ベトナム中部の母の味をマリックビルで楽しむ phd Vietnamese Restaurant | Cheap Eats Great Taste

 

ヤマグチ隊長不在の中、一夜限りの即席食べ歩き隊を結成し取材へと望むポンコツチアーズ食べ歩き隊一向。竜太郎臨時隊長と古株隊員、Y新米隊員のグズグズの進行の中、出会ったフォーはまさにチープイートの名にふさわしい逸品だった。


ベトナム人の町と言えば真っ先に思い浮かぶのがカブラマッタだが、シドニー近郊で最近メキメキと成長を遂げているマリックビルもまた、言わずと知れたベトナミーズタウンだ。カブラマッタはベトナムの南部系、マリックビルは北部系の料理店が多いそう。マリックビル駅のあるイラワラロード沿いの商店街には、行列をなすポークロールの専門店や、フォーの専門店、ベトナム食材を豊富に取り揃えている八百屋や薬局などが並び、どこか昭和の雰囲気を醸し出している。路上に駐車するさい、パーキングチケットの義務がないところからも、このストリートにはチープイートにふさわしい名店がまだ存在することを強く連想させるのだ。

商店街を歩いていくと、以前に本誌で取材した人気カフェ、『Corner Smith』のすぐ手前に、フォーのいい香りを漂わせているレストランが3件並んでいるのを発見。取材先は既に決まっていたのだが、念のためにそばの薬局のオーナーに「どのお店が美味しいの?」と確認を入れると、迷わず『phd』の名前が挙がったので一安心。
屋号のphdとはDoctor of Philosophyのことだろうか。名前からもその極めた感じが伺える当店は今年で14年を迎える。夕方になるとベトナム人の女子高生が楽しそうにスイーツを食べる姿があったが、ランチやディナータイムにはベトナム人常連客はもちろん、アジアの芸能人や政治家までもこぞって足を運んでいるそうだ。34歳でお店を切り盛りするのはマイケルさん。サイゴン陥落後、彼が7歳のときに父ヘンさんと母でありヘッドシェフのランさんとともにベトナムを離れオーストラリアへと移り住んだ。現在ではマリックビルロードにも2号店を出すほどの人気店を築き上げている。

「…そろそろ気になる料理を試食しませんか?」とズバッと口火を切ったのは新米隊員のY。せかされてまず登場したオントレーはバインセオと呼ばれるベトナム風クレープ、Vietnamese Crepe - Style Pancake with Prawn & Pork($12.50)だ。ポテトフラワーを練りあげたタネをパリッとパンフライして仕上げたクレープを開くと、中にはシャキシャキのモヤシと海老、豚がふんだんに入っている。これを切り分けて、砂糖や酢、唐辛子、ニンニクなどで作った甘酸っぱいベトナムの万能ダレ、ヌクチャムを軽く馴染ませて野菜とともに頂く。サクサクの食感とふわっと包み込まれた具とのマッチングが心地よい。「マイケルさん一家の出身であるベトナム中部のフエでもバインセオは庶民的な料理として今も好まれてて、挟む具材も家庭によってさまざまなんだって」と竜太郎隊長はどこか得意げ。

次に登場したSteam Rice with Shredded Pork, Grilled Pork & Egg Cake($12.00)は、モチモチに炊き上げられたブロークンライスに半熟の卵焼きが乗ったキッズにも人気の料理。シュレデッドポークとはポークスキンの細切りで、とても歯ごたえがあり、ゴハンとの相性もよい。骨付きの生姜ポークは日本人にはとても馴染みのある味だ。生姜焼き定食といってもそう遠くはないだろう。ダシがしっかり効いたスープも忘れずに。

(左)Vietnamese Crepe - Style Pancake with Prawn & Pork($12.50)

(右)Steam Rice with Shredded Pork, Grilled Pork & Egg Cake($12.00)


