AU発ブレイクビーツ界のスーパースター DJ Kid Kenob | Cheers インタビュー

AU発ブレイクビーツ界のスーパースター DJ Kid Kenob | Cheers インタビュー

Cheers インタビュー

現場に来てくれたみんなが楽しめるセッションを
いかに提供するか

ことの始まりは、1枚のアルバムだった。数年前、まだ日本にいた頃のこと。仕事柄、レコード会社からいつものように大量に送られてくる新譜の中から、何気なく手にしたその1枚は衝撃的だった。ダンスミュージックのミックスCDだったため、誰のアルバムなんて気にせず、即iPodに入れて毎日聴いていた。それから数年後のシドニー。このお気に入りのアルバムを久し振りにかけたところ、その場にいた友人が"これ知ってるで"と一言。"何で知ってるの?"と俺。"職場のオーナーの子どもや"と友人。数年の歳月を経て、ようやく巡り合いました。遠いと思っていたら、やたらと近くに。しかもオージーだったとは。そしてこのインタビューが実現したわけです。

DJ キッド・ケノビ。今やオーストラリアで1番忙しいDJとも言われ、世界中のブレイクビーツシーンを盛り上げている張本人として広く知られている。グルーブ感を損なうことなくヒップホップからハウス、テクノといったエレクトロ系まで幅広いジャンルを縦横無尽に操るそのプレイスタイルは、オーストラリアのみならず、ヨーロッパ、アメリカ、アジアのパーティ・ピーポーをロックしてきた。オーストラリアの超有名なクラブ情報サイト、IN THE MIXが主催するDJアワードでは、これまで2003年から05年まで3年連続して1位に選出(今年は惜しくも2位)され、それ以前にはDMA(ダンス・ミュージック・アワード)でも2度受賞するなど、オージーのクラブ好きに圧倒的に指示されているDJだ。

まずはそのITMやDMAで受賞したことについての感想から。

とてもラッキーに思う。DJを職業としてできる人は、ほんの一握りだからね。たくさんの人からのサポートがあったから実現したわけで、嬉しいよ。でも、一番大切なことは賞を受賞したり、1番になるんじゃなくて、現場に来てくれたみんなが楽しめるセッションをいかに提供することだと思うし、DJのほとんどがそう思ってるんじゃないかな。



なるほど、今や引っ張りだこのDJなのに、いきなりこの親しみやすくツンとしてない謙虚なスタンス。DJスキルに豊富な知識、さらにナイスキャラときた。まさに3拍子揃ったDJだ。

では、具体的にどういう感じでプレイしているのだろう?

クラブや小さな規模のイベントでは、クラウドのノリやヴァイブスを受けて即興でクリエイトしていくのが好きなんだ。だから、きっちりプランするのは避けるようにしてる。常にフレキシブルでいたいと思ってる。逆に、何万人もの人が集まるビッグイベントでは、クラウドは一種のショーを期待してくるわけだから、ちゃんと計画して骨組みを作ってセットしてるんだ。

様々な国でプレイしている彼がこれまで行った国は、イギリス、カナダ、ブラジル、アメリカ、中国、タイ、シンガポールなど。そのプレイスタイルは、国によっても、違ってくるのだろうか?

どこの国でも、クラブでも、大切なのはクラウドを知ることだと思う。例えば、この前中国に行ったんだけど、クラブシーンというものが全く違った。アッパークラスの人が占めていて、座ってお酒を飲むって感じだったから最初は戸惑ったけど、クラウドを知った今は是非また行きたいな。あと、アメリカやカナダはあまりダンスカルチャーが根付いてないから盛り上がり方がちょっと違うね。どこの国に行ってもオージーの観光客が多いから、彼らが盛り上げてくれるのは大きいよ。そういう時はオージーサポーターのすごさを実感するし、ほんとに感謝してる。でも、基本的には、グッドヴァイブスでオープンマインドのクラウドの前なら、どこでもプレイしたいな。

オージーサポーターといえば、最近では冬場の日本のニセコはリトル・オーストラリアと言っていいほど、オージースノーボーダーやスキーヤーで溢れかえっている。日本についてはどう思っているんだろう?

もちろん、日本のカルチャーや食べ物は好きだよ。刺身も大好き。でも、まだ日本ではパーティしたことがないんだ。じっくり旅もしてみたいな。ニセコのことは知らなかったけど、それはすごく興味があるね。

ところで、彼の非凡な音楽センスはどこから来ているのだろうか? その音楽的なルーツについて聞いてみた。

元々は父親がカリプソのミュージシャン(スティールドラム)をしてたから、子供の頃から音楽のある環境で育ったんだ。レゲエ、ファンク、ソウルといったブラックミュージックが多かった。それからヒップホップにハマって、刺激されたんだ。初めて買ったレコードもヒップホップだった。それからレイブカルチャーや、ダンスミュージック、テクノといったエレクトロニック系の音にいったり、アシッド・ジャズにいったりしてた。DJを始めたのは、10年くらい前かな。大学生の頃だよ。でも、気づいたらこの道を歩んでたんだ。その当時は、仲のいい友達とパーティを開いたりしてた。しかも入場料3ドルとか、信じられないくらい激安だった(笑)。

