APERITIF -キングスクロスで味わった本格ヨーロッパ料理 | Cheap Eats Great Taste

APERITIF

APERITIF

前回に続き、食べ歩き隊の狙いはヨーロッパ料理。向かったのはシドニーを代表する繁華街、キングスクロスである。平日の夜にもかかわらず、人通りは絶えない。行き交う人の波から少し離れ、一本入ったところに「APERITIF(アペリティフ)」は静かに佇んでいた。

 

店内はワインレッドを基調にした照明で、落ち着いたいい雰囲気。暗い灯り、高い天井、そして壁際には炎がゆらゆらと揺れる暖炉があり、見事にオーセンティックな欧州的空間を作り出している。フレンチ、イタリアン、スパニッシュなど幅広いメニューの中からヤマグチ隊長がひとつ一つ、セレクトしてくれた。

Chicken Liver ParfaitとDuck Rillettes Ocean Trout Gravlax

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Chicken Liver Parfait($9)とDuck Rillettes($9)

最初に運ばれてきたのはChicken Liver Parfait($9)とDuck Rillettes($9)。それぞれチキンレバー、ダックフォアグラのパテ。まずは白の下地に淡くピンクがかったチキンレバーからご紹介しよう。ムース状のパテをサクサクのトーストに乗せて口に運ぶ。すると舌にのせたパテはクリーミィーな香りを残して、たちまち口の中で軽く溶けてしまった。見た目の鮮やかな色らしく、自然な甘みが口に広がる。さっぱりとしていて、日本人でも抵抗なくいただけるだろう。続いてダックのリエット。一見しただけでは真っ黒でただのブルドックソースにしか見えない。そこにスプーンを入れてみると、表面がプリッと割れて、中からたっぷりムースが溢れ出してきた。ゼリー状にした赤のポートワインで表面を覆っていたというカラクリだ。辛味もあるパテはチキンのものより重さがあるが、印象に残る濃い味。また甘味果実酒であるポートワインの程よい甘さと香りが溶け込み、大味にすることなく繊細なコクを引き出している。「コレステロールを気にしている」と言っていたはずの隊員たちにも大好評。隊長の「やっぱりフォアグラはダックのほうがいいな!」という声もあり、ダック・リエットをオススメに指定!

 

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Ocean Trout Gravlax($15)

次にやってきたのは見事にデコレーションされた色鮮やかなOcean Trout Gravlax($15)。"グラブラックス"とはスカンジナビア地方から来た魚料理のひとつで、ここでは塩や砂糖、ライム、コリアンダーに一緒に漬け、熟成させている。大胆にカットされた肉厚な切り身は実に食べ応えがあり、同時に熟成された旨みが口の中にジュワーっと広がる。海苔のように表面にまぶされているのはディルというハーブで、その爽やかな香りが鼻を抜けていく。これらの調理法により生臭さは見事に消されており、また添いつけられたフランス産のサワークリームをつけて食べてみると、これがトラウトとの相性抜群。濃厚なソースだが、邪魔することなく素材の旨みとブレンドしている。魚は生でも食べられる日本人からすると、手をかけ過ぎという印象を持つかもしれないが、そこはやはり魚に対する苦手意識を持つヨーロッパの料理法と言えるだろう。APERITIFのシグネチャーディッシュである一品は、ローカルのオージー達に人気な料理であり、頭を切り替えて楽しめば、日本人にとっても素晴らしい魚料理であることには変わりない。

Seared Sea Scallops & Parsnip Puree with Charmoula Salted Cod Croquettes

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Seared Sea Scallops & Parsnip Puree with Charmoula($15)

