日本人初!オープンウォーター五輪代表 貴田裕美 | Cheers インタビュー

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北京五輪で初めて競技として採用された、オープンウォータースイミング。プールで行なう競泳とは違い、海や湖、川など、予測できない自然環境で繰り広げられる戦いだ。ロンドン五輪で、日本初となったオープンウォータースイマー・貴田裕美選手。幣紙コラムニストで、水泳コーチとして活躍する鬼頭亮介さんの元、休暇を機にやって来たところをキャッチ。日本人として初めて立ったオリンピック舞台、そしてこの過酷な競技に対する貴田選手の思いなどを伺った。

 

 

 

左から:カーライルクラブのヘッドコーチ・ジャスティン・ルースウェルさん、貴田裕美選手、アシスタントコーチの鬼頭亮介さん

 

 
 

ロンドン五輪では、日本人選手として初めてオープンウォーターに参戦され、最終予選では25人中13位という素晴らしい成績を残されました。レースのことは憶えていらっしゃいますか?

 

以前からライバル意識をしている、ウクライナのオルガ・ベレスニェワ選手も同じレースに参加していたのですが、オリンピック出場当日、「彼女には絶対負けたくない」と思っていました。オルガ選手と私の泳力は本当に似ていて、レベルもほぼ同じくらいです。オープンウォーターはコースが決まっていないため、周りの選手の出方によって、自分の泳ぎも調節しないといけないのですが、この大会では他の選手との接触が体力の消耗に影響を与えました。しかし、いざラストスパートに入ると、オルガ選手がすぐそばにいることに気づきました。必死に泳いだんですけど、彼女に越されてしまい、悔しい思いをしたのを憶えています。7位を取得したオルガ選手でしたが、オリンピックを通して思ったのは、世界はラストスパートがものすごく強いということ。でも、それが楽しくてやり甲斐があるものとなりました。

 

 

幼い頃から水泳選手として活躍し、オリンピックを含め、さまざまな大会に参戦されていますが、レース前はやはり緊張されるのでしょうか?

 

かなり緊張する方ですね(笑)。選手によっては、レース前に音楽を聴いてモチベーションを上げるなど、儀式みたいなことをする人もいますが、私にはそういったものはありません。ただ、レース前はできるだけ笑うように心がけています。試合にコールされてスタート地点に向かうとき、無理やりでもニコニコしようとします。たぶんこれが私にとってレースに入る準備のひとつですね。なんとなく気持ちが和らぐんです。

 

 

「自然」という、常に環境が変動するオープンウォーターで戦う貴田さんは、体力はもちろん、精神的にもとても強いと受け取られますが、それでもくじけたり、諦めようと思ったことはありますか?

 

練習が過酷なときや疲労が溜まっているときなどは、正直「きついな~」と思いますね(笑)。でもそのかわりに、試合でよい結果を出せたり、自己ベストを更新したりすると、それがすごく楽しくて「またこういうレースがしたい」と思えてきます。そして「また頑張ろう」、「もっと強くなりたい」、「どんどん世界で戦えるようになろう」と次のステップが見えてきます。オリンピックも、元々出場することだけが目標だったのですが、実際に参加してみて、入賞へと繋がらなかったときに、「やっぱり入賞したかったな」と考えるようになりました。やっぱり目標があることは大事ですね。それを達成するために練習を日々続けるわけで、向かう方向性がないと、なんかダラダラしちゃって…。

 




 

そもそもオープンウォーターにご興味を持たれたきっかけを教えてください。

 

1992年のバルセロナ・オリンピックで、岩崎恭子さんが平泳ぎで金メダルを獲得したことでしょうか。当時小学1年生であった私は、そのレースを見て漠然と「いつかオリンピックに出たい」と思ったのを憶えています。2010年、アメリカで「パンパシフィック」という競泳の選手権があり、自由形の日本代表として参加していた私に、担当コーチが「オープンウォーターの出場は競泳の強化にも繋がる」と勧めて、試しにやってみたのがきっかけでした。

 

 

プールから、オープンウォーターへと移られたわけですが、どういったところに魅力を感じられたのでしょうか?