そもそもクラブカルチャーは90年代初頭、メインストリームに対抗するアンダーグラウンドなムーブメントとして起こったもので、世代を越えて音楽志向やスタイル、考え方にまで影響を与えてきた。オーストラリアもまたシドニーとメルボルンという2つのアツいクラブシーンを持つ国。そのことについて触れてみた。

DJを始めた頃は、シドニーvsメルボルンって感じで敵対感があって、DJのスタイルにも明らかな違いがあった。クラブシーンをよく知る人は、音を聴くだけでそれがシドニーのDJなのか、メルボルンのDJか分かったくらいだった。だから、その当時はメルボルンで支持を得ることが難しかった。他州に対する対立感がなくなって、ナショナルレベルで音楽が広がるようになったのは、比較的最近になってからじゃないかな。だから今は、キッド・ケノビをシドニーのDJではなく、オーストラリアのDJとして認識してくれていると思う。とても喜ばしいことだよ。

KID KENOBIという名前を一気に広めるきっかけとなったのは、イギリスの老舗レーベル、MINISTRY OF SOUNDからリリースしたミックスアルバム『CLUBBERS GUIDE TO BREAKS』による。そのアルバムは、オーストラリアにおいてブレイクビーツのCDをセールスするニュースタンダードになったほど。そして去年リリースしたアルバムは『KID KENOBI SESSIONS』では、DJとして初めて名前がタイトルになるということを成し遂げた。

ミニストリー・オブ・サウンドでの経験は、いいキャリアアップに繋がったし、名前も広まったから嬉しいね。ミックスアルバムは、ここ5年連続してリリースしてるんだ。今年はこれまでツアー三昧だったから、まだリリースしてないけど。CDを作ることは、大切なことだと思ってる。CDは人から人へと渡っていくものだから、どこで誰が聴いてくれているか分からないからね。実際、今回のこのインタビューもCDがあったからこそ実現したんだよね(笑)。

その通りです(笑)。名前といえば、キッド・ケノビという名前の由来が気になるところ。

子供の頃は、ファンタジーや魔法の世界が好きで、憧れてたんだ。男はみんな好きだと思うけど、映画『スターウォーズ』が好きで、それを観て育ったから、登場するオビ・ワン・ケノビからもらったんだ。よく日本の名前とか、アジアの名前って聞かれるんだ。

さらに、DJという職業をしている人のプライベートについても気になるところ。

いつもクレイジーな生活を送ってるから、この前もアデレードで朝までプレイして、次の日はブリスベンというスケジュールで、ホテルに戻ってすぐ用意して出発してって感じだった。だから逆にオフの日は何をしていいのか分からなくなるんだよ(笑)。仕事でクラブに行くし、友達もそのシーンの人間だから、オフの日は昼寝したりゆっくり過ごしてるかな。実は、今週が1ヶ月ぶりのオフなんだ。DJという職業は、仕事と社会生活が一緒になってるから、自己管理がとても重要だと思う。それができないと、アルコールやドラッグの世界に引きずり込まれていく可能性が高い。DJで怖いことは、その世界に一度入ってしまうと、それが普通になってしまって抜けられなくなることなんだ。

ここまでDJとしての功績のみに焦点を当てて話してきたが、実はリミキサーとしても一目置かれる存在の彼。2003年にはリミックス・オブ・ザ・イヤーという輝かしい賞も受賞している。そんな彼に、今後についても聞いてみた。

今はDJとして活動しているけれども、いずれは曲を制作したりプロダクションにチャレンジしていきたいと考えてる。でも、パフォーマンスも続けていきたい。ミュージシャンにとって大切なことは、音楽を作り、それをプレイして、観客のレスポンスを知ることだと思うんだ。なぜなら、クラウドのために作るものだからね。いずれにしても、何かしら音楽には関わっていきたい。そして、日本でプレイしたいな。

オーストラリアを飛び出し、世界中で人気のキッド・ケノビ。さらにはオーストラリアのFM局、トリプルJにて番組を持ち、ローリング・ストーンやFHMといった雑誌にも登場することしばしば。だが素顔の彼は、フレンドリーで、変にちゃらちゃらしてなく、しっかりした大人な人。常にクラウドを盛り上げることを考え、そしてベストな方法でそれをやってのける。これから夏に向け、各地でビッグイベントが目白押しだが、もちろん、彼の名前もすでにラインナップされている。今回は登場しなかったが、MCのシュアーショックと共に活動して5年。そのステージは、期待を裏切ることはない。偶然手にした1枚のアルバムから始まり、さらに偶然が重なってこのインタビューへと繋がった。こうなると、偶然ではなく必然だったように感じてくる。これから先も、もちろんチアーズはキッド・ケノビを猛烈にプッシュしていきます。まずは、ブレイクビーツを体で感じてみてほしい。

Kid Kenobi myspace

http://www.myspace.com/therealkidkenobi


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