シーフードが続き、お次は黄色く彩られていて、これまたキレイにデコレートされているSeared Sea Scallops & Parsnip Puree with Charmoula($15)。ホタテをひとつ丸ごと贅沢に口に放り込むと、その弾力のある身が噛むほどに大きく躍動する。プリプリと弾け続けるその食感を堪能するのは至福の瞬間。さもすると淡白な印象になってしまうホタテを幾段も高い味わいに引き上げているのが、上部にふりかけられた茶色い魔法の粉。これはチャモラ(Charmoula)というモロッコなど北アフリカ地方で使われる香辛料。ガーリックやチリ、コリアンダー、クミンがミックスされているのだが、これが激ウマで、ホタテというクセのない食材が見事に表情豊かに調理されている。またマヨネーズのように見えるソースが、料理全体に丸みを与え、やわらかい口当たりにまとめあげている。ペースト状で滑らかに口の中をすべりぬけていく、これの正体はいったい? そこで初参加の教員系女性隊員Mが皆に教えてくれた。「これはParsnip(白ニンジン)ですね。あまり馴染みがないですが、こっちではよく煮込み料理に使われます」。甘みがあって、味もしっかりしている根菜だ。最後にこの料理のまとめを癒し系天然女性隊員Oにたずねてみた。すると「そうだわねぇ、これはウニだわねぇ」とのお答え。ウニ?な、なるほど。今夜も癒し系Oワールド全開である。説明を加えるなら、ホタテだけでは出しようのない深いコクがあったということである。であろう。隊長もお気に入りのウニなホタテは当然、オススメ入り!


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Salted Cod Croquettes($15)

思わず、ジャパニーズ・フード?と声をあげそうになってしまったのがSalted Cod Croquettes($15)。見た目は我々もよく慣れ親しんだシンプルなコロッケ。今や日本の国民食とも言えるコロッケだが、実はフランス料理なのである。カラッと揚がった衣をサクッサクッと噛むと、中からほんのりバター風味のマッシュポテトが飛び出してきた。ホームメイド風のマヨネーズは甘みと酸味がよく調和されていて、カリカリのコロッケに絶妙にマッチ。フランス産でも、コロッケのおいしさのポイントは同じである。ただ中身に馴染みのないものも含まれている。これはなんだろう? そこでまた物知りM 隊員の出番だ。「これは塩漬けされたCod(タラ)の白身ですね」。なるほど、若干、塩辛い感じがしていたのはそのためか。料理を知っている、なんとも心強い味方が入隊してくれた。これには隊長も感心しきりで、「すごいねぇ。僕なんか料理のうまい、まずいぐらいしかわかんないよ」となにげなく致命的なカミング・アウト。我々は隊長に十年もついてきたのに・・・。

Chargrilled Baby Octopus with Charmoula & Herb Salad Snails & Sweet Breads Cassolette

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Chargrilled Baby Octopus with Charmoula & Herb Salad($20)

まだまだ出てきます。Chargrilled Baby Octopus with Charmoula & Herb Salad($20)はこってりと濃い味が思いっきり染みこんだ一品。味の決め手はまたも魔法の調味料チャモラ。ベビー・オクトパスを風味豊かなチャモラと一緒に12時間もの間、マリネしているらしいが、丁度よく火が通されていて、柔らかくも身はしっかりしており、歯応えが素晴らしい。また身の隅々にまで、チャモラの旨みエキスが行き渡っている。一緒に和えられたパセリ、コリアンダー、ミズガラシがさっぱりと味を調える。レモンを絞っていただけば、さらに清涼感はアップ。だがそれでも隊員からは「ちょっと濃すぎる、しょっぱい」という声も上がる。そこで反論したのが、お酒いける口の外交系O隊員。「お酒を飲むにはこのくらいが丁度いい。それにこの料理ならワインもいいけど、普通に日本酒、焼酎でもいいだろうなぁ」とのこと。確かに日本の居酒屋などでも違和感なく出てきそうな品。酒の肴には最高であろう。

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Snails & Sweet Breads Cassolette($18)

