人の感情の動きを捉え、作品に投影させていく 映画監督 西川美和 | Cheers インタビュー
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    自分たちの夢のために共謀して結婚詐欺を働く夫婦と、次第にふたりの関係性が崩れていくさまを描いた衝撃作、映画『夢売るふたり』が、11月からの『ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル』にあわせて、シドニーとメルボルンの2ヵ所で上映される。主演の夫婦役を松たか子と阿部サダヲが熱演し、自ら脚本も手がける西川美和監督がメガホンをとった。『ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル』の開催にあわせて、1117日(土)の作品上映日に舞台挨拶を予定している西川監督に、作品への思いなどを聞いた。

     

     

    西川監督の作品では、主に男性心理に迫る映画が多いと思うのですが、今作の『夢売るふたり』で夫婦という男女関係を描こうと思った理由を教えてください。

     

    女性や男女の関係をテーマにした作品を撮ることがなかったので、今回は女性の心理を掘り下げる作品にしたいという気持ちがありました。その中でも、長い人生を共に歩む「夫婦」を焦点にしたいと考え、そこから構想を練り始めました。何か思いもよらぬ仕掛けが作品に組み込めれば、より人間味のある物語になるのではないかと、いろいろ考えましたね。

     

    「夫婦が共謀して結婚詐欺を働く」という仕掛けを取り入れたのは、なぜですか?

     

    夫婦の関係性を描くうえで、ふたりで困難に向かっていくさまを撮りたいと思ったときに、何か新しいアプローチができないかと考えました。ふたりの進む方向が応援したくなるようなものであればいいけれど、間違った方向に信じて進んでいく話は面白そうかなと。そこから夫婦が共謀して犯罪をする話になりました。犯罪ものは好きですし、人の心を描くのにいい案だったと思います。

     

    「結婚詐欺」をテーマとして扱うことについて、何か特別に調べたことなどはありますか?

     

    もちろん、いろいろとリサーチしました。警察の方にお話を伺う機会があり、結婚詐欺の手口や詐欺師になりやすい人の傾向について話を聞きました。そのなかで、意外に思ったことが、本当にごくごく普通の男性が詐欺師になりやすいということなんです。そんなに男前でなくても、人に対して優しくマメなタイプの方が詐欺師になりやすく、犯罪に手を染める傾向が強いそうで、そういった部分を貫也の設定に取り入れました。また、詐欺の被害を受けた女性からお話を伺ったときは、同じ女性として共感するところが多く、自分も騙されるかもしれないと思いましたね。今作では、そうした普遍的に共感できる人の心情を作品作りの参考にしています。

     

    作中では夫を結婚詐欺師にしたてた妻・里子やOL、ウエイトリフティング選手、ソープ嬢など、いろいろな悩みを抱えた女性が登場し、それぞれの生き様が描かれています。とくにウエイトリフティングの選手は、映画作品において取り上げられることの少ない職業だと思います。今回、女性アスリートを選ばれたのはなぜですか?

     

    騙される女性たちは皆、非常にチャーミングでかわいいところがある人たちばかりですが、共通しているのは、心に何かしらの穴があるということです。今回、ウエイトリフティングの選手の役を作ろうと思ったのは、「自分の生き方はこれしかない」という女性の純粋な強い意志を表現したかったからなんです。種目にもよりますが、体が大きいことはアスリートにとって有利なことですよね。とくにウエイトリフティングのようなスポーツには筋肉が欠かせません。なので、できるだけ体を小さくしないように、トレーニングを欠かすことができないんですね。でも、一方で女性にとって筋肉がついた大きな体というのは、見た目もそうですが、女性らしさやオシャレの楽しみが減るといったマイナスな面もあり、周りの人が推し量れない悩みもあると思うんです。そうした葛藤を抑えながらも、自分の信じた道に進む純粋な一面を表現したかったんです。

     

    お金のために夫を詐欺師に仕立て上げようとする妻役を「松たか子」さんが演じていますが、この役の凄みや性格を演出するうえで、松さんと話し合ったことなどがあれば教えてください。

     

    撮影前に要求したことは何もありませんでしたね(笑)。本当にすごい女優さんです。さらっと基礎ができているし、今回は難しい役だと思いますが、そう思わせないほどひとつ一つをしっかり掴んで演じられているので、すいすい進んでいく感じでした。シナリオを渡すときにそれぞれの人物設定を書いた紙も役者さんにお渡ししたのですが、松さんはそれを自分の中にしっかり取り入れつつ、演じてくれていたと思います。世間がイメージしているよりもはるかにいろいろなことができる女優さんで、これからどんな役者になっていくんだろうと楽しみですね。

     

    それぞれの役者さんに人物設定の資料を渡したということですが、例えば、夫婦役の松さん、阿部さんにお渡ししたものは、どういった内容が書かれていたのでしょうか?

