日本の技術をシドニーで再現する陶芸家 徳竹秀美 | Cheers インタビュー

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瀬戸物の本場、愛知県瀬戸市で修業を積め、明治時代までさかのぼる、日本美術展覧会に名を2回も残した徳竹秀美。グローバルにその技術を活かしたいと、2005年に来豪し、現在ダーリングハーストにある名門校、ナショナルアートスクールに通う。学生ながらも、1018日から114日まで開催していた、オーストラリア最大級のアウトドア展覧会、『スカルプチャー・バイ・ザ・シー』で自身の作品が出展へと選び抜かれた。陶芸の話はもちろん、オーストラリアでの学生生活やアート活動などについて、お話をうかがった。

 

 

 

『つがい』2011 抽象的に、素材の素朴さを生かした鳥の像

 

 

瀬戸で師匠に弟子入りしたとお聞きしました。「瀬戸物」はもはや陶器の一般名称。日本伝統技術で学んだことは、今でも影響していると思われますか?

 

ものすごく思いますね。技術が少ない人たちを見ると、「え?」ってクエスチョンマークが頭の中で浮かび上がります。やっぱり自分にはスキルがあると感じます。大きなものも創れるし、人より速く創れる。それはやはり日本から持ってきた技術のおかげだと思います。ただ、「頭の中が保守的すぎるのかな?」って思うときも…。

 

 

日本では厳しい弟子入りを経験したとうかがっています。現在はオーストラリアの学校に通われていますが、日本とオーストラリアの教育の違いとは、どんなものでしょう?

 

オーストラリアの教育の良さは、何に対しても褒めることです。みんなに褒めるので、先生に"Yeah! That's great!"と言われると、「本当にこの人そう思ってるのかな?」と考えてしまいます。みんなに褒めるんですよね。でも、よく聞いてみると"great" "nice" "absolutely fantastic"など、評価の差もちゃんと見えてきます。叩いて伸ばす日本はもう少し褒める教育をした方がいいと思います。オーストラリアでは、小さい頃から人前でしゃべらせるプレゼンテーションがあり、終わったらディスカッションをします。けなすのではなく、話された内容に対して問いかけ、話を膨らませる。日本ももっとディスカッションやプレゼンテーションを教育に取り入れるべきではないかと思いますね。

 

 

来豪当初は語学学校に通い、その後ホーンズビーTAFEで陶芸を学ばれました。当時慣れないことなどありましたか?

 

先生に「コンセプトは何?」って聞かれたとき、私はそういったものを考えたことがないことに気づきました。「分からない」と答えたら、「え? じゃ、そのアイデアはどこから来たの? どうやって作ったの? あなたが作ったのに、なんでコンセプトがないの?」と先生は大変驚かれていました。でも今の学校に入学し、そのTAFEのときの出来事を教授に相談したら、「あ、そういう人もいるから大丈夫。人それぞれだから」と慰められ、ホッとしましたね。

 

 

ナショナルアートスクールでセラミック科の困難な修士課程を終えようと奮闘するなか、アート活動でも多忙な毎日を送られていると思います。今回は『スカルプチャー・バイ・ザ・シー』にも選抜され、より大変な日々を過ごされていると思いますが、卒業の方は順調に進んでおりますか?

 

卒業にあたり個展と論文に追われていて、学校を歩き回っていても、先生に「書いてるの?  ちゃんとやってるの」と、少しでも気を落とすとすぐに注意されますね。

 

 

ご自身のテーマのひとつとして、オーストラリアの植物に惹かれたと聞きましたが…?

 

日本の植物と大きく違うところでしょうか。種類や形がいくつもあり、自分の中では放っておけないぐらい惹かれます。例えばバンクシアは、すごく卑猥な形をしていて魅力を感じます。散歩の途中で見つけた植物を家に持って帰ったりすることもあります。

 

 

そういったオーストラリアの植物に対する興味が、アート創りへのインスピレーションになることなどはありますか?

 

植物の中の種が非常に気持ち悪い。生き物のような不思議な種だってあります。グロテスクなものに惹かれるんですよね。人間って綺麗なものよりも、美しくないものを見て、「うわ、見ちゃった」って、それが脳の中に残る。私が思う「美」というのは「見たくないけど、好奇心が沸くもの」。今回の「スカルプチャー・バイ・ザ・シー」でも、展示の準備中に親子がやって来て、「中に何か入ってるのかな?」と観察してたんです。砂しか入ってなかったので、あとからバンクシアの実をこっそり入れておきました(笑)。ちょっと覗いてみたくなるような感じを狙いました。

 




グローバルにも展開しているアウトドア展覧会、『スカルプチャー・バイ・ザ・シー』。ボンダイの海岸を歩きながら、ビーチ沿いに飾られた作品を見るこの展覧会は、50万人もの観客が集まるシドニーの大イベントとなっています。出展者のひとりとして選ばれた感想を教えてください。

 

来豪してから、初めて見た大きな展覧会でした。こっちでいう「彫刻(スカルプチャー)」は、立体でしたらなんでもあり。だから、西洋的に考えると、スカルプチャーはもっとも自由な芸術であります。オーストラリアで過ごした初めての夏に『スカルプチャー・バイ・ザ・シー』を見に行き、オープンエアで作品を飾れることに圧倒されました。そのうち、「陶器も出せるよ」と知人に言われ、いつか自分の作品も飾りたいなと夢を持つようになりました。以前通っていた学校のプロフィール欄に、「自分の作品をいつか『スカルプチャー・バイ・ザ・シー』に出したい」と記入していたぐらいです(笑)。

 

 

今回の展覧会の他にも、いろいろな芸術活動をされていますが、シドニーのアートムーブメントは日本人の目から、どのように見えますか?

 

ひと言でいうと、「自由」。陶芸の中でも、自分で窯を焼けない子、轆轤がうまく回せない子、自分で大きなものが造れない子など、短所があってもそれは指摘されません。オーストラリアのアートは、アイデア勝負。アイデアが強かったら、そういうコンペティションにも入選できます。

 

 

要するに、技術よりもアイデア重視ってことでしょうか?

 

「コンセプト」を重視します。私自身も抽象的な作品を創っています。花だったり、植物だったり、時には女性の性器と言われることも(笑)。何を思うかは、それもその人の自由です。作品を買っていただき、そして作品を可愛がってもらえれば、私としては満足です。

 

 

オーストラリアで再スタートを切った徳竹さんですが、なぜ、ここでアート活動を続けようと思ったのでしょうか?

 

日本で壁にぶち当たり、インターナショナルなものを見たくなって飛び出しました。たまたまうちの母親の知り合いがここにいたというきっかけで、来豪する決意をしたんです。海外に出たことがなかったので、最初はちょっと不安でしたが、英語が分からなくても知識はあったので、とりあえずもの創りには力を入れてました。

 

 

最後に、オーストラリアで今現在、そしてこれからもさまざまな形で活躍する日本人の若者に、なにかアドバイスをお願いします。

 

一日三回は人を褒めてください。そうすると、自分のことも他の人が気づいてくれるので、視野が広がります。一日三回人を褒めろと言われたら、人を観察するようになり、人に対する心がけが広まると思います。

 

 

 

Profile:徳竹秀美


愛知県出身。瀬戸市にて、陶芸家・加藤令吉を師事する。日本を代表する展覧会、日本美術展覧会で2回の展示を果たす。2005年、来豪。TAFEにて陶芸を学び、2011年からナショナル・アート・スクールで修士課程。

個人ホームページ: www.hidemitokutake.com.au

 

 


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