晋吾さん。初めこそ決してエクセレントとは言えない給料だったが、日本では得ることのできない本場のサーフボード作りを間近で学べることの価値観が勝った。そして自分が手がけたサーフボードをトッププロがWCT(ワールド・チャンピオンシップ・ツアー)の大会で使用してくれることに徐々に快感を覚えるようになる。サーフボード作りの仕事は未知の分野だった彼に、仕事の印象とヘイデンの人物像を聞いてみた。

 

サーフボード作りの仕事はすぐにはまりましたね。まず自分の好きな分野で、力を試せることはとても恵まれたことだと感じていました。HS入社当初はオフの日も工場に出てサーフボード作りの勉強をしていました。そして同い年のへイデンとHSスタッフのトロイと、試行錯誤をしながらサーフボードのシェイプやファイバーフレックスの開発などを研究できたことは自分の中でとても大きな意味を持っています。ヘイデンと知り合ってから7年以上経ちますが、彼はシェイパーでありHSのオーナーであり、フューチャーフレックスのオーナーでもあります。年齢は僕と同じ30歳なのに、シェイピングをしながらマーケティングやブランディング、時にはアカウンティングやウェブデザインなどもこなしつつ、サーフィンはちゃんと楽しんでいるんです。何でもできてしまう才能のある人で、とても勉強になりますね。

 


ファイバーフレックステクノロジーがへイデン、トロイ、晋吾さんの手によって世に生まれ、その後フューチャーフレックス(以下ff)という名でサーフィン業界に震撼を与えた。ストリンガーを使わず、EPSコア(高密度発砲ポリスチレン)をエポキシラミネートでコートし、カーボンファイバーでレールを囲むようにデザインされたffが、ひとつのトレンドとなり注目され始めた。それまでヘイデンのボードを置くことがなかったサーフショップにも〝HS〟のロゴが埋め込まれたボードが並ぶようになる。そのテクノロジーから具体的にどんな変化が起こったのだろうか。

 

ffは耐久性に優れ、独特のしなりがスピードやドライブを高い次元でパフォーマンスするニュータイプのサーフボードです。従来のサーフボードよりパドルが早く、余裕を持ってテイクオフでき、ボードのコンロトールも楽なので幅広い層のサーファーに対応しています。プロトタイプを試乗したときの個人的な印象ですが、普段ならスープに引っかかって抜けられないセクションを、大きなドライブで抜けて次のセクションに繋げることができたり、頭の中のイメージ通りににボードをコントロールできたりと、乗った1日目でこれは売れると実感しました。その後、WCTで活躍していたダイアン・ネーブがプロトタイプで大会に臨み、準優勝を勝ち取ったり、へイデンのライダーたちが確実に結果を出すようになったのです。

 

 

ffの開発には元ASP世界チャンピオンのプロサーファー、トム・キャロルや兄のニック・キャロルが研究やテストライドに携わっている。ちなみにffのデメリットを聞いてみた。

 

ffは通常のボードより軽く設計されているので、ハワイなどのビッグウェーブには向いていないかもしれません。シドニーに入ってくるスウェルには問題なく楽しめると思います。今ちょうど、HSのビックウェーブ用トーインボードを、トムキャロルがテストしているところです。トムキャロルとロス・クラーク・ジョーンズが主演の3Dムービー「ストーム・サーファーズ」では、トムキャロルがHSに乗っているんですよ。


 

 

へイデンの工場にはトム・キャロルが時折現れ、プロトタイプなどのボードチェックを行っている。

 

 

3人の人間の手から生まれたHSのffは、現在では世界62ヵ国で販売をするまで成長を遂げている。ffの技術はライセンス化され普及し、現在はボードのシェイプ自体は各ブランドが行い、ffのラミネート、サンディングのみをffのファクトリーで行う体制になった。モナベールのサーフブランドであるCHILLIや、LOSTなどがHSの協力を得て、ffの技術を取り入れたボードを生産するようになると、一時期はWCTで活躍するトッププロのミックファニングや、伝説となった故・アンディ・アンアン用のff使用のボードがHSのファクトリーで作られたという。また最近のニュースではヘイデン自身がアメリカに渡りシェイプを開始し、ニューヨークのSATURDAYS SURF NYCでもHSを取り扱い始めた。モナベールで生まれたシェイプ工場が企業ブランドとして世界に羽ばたいたのだ。

HSの本店があるここモナベールには伝統的にシェイプ関係の工場やサーファーが集まっている。オーストラリアのサーフシーンはこの地から始まっているといっても過言ではないだろう。トムキャロルやリッチー・ロベットを代表としたレジェンドサーファーから、今WCTで活躍中のカイ・オットン、スタイリッシュなスタイルで雑誌やビデオを賑わせているフリーサーファーのオスカー・ライトなど。時々クレイグ・アンダーソンもノーザンビーチに姿を現す。そのクレイグ・アンダーソンもHSのライダーのひとりだ。

