tipico-新イタリア人街・ファイブドックで見つけた名店 | Cheap Eats Great Taste

この度、食べ歩き隊が訪れたのはファイブドックにあるイタリアン・レストラン。ヤマグチ隊長がイタリアの友人から勧められたというお店である。その飾り気のない素朴な佇まいを見て、隊員たちの期待度は"中"といったところ。しかし、そこに待ち受けていたのは、全隊員の予想をいい意味で大きく裏切る名店との出会いであった。

今回はヤマグチ隊長の友人であり、在シドニーイタリア総領事館の領事であるという方からの推薦でファイブドックへとやってきた。イタリア人街といえばライカートがその代名詞であったが、肝心のイタリア人はハーバーフィールド、コンコルド、そしてファイブドックへと移り住んでおり、現在最もイタリア人が多く住むのはここファイブドックであるという。イタリアン・レストラン自体はこの界隈にまだ3件しかないとのことだが、イタ飯好きにとっては今後注目すべき街といえるだろう。そんなファイブドックで3年前にオープンしたのが『tipico』。
当店のオーナー、シェフ、ピザ職人たちは10年以上前からライカートなどで一緒にレストラン経営をしてきたファミリーのような間柄。そんな陽気なイタリア人たちはこの日、メニューには載っていない"裏メニュー"を3品も紹介してくれることになる。しかし、目が肥えているはずの隊員たちが入店時に思っていたのは、失礼にも「この店、なんか地味…」というものであった…。

Calamari & moscardini alla griglia ($17.50)

この日の品目のチョイスはオーナーであるマークさんが「俺に任せておけ!」と自ら引き受け、裏メニューを交えながら、コース料理のように見事なバランスで並べてくれた。最初の品は、Calamari & moscardini alla griglia ($17.50)。イカとベビーオクトパスをオリーブオイル、レモンジュースで炒めて、塩コショウを振っただけのシンプルな料理なのだが、この品を口にした瞬間に隊員たちの表情は一変することとなった。魚介の半透明の身は、みずみずしく、しっとりとしながら不思議なまでにやわらかいのである。初めての食感と言っても言い過ぎではないこの歯触りに、隊員たちは素直に驚きを表す。炒める前に素材をマリネするのがこのやわらかさの秘訣とのことだが、それ以上の細かいレシピは企業秘密だということで判明せず。何であれ、当レストランの持つポテンシャルを早くも、そして確実に嗅ぎつけた隊長は、「ハーバーフィールド以外にもこの私がわざわざ足を延ばす価値のあるイタリアンが存在するのかもね」と、鋭い目つきでいきなりのオススメ宣言をした。 

Nannata alla griglia ($16.50)

続いてのアントレは、Nannata alla griglia ($16.50)。ナナータは、隊長が現地を訪れた際に食べて惚れこんだ料理であり、現在では自らも自宅で調理することがあるというイタリアの軽食。隊長の認識では揚げたものというイメージが強かったナナータだが、当店ではグリルしたものを提供している。揚げた場合のサクサク感がない代わりに、当店のナナータはしっとりとして、なめらかな食感を持ち、たっぷりと用いられた白魚を全体がオムレツのようにふわっと包みこんでいる。小麦、卵のほかに、隠し味でパルメザンチーズを加えていることから、口当たりは実になめらかでまろやか。薄味で素朴な味つけながら、舌の上でとろけて広がるソフトな旨みを感じれば、それ以上に欲すべくものは他になく、隊員たちもそれぞれ無言で悦に入っている。唯一聞けたのは、隊長が唸るように小さく洩らした「オススメ」という言葉であった。そしてこの頃には隊員たちも、紛うことなき超オススメ・レストランとの出会いを確信していたのであった。

Linguini vongole ($19)

メインであるピザの前にお目見えしたのはパスタ、Linguini vongole ($19)。アサリをたっぷりと用いたリングイーニ(パスタの一種)のボンゴレである。隊長の持論では、ピザの美味しいお店ではパスタはイマイチ、もっと言えばマズイということになっている。ピザ専門店的な側面を持つお店の場合、必然的にその傾向が強くなってしまうのは事実であろう。当店もまたその看板に"Pizzeria(ピザ屋)"と掲げており、隊長の顔には不安が見て取れたが、その先入観は簡単に吹き飛ばされることとなった。茹で置きのパスタを出す店も多いが、当店ではオーダーを受けてから茹で始め、しっかりと芯の通ったアルデンテを提供。味も白ワイン、ガーリック、オリーブオイルなどによるシンプルな調理と、新鮮なアサリから染み出た旨みにより、さっぱりとしながらコクのある仕上がりになっている。パスタだけで勝負しても一級線であることが証明され、当店の懐の深さを見せつけられた形だ。良質なアサリを厳選していることから、この品の提供は仕入れ状況に左右されてしまうとのことで、メニューには載っていない。70%の確率で用意できるとのことなので、訪れた際にスタッフに尋ねてみてほしい。

Pizza Prosciutto ($19)