どんぶり飯のような容姿のVermicelli Combination with Salad, Spring Roll Grilled Pork & Sugar Cane Prawn($14)の大きさにどよめく隊員たち。バーミセリが見えないほどに飾られた食材の中でひときわ気になったのは、海老のすり身をサトウキビに巻いたもの。すり身にかぶりつくとサトウキビから甘みが染み出して病み付きになる。そして甘だれを絡めグリルした香ばしいスライスポークやコリコリした食感のポークスキンの細切り、ニンジンやレタス、モヤシなどの野菜をバーミセリとともに小皿に取り、甘酸っぱいヌクチャムとともに食す。「このボリュームと、野菜、肉、麺などからの豊富な栄養バランスで14ドルというプライスが、すでにチープイート代表のようなひと品。しかも味にも抜かりはないですね!」と古株隊員の一言でさっそくオススメにノミネート。

ここでお待ちかねのPho with Medium Rare Beef & Combination (R $12 / L $ 15)が登場する。透き通ったスープは、当店オープン以来継ぎ足しを繰り返し、牛骨などを炊き続けた伝統ストックに、発汗作用のあるシナモンと血の巡りを促す八角の風味が深くしみた、健康にもよいスープ。赤身がかった薄切りビーフやコリコリのトライプ、ビーフボール、コリアンダーなどが豪快に盛り付けられ、その下にはライスヌードルが敷き詰められている。バジルをちぎり、レモンをしっかりかけて食べるのが基本。今回はレギュラーサイズでオーダーしたが、3ドルプラスしたラージサイズは成人男性2人で食べても十分な食べ応えを誇るので、大食いはぜひ試してみて頂きたい。「透明度のあるビーフストックのスープは、八角の風味の中に牛骨エキスの甘みが感じられて、サラッとしている割にライスヌードルとしっかり絡み合うね」と竜太郎隊長が絶賛。「八角の風味が病みつきになる」と古株隊員も後押しし、今夜のイチオシに決定した。


(左)Vermicelli Combination with Salad, Spring Roll Grilled Pork & Suger Cane Prawn ($14)

(右)Pho with Medium Rare Beef & Combination (R $12/ L $ 15)


最後に登場したのは、マイケルさん一家の出身地であるフエの伝統料理、Hue Traditional Spicy Soup Combination with Thick Vermicelli($12.50)だ。「もっと辛いのがよかったら言ってね」というお母さんの優しい言葉が、いやみに聞こえるほど辛いそのスープは、牛の脊髄や腱からの甘み、野菜の旨みでしっかりダシを取り、レモングラスで仕上げたフエの伝統的ディッシュ。太めのバーミセリを使用しているので食べ応えも十分だ。「魚のつみれやスライスしたポークなど具が盛りだくさん♪」とY新米隊員。ベトナム通の方にはぜひ試してみてほしい一品だ。

最後にベトナム式コーヒーのHot Black Coffee($4)とIced White Coffee($4)をそれぞれオーダーして一息。穴あきの容器で淹れるベトナム式コーヒーは、フィルターからなかなかお湯が落ちず抽出に時間がかかるため、深みのあるビターコーヒーになる。これにコンデンスミルクを入れるのだが、飲むときにはスプーンでよくかき混ぜて好みの濃さに調整してみてほしい。


(左)Hue Traditional Spicy Soup Combination with Thick Vermicelli($12.50)

(中央)Iced White Coffee($4)

(右)Hot Black Coffee($4)


当店のヘッドシェフであるランさんは10歳の頃から台所に立ち、自分の家族やサポートしてくれる周りの人々に料理を振舞っていたという。今でも毎朝3時に起き、フォーのストックの支度に取り掛かり、グツグツといい匂いを放つまで調整を怠らない。スペシャルな母親が作るフォーを息子が自信を持ってサーブする。身も心も温まる母の手料理をぜひ一度試してみてほしい。

 

 

 


 

 


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