お次は期待と不安が入り混じる一品、Snails & Sweet Breads Cassolette($18)。ご存知、エスカルゴである。フランスはブルゴーニュ産の本場の食材。マッシュルーム、サヤインゲンと共にオリーブオイル、バター、ガーリックで炒められており、香ばしい匂いには素直に食欲をそそられる。ただ世界中の料理を食べ歩いてきた隊員たちも、エスカルゴには若干抵抗があると見えて「カタツムリ、カタツムリ」の単語を連発。次第にそれがエスカレートして「ナメクジ、ナメクジ」などと連呼しだす有り様。若干、食欲を失ってしまった感は否めないが、気を取り直して頂いてみた。するとどうだろう。変なクセ、くさみなど一切なく、大粒の身は食べ応えがありながらも、非常にやわらかく滑らかな舌触り。オリーブオイルとガーリックの効かし方が絶妙である。香りのいいマッシュルーム、シャキシャキのサヤインゲンとの相性もいい。また大胆に盛り付けられているパン粉は、"Duck fat(ダックの脂)"で揚げられているため、味が濃く、甘みがあり、全体に芳醇な香りを加えている。隊員たちにも大好評で、何の抵抗も見せず、エスカルゴの身をどんどん口に運んでいく。ここにきてワインがまわり始め、だいぶできあがっていた弊誌派遣員Uは、なんと隊長を無視しての「オススメ!」を勝手に宣言。名調子を奪われた形の隊長の同意も得て、見事にオススメ入りとなった。

POT-AU-FEU

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POT-AU-FEU($48)

最後にサーブされたのは閉めにふさわしいボリューム満点のPOT-AU-FEU($48)。キャベツやニンジン、カブなど、緑黄色野菜がたっぷり入った体に優しいフランスの家庭料理。8時間も煮込まれており、野菜や肉の本物の出汁の旨みが凝縮されているが、それでいてギトギトはしておらず、落ち着いた上品な味。すべての野菜が限界までやわらかく、且つとてもみずみずしく保たれており、噛むと旨みたっぷりのジュースが溢れ出してくる。そして骨付きで大胆に盛り付けられている牛のすね肉。その歯応あるジューシーな肉の仕上がりはどうだ。やわらかくも繊維のしっかりした自己主張のあるすね肉は、牛筋の煮込みにも似ていて、病みつきになる味。このポトフ、シンプルながらも奥が深い。素朴という言葉だけで終わらない味わい深さは、さすがにプロの技。ペロリと平らげた隊員たちは、今度はパンをオーダーしてスープにつけ、絶品の旨みを最後の一滴に至るまで堪能。隊長をして「う~ん、参った。魚料理なら日本だけど、肉料理ではやっぱ西洋にかなわないなぁ」とまで言わしめた。そして先ほどのうっぷんを晴らすかのように、「これはオススメ・オブ・オススメ!」と声高に宣言をして満足顔。フランス式のおでんとも言えそうな家庭料理ポトフをこれからの寒い時期にどうだろうか。アツアツのできたてにマスタードをつけていただけば、美味しく体も温まるはず。

気配りが素晴らしく、とても雰囲気のあるお店APERITIF。店内にはワインバーもあり、お酒もじっくり堪能できる。チープイートな予算には不向きかもしれないが、なればこそ大事な人との特別な夜にどうであろうか。


欧州系レストランに行くと、ヨーロッパ通の隊長よりも、いや、誰よりもテンションが上がるのは実はK隊員。なぜってワインが引き立つから。料理じゃなくて、"ワイン"が引き立つから。それがワイン命、Kという人間である。今回はBYOなしのレストランであるかわりに、ワインの品揃えが充実。なんたってレストラン内にワインバーが設置されているくらいである。ということでワインの買出しに走る必要はないのだが、やはり今夜もK隊員の鼻息は荒い。
Marechal methode traditionnelle Castro Martin Rias Baixas Lirac Mont Redon Grenache

Marechal methode traditionnelle
Chenin Blanc/$45 (スパークリングワイン)

フランスはシャンパン地方で作られるスパーリングワイン。ドライなイメージがあったがフランスのChenin Blancは意外や、やわらかい味。爽やかさとまろやかさが同居しているといった趣き。バランスの良い炭酸の泡が、まろやかさを醸し出している。

Castro Martin Rias Baixas
Albarino/$55 (白)

オーストラリアのドライリースリングに似た味覚。甘口で飲みやすい。実はスペインで甘いものというのは少ないので、これは貴重な類といえる。そのスムースな味わいはさっぱりした日本食と相性ばっちりである。

Lirac Mont Redon Grenache/$65 (赤)

フランス産の赤。色も香りも軽めのワインだが、いざ飲んでみると意外とずっしりくる。重みがあるぶんコクがあり、舌触りが大変良い。今回でいうとポトフなど、後半に出される濃い目の料理によく合う。これだけまろやかなGrenacheはオーストラリアにはそうない。

 


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