 

まず、自然の中で泳げること。そして、競泳が強いから勝てる種目じゃないというところです。オープンウォーターは総合力が問われます。何が起きても、どんな状況でも冷静に判断して対応できる能力。そういったことを全部含めて魅力的だと感じます。25キロもある世界選手権は完泳に56時間もかかり、忍耐力も必要とされます。練習でも淡々と泳ぐ私には向いているかな、と思いました。

 

 

日本でのオープンウォーターの歴史はまだ短く、そのため海外、とくにオープンウォーターが盛んな国、オーストラリアに目を向けたと伺いました。

 

日本はまだオープンウォーターに出場したオリンピック選手がいなかったですし、世界選手権にも10年間参加していなかったんです。それで、海外の経験を積んだ情報もわからない状態で、2010年に私が参加することになりました。国内のベテランからうかがえる話も少なかったため、そういったときに、私は自分で調べたり、積極的に情報集めをする必要がありました。そんなとき、2012年のロンドン五輪に向けてオーストラリアで合宿に参加したいと思い、私のコーチを通して水泳コーチの亮さんと知り合いました。それからも、来豪するたびに練習中の海外の選手を観察したり、彼のサポートを始め、海外のコーチに話を聞いてみることができました。オーストラリアとの関係を続けてきたのは大事でしたね。

 

 

今回は、ロンドン五輪以降初となる休暇で来豪されましたが、どんなことをされましたか?そして、普段はこういったオフの日、どう過ごされるのでしょうか?

 

今回は久々のオフでしたので、亮さんのスイミングスクールで水泳仲間とゆっくり時間を過ごしたり、フィッシュマーケットに行くなどと観光も少々行いました。休みの日は、できるだけ友達と会い、いっぱいしゃべることが大事ですね。でも、結局水泳のことは頭のどこかに残っています。あまり調子に乗ったら、水泳に影響するから気をつけないとな…といった思いが頭の中でまわっています。

 

 

これからの目標や、そのためにどういった準備をされているか、お教えください。

 

来年、スペインで世界選手権があります。実は来豪する直前に日本での予選試合があり、そこで優勝ができたので、その選手権には内定をいただいています。最大の目標は、スペインの世界選手権で入賞を果たすことです。去年出場したさいは、良い試合ができず、悔しい思いをしました。「2年後は必ず良い戦いがしたい」、とそのときからずっと考えるようになりました。私の弱点は10キロコースの、最終3キロ地点から始まるロングスパートでスピードダウンしてしまうこと。その辺を改善できたら優勝もできると思っています。オープンウォーターの選手はやはりタイムだけでなく、泳力も重要ですね。オリンピックでメダルを獲得する選手と一緒に並べるように、力を入れています。

 

 

最後に、オーストラリアで海外生活にチャレンジしている日本人にメッセージをお願いします。

 

海外で頑張っている皆さんは本当にすごいと思っています。環境も違いますし、言葉の面なども大変じゃないですか。私の場合は、最後の最後まで諦めないこと。今までオリンピックに4回挑戦してきました。もちろん途中で諦めることも考えました。でも、ずっと諦めない結果、今年の五輪に出場することができたので、皆さんもいつも前へ、前へと、諦めずに頑張ってほしいです。

常に目標へと向い走り、諦めずに頑張れば、その努力は必ず報われる。そう笑顔で教えてくれた貴田裕美さん。今後の活躍から目が離せない。

 




プロフィール:貴田裕美


1985630日、埼玉県で生まれ、その後群馬県で育つ。大学卒業まで群馬藤岡スイミングスクールに籍を置いた。自由形長距離を専門とし、2010年からコーチの勧めでオープンウォータースイミングに参戦。その年、日本代表を決めるオープンウォーター10キロの「ジャパンオープン」で初優勝。2012年、ロンドンオリンピックにてオープンウォータースイミング種目に日本人として初出場を果たした。

 

 


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