 

彼のことはHSで働き始めた頃から知っているのですが、もちろんサーフィンはかなりスタイリッシュで世界中で大人気のフリーサーファーです。性格がとても優しくて、ボードをピックアップしにくる時はヘイデンにもファクトリースタッフにもいつもお礼を忘れず、時々スタッフのプレゼントを持って来てくれることもあります。有名になったからと言って天狗になるのではなく、昔と変わらなく気さくなところがかっこいいですね。

 

 

 

へイデンの工場でボードにスプレーを入れるクレイグ・アンダーソン。

 

 

その工場で晋吾さんは現在、具体的にどのような仕事をしているのだろうか。

 

工場で新人のトレーニングをしながら、主にサーフボードのラミネーティングを担当しています。またHSの日本進出にも力を入れています。

 

 

英語環境の中で働く楽しさや厳しさを経験した晋吾さん。意思の疎通の面で、指示されていたことを間違えて理解して、失敗してしまったことがたくさんあったという。しかし周りがみなサーファーということもあり、特有のノリで許してもらうことが多く、その点ではとても幸運だったと振り返る。そんな彼に、ここ近年著しく変化を遂げているサーフボードとサーフィンシーンの今後の傾向を伺った。

 

ボードは年々短くなり、その分幅を持たせたものが主流になってきていますね。フィンもトライフィン(3本)だけじゃなく、クワッドフィン(4本)やツイン(2本)でフィンの抜けを楽しんだり、ケリー・スレーターは5本フィンをつけて力強いマニューバーを楽しんだりと、サーフィンが細分化され、その分選択肢が広くなり、求めるスタイルに応じてボードの種類が増えましたね。また、コンペなどでは、エアリアルができないとまったく勝てなくなってきています。ケリー・スレーター以外の年配のサーファーが大会で勝てなくなってきているのが印象的です。2012年はジョエル・パーキンソンが優勝しましたが、オージーのサーフシーンはどんどん向上してきていると感じます。WCTも現在3分の1以上がオーストラリア人で制覇しているほどですから。

 


 

左からへイデン・コックス、トム・プリングル、クレイグ・アンダーソン、ウォーレ

 

 

実際にオーストラリア勢の勢いはすさまじいものがある。それではなぜ未だに日本人がWCTに入れないのか。また可能性のある選手はいるのだろうか。

 

言葉の壁から情報や技術の伝達が遅れていることは事実としてあると思いますが、これからの日本人の世代にとても期待しています。特にジュニア世代でアライ・ヒロトやオオハラ・ヒロト、イガラシ・カノアなどはかなり期待ですね。彼らはそれぞれアメリカやオーストラリアに移り住み、いい環境でサーフィンに励んでいます。


今後は次世代のサーファーやシェイパーをサポートしていきたいと語る彼が、今進めているプロジェクトがある。それがサーフボードのシェイプスクール「FILTER」だ。

 

へイデンの工場内でシェイプの基礎クラスを開始し、僕がこの地でもらったようなチャンスを、これからは多くの方に与えていければと考えています。クラス修了後には、HSにてインターンシップとして働く選択肢や、提携しているサーフボード工場で働くといった選択肢を用意しています。日本にいた頃はオーストラリアのサーフィン業界は憧れで、雑誌やDVDで見る夢の世界だったんですが、7年以上働いてきたその経験を生かし、シェイプスクールを運営しながら日本のサーフシーンの底上げをして人材を育て、そのもとでサーファーが育ち、世界のサーフィン業界に肩を並べて入っていけるような環境を作りたいんです。

 

 

最後にこれからローカルの企業に入りたいと考えている人にアドバイスを聞いてみた。

 

まず、何をしたくて日本から来たのかを再確認してほしいです。もしローカルで働きたいと思って来豪したのなら、迷わずローカル企業に飛び込んでみてください。そして一度入ったら、心が折れそうになっても辞めずに続けることが大事。僕自身辞めそうになったことはたくさんありましたが、そういうときに3年後、5年後の自分をイメージして、信じて耐えて頑張ってきたから、今やっとその頃の努力が実になったんだと思います。自分の可能性を信じて頑張ってください。

 



 

Haydenshapes Surfboards

69 Bassett St., Mona Vale, NSW 2103

Tel:(02) 9998 9300 

Email: info@haydenshapes.com

FILTERシェイプスクール開講間近!

www.filter.com

WEBサイトは3月からスタート

 

 

 


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