     

    今回の阿部さんが演じた貫也について言えば、福岡の筑豊地方出身で、親は炭鉱で働いていたんですけど、「こんなところにいちゃだめだ、手に職をつけろ」と言われて、高校を卒業したらすぐ東京に出て、銀座か日本橋で修行して、料理屋を営んだといった内容。妻の方は、同じく福岡市内の出身で、東京の大学に進学しているんですけど、推薦入学で入ってるんです。付き合っていた彼氏と遠距離になっていて、もう続かないかなっと感じていた頃に、料理屋さんのアルバイトをはじめて、その料理屋の喫煙所でふたりは出会ってるんです(笑)。そんなバックグラウンドを書いていくうちに、ふたりの言葉の使い方やパワーバランス、異なる生活環境からくる考え方の違いとか、自分のなかで明確になりました。

     

    そうしたバックグラウンドは作品の中にも投影されているのでしょうか?

     

    そうですね。役者さんの中でしっかり息づいていると感じましたね。例えば、阿部さん扮する貫也は、九州の炭鉱で働いていた親の性格を受け継ぎケンカっ早いところがあるんですが、普段は腰が低く優しい性格で東京弁を使うんです。でも、作中の喧嘩のシーンで、阿部さんは途中から九州弁に切り替えて文句を言いはじめて、最後まで九州弁で怒鳴り続けてくれたんですね。あのシーンは途中からアドリブで、私から阿部さんに対して、九州弁で文句を言うように、とリクエストを出したわけではなかったんです。それを見て本当に素晴らしい役者さんだなぁと強く感じました。

     

    西川監督が映画を創ろうと志したきっかけを教えてください。

     

    こう言っては失礼かもしれないんですが、実は、監督になろうと思ってこの業界に入ったわけではないんです。もともと、映画が好きで大学のときに一日中映画のことだけを考えていられる仕事があればいいなぁと思って、配給とか宣伝の仕事でも就ければ、と考えていたんです。それから是枝裕和監督に出会って、たまたま是枝さんの直属の部下のような立ち位置に入ったんですが、いろいろと学ばせていただいているうちに、この業界に足を踏み入れていました。

     

    もともと監督志望ではなかったんですね。その後、どうして監督をするようになったのでしょうか?

     

    是枝監督と仕事を続けていくうちに、監督の薦めもあって脚本を書くようになりました。文章を書くことも好きだったので、映画で食べていけないときは、雑誌のライターになろうと思ってましたね。とりあえず脚本だけ書ければ満足だったんですが、「せっかくの台本を他人に演出されたら後悔するぞ」と、監督から諭されて長編初作品となる「蛇イチゴ」を監督しました。

     

    なるほど。是枝監督との出会いが、映画監督・西川美和のはじまりになったんですね。ちなみに監督にとって是枝監督は、どういった存在ですか?

     

    是枝さんにお会いしてなければ、私は違った人生を送っていたと思いますし、今でもお会いしたときは、監督と助監督時代のような感じでお話させていただています。そういう意味でも、私にとっては永遠の師匠ですね。

      

    最期にシドニーの若者に向けてひと言お願いします。

     

    私自身、まったく英語を話せない人間なので、海外の映画祭に行ったときに、自分の言いたいことが言えない不自由さをよく感じています。皆さんと同じように、若いうちに日本を飛び出していれば、もっと世界観が広がっていたかなぁと、よく思いますね。オーストラリアで、さまざまな経験をしている皆さんを逞しく思いつつ、羨ましいなという気持ちもあります。11月に開かれる『ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル』で、はじめてオーストラリアに行きますので、皆さんに会えることを楽しみにしています。

     

     

    西川美和 プロフィール


    1974年、広島県出身。大学在学中に是枝裕和監督作『ワンダフルライフ』(1999年)にスタッフとして参加。2002年、『蛇イチゴ』でオリジナル脚本・監督デビュー。2006年、『ゆれる』が国内の主要映画賞を受賞し、第59回カンヌ国際映画祭に正式出品。2007年、オムニバス映画『ユメ十夜』に参加。2009年、『ディア・ドクター』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞などを受賞。今作、『夢売るふたり』は、3年ぶり4作目の長編映画となる。 

     




    「夢売るふたり」

    原案・脚本・監督:西川美和

    キャスト:松たか子 阿部サダヲ 香川照之 笑福亭鶴瓶

    オフィシャルウェブサイト:http://yumeuru.asmik-ace.co.jp


    東京の片隅で小料理屋を営む夫・貫也と妻・里子。ふとしたことが原因で店を全焼させたふたりは、夫の浮気をきっかけに貫也の女を騙す詐欺師の才能に気付く。貫也を結婚詐欺師に仕立てた里子は、心に傷を負う女性から次々に金を巻き上げていく。映画『夢売るふたり』は、孤独を背負う女性たちに結婚という“夢”を売り、自分たちの“夢”のために金を手に入れようとする、異常な夫婦の感情の動きを捉えた作品だ。人の心理描写、とくに男性の心の内面を深く掘り下げる作品を多く手がけてきた西川監督だが、今作ではこれまで描いてこなかった女性、そして、男女の関係性をテーマに映画を作り上げている。

     

     

     

    16回 ジャパニーズ・フィルム・フェスティバル  シドニー会場


    日時:1114日(水)~25日(日)

    場所:Event Cinema

    505–525 George St,, Sydney

    西川美和監督作品  『夢売るふたり』上映日時

    日時:1117日(土)  午後645分から舞台挨拶・上映

     

     

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