満を持しての登場となったのはPizza Prosciutto ($19)。リーズナブルな値段ながら、XLサイズの大きさで迫力満点だ。そしてもちろん、さらに驚くべきはその質である。ローマスタイルの薄い生地は、驚くほどにクリスピーでサクサク。それだけでも美味しく食べられそうな生地に、イタリア産のプロシュット(生ハム)、パルメザンチーズ、ロケットが所狭しと載せられている。肉の深い旨み、チーズの香り、ロケットの心地よい苦味が複雑に絡み合いながらも、口に残るのはやはり上品でやさしい風味。ピザ通の隊長も文句のつけようがないレベルの高さだ。

Calzone ($18)

続けて運ばれて来たのは包みピザ、Calzone ($18)。イタリア人がシドニーに持ち込み、徐々に浸透してきているという目新しいこのピザ、カルツォーネはハム、モッツアレラチーズ、トマトを生地で包み、釜で焼き上げたもの。ナイフを入れると、生地の中にたっぷりと詰まったモッツアレラがとろけるように溢れ出す。そのあっさりとしてどこまでも軽い味わいゆえに、すでに満腹であるはずの隊員たちも、まだまだいけるといった具合にすぐに平らげてしまった。「余計なことはせずシンプルに、それでいて素材を最大限に活かす。イタリア料理の真髄のすべてがここのピザにありますよぉ!」と手放しで称賛する隊長と、「満腹なはずなのに完食してしまう、これは奇跡のピザですよぉ!」と興奮気味に絶賛するソムリエK隊員。2品ともこれまでに高まり続けていた期待度のさらに上を行く本物のイタリアン・ピザであった。

Pizza Nutella ($13),Affogato ($5)

デザートとして供された2品は、どちらも正規のメニューには載っていない裏メニュー。Pizza Nutella ($13)はオーストラリアでもおなじみのイタリア産チョコスプレッド、「ナテラ」を載せたデザートピザ。オーナーのマークさんいわく、オージー製よりもずっと風味が豊かであるというイタリア直輸入のナテラは、ふっくらとパンケーキ風に焼かれたもちもちのピザ生地との相性が抜群。イタリアの家庭風のお菓子をぜひ一度味わってみてほしい。本日の充実したラインナップを締めるのは、最後にほっと落ち着かせてくれるコーヒー、Affogato ($5)。アフォガートは、コク深いイタリア式のエスプレッソにバニラジェラートを加えた大人のデザートであり、イタリアで体験した味を忘れられない隊長が日々恋しく思っている品である。ジェラートのまろやかな甘みとエスプレッソのほどよい苦味が溶け合い、心にじわんとやさしく沁みる。隊長も「シドニーで食べるアフォガートには失望することが多いんだけど、これは本場の味にまったく遜色ないね」と太鼓判を押す。と同時に「今回は本当に全部がオススメ、選抜するなんて無理だよぉ」と贅沢な悩みを打ち明けた隊長であった。

思いがけず素敵なお店と出会った今回の食べ歩きは、いつも以上の盛り上がりを見せた。お腹いっぱい食べたはずなのに、帰りしなにピザをテイクアウェイする隊員が続出したという事実からもその余韻が感じられる。ピザボックスを片手に帰路へとつきながら、「何を食べても美味しかった、全部試さなきゃ損」「高くて美味いのは普通のこと、安くて美味しいからこそ価値がある」など思い思いの声が上がる。シドニーのメジャーなグルメサイトやガイドブックからまだあまり注目されていないという当店は、まさに隠れた名店。「こういうお店を発掘するのが我々チアーズ食べ歩き隊の使命であり、醍醐味ですよぉ」と話す隊長も誇らしげだ。裏メニューの存在も多い当店だが、この誌面を持って赴けばオーダーも容易なはず。そして隊員たちを感動させた素晴らしい品々を堪能してみてほしい。

ソムリエK隊長のワイン談義

Penfolds Thomas Hyland Cool Climate Chardonnay 2008 SA $19
環境にこだわり寒冷な気候で作られたシャルドネですので、爽やかでなめらかな口当たりが特徴です。南イタリアのシーフード料理によく合うでしょう。
Red Hill Estate
Pinot Noir 2007 VIC $24
ビクトリア州にあるMornington半島で作られたピノ・ノアールです。ライトな印象ですがしっかりとボディもあり、チーズやオリーブとの相性が良いですね。
Grant Burge Barossa Valley Miamba Shiraz 2008 SA $17
美味しいシラーズを産むバロッサ・バレーの中でも、ミアンバというシングル・ヴィンヤードだけで作られたワインです。葡萄自体の質の高さを感じます。

購入場所:BWS / 100 Great North Road, Five Dock

tipico
86 Great North Rd, Five Dock
02 9713 5122
ランチ 火~金12pm-3pm
ディナー 火~日6pm-10pm
要予約(金、土)
BYO、$3 per bottle
アクセス:George St-Wynyard前スタンドより437、438のバスに乗車し、Five Dock Shopsで下車。所要時間約30分。

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