独占インタビュー 竹内 結子 & 橋本 愛 | Japanese Film Festival

独占インタビュー 竹内 結子 & 橋本 愛 | Japanese Film Festival

観てしまった……と、恐怖が後からじわじわ効いてきます

 

竹内 結子

 

 

中村監督とは5作目となりますが、オファーを受けたときの印象はいかがでしたか?

中村義洋監督の作品だと聞いて、断る理由がありませんでした。「ぜひぜひ、喜んで出演いたします!!」と言った後で、「実はこういった話なんですが…」と聞き、何で受けちゃったかな、と(笑)。私は相当な怖がりではありますが、一方で、中村監督だったら克服できるんじゃないかという思いもありました。

 

「私」というキャラクターについては、どんな印象を持たれましたか?

主人公でありながら、どこか傍観者的な立場でもある人ですね。物事を冷静に眺めていて、小説のネタを拾うかのように状況を見つめています。あまり感情の起伏は激しくありませんが、かと言って、興味がないわけではない。心霊現象があるなら、どうしてそれが起きているんだろうという好奇心もあって、橋本愛ちゃん演じる久保さんと行動をともにするわけです。はなから心霊現象というものを信じているタイプではないことが、私にとっては面白かったです。

 

役作りはどのようにされましたか?

監督からクランクイン前に、「テンションを低めに、淡々とやってください」とアドバイスをいただいていましたので、小さな声でボソボソと話すようにしました。また、傍観者的な立ち位置なので、深く考え過ぎず、その時その時に起こったことで自分が感じることを大切にして演じました。

 

現場の雰囲気はいかがでしたか?

和気藹々としていました。ただ物理的に現場が暗いので、ちょっとした灯りに皆がそそっと集まるような感じです。お茶場、監督のモニター、色々な機材を調節する手元など、作業をするところだけ、ほのかに明るいんです。落ち着きどころを求めるように、皆が寄り合いながら。でも、空気としては、クスクス笑うような、他愛もない話をしながら楽しく撮影していましたね。

 

物語は怖いけど、現場はとても楽しい雰囲気だったんですね。

「私」が受けた電話から、不気味な声が聞こえてくるシーンでは、私に内緒で、事前に収録していた声を監督が録音部さんと仕込んでいました。テストまでは、助監督さんが電話の相手もしてくださるので、「あ、これなら大丈夫。やり遂げられる」と思っていました。が、本番で突然、この世のものとは思えない声で「今、何時ですか?」と聞こえたので、本当にゾッとしてしまい受話器を放り投げ、悲鳴をあげてしまいました(笑)。人の声なのだけど、どこかバランスが壊れたような、なんとも言い表しがたい奇妙な声で。役の「私」ではなく完全に「竹内結子」で反応してしまったので、監督からは「2回目は役として反応してくださいね」と。そう言いながら嬉しそうに笑ってました。まんまと仕掛けに引っかかった上に、なんの反論もできず悔しかったー(笑)。

 

中村監督は、現場でこういったサプライズをよくなさるのですか?

何かしら企んでいる感じはしますね。お会いした最初の作品のときから、「策士」だなと思っていました(笑)。特別に、「これはこういう理由だから、こういうお芝居をしてほしい」ではなくて、ポンっとひと言、本番直前に吹き込んでくださることがあります。狙っているような狙っていないような…(笑)。大事な部分をきちっと吹き込んでくださるので、あ、こういう見方もあるのかと気づくんです。良い意味で「意地悪な方」なんです(笑)。悔しいなあ、結局手のひらの上で踊らされているのかな、と思いつつ、気持ち良く騙されます。

 

この映画でホラーへの苦手意識は克服されましたか?

結局は無理だったのかな、と(笑)。いわゆるパニックムービーみたいに、「はい、出てくるよ!」など、決まったキャラクターが皆を恐怖に陥れるのではなく、空気全体に何かあるというような感じですよね。ドキュメンタリーとして何かを追いかけていったら、とんでもなく怖い目に遭ってしまう、そんな感覚に近いでしょうか。その土地に残っている「穢れ」が人から人に伝わっていくなんて、解決策がないような気がします。それってすごく恐ろしいことですよね。

 

何でこの人がこんな目に遭ってしまうんだろう、という恐怖ですよね。

そうですね。いわゆる「最凶物件」と言われるものを見に行って、一番楽しそうだった三澤君は大丈夫そうだし、平岡さんも本職だから、だいぶ昔から首ツッコんでるはずなのに大丈夫そうで。でも、きっと「私」はアウトになりますよね。同じような立場なのに、この人はなぜ平気なんだろう、救いはあるのだろうか、と。完成作を観た後、作品の内容が生活と地続きなので、「うわ~っ、持って帰っちゃったな」という感じがしました。後からじわじわ恐怖が効いてきます(笑)。紫外線で言うところのA波とB波みたいですね。実は気づかない紫外線の方が内々まで侵入してきますよ、という恐怖が仕込まれていますので、後日実感すると思います(笑)。

 

Profile
1980年生まれ、埼玉県出身。映画の他、テレビドラマ、CM、ナレーションなどで活躍中。主な映画出演作に、『黄泉がえり』(03/監督:塩田明彦)、『いま、会いにゆきます』(04/監督:土井裕泰)、『春の雪』(05/監督:行定勲)、『サイドカーに犬』(07/監督:根岸吉太郎)、『僕と妻の1778の物語』(11/監督:星護)、『ストロベリーナイト』(13/監督:佐藤祐市)、『インサイド・ヘッド』(15/監督:ピート・ドクター/声の出演)など多数。『ふしぎな岬の物語』(14/監督:成島出)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞など受賞多数。中村監督作品は、『チーム・バチスタの栄光』(08)『ジェネラル・ルージュの凱旋』(09)『ゴールデンスランバー』(10)など。最新作は、中村監督作『殿、利息でござる!』、6月に『クリーピー』(監督:黒沢清)など。

 

 

 

元を辿れば、人間に由来する。幽霊よりも人間が怖い

 

橋本 愛

 

 

演じる久保さんについてはどのような印象を持たれましたか?

脚本を読んで考えていくうちに、久保さんは物語を運転するような役割だということが濃く浮かび上がってきました。「久保さん」という役名からして、記号的な存在なんですよね。そういうところから、キャラクター性を考えるのはやめて、役割を果たすにはどういう工夫をしたらいいのか、方向性を置き換えていきました。

 

具体的にどう構築されていきましたか?

脚本を読んでも、セリフに幅があり過ぎて、また、演じようがあり過ぎて困ったなあと思いました(笑)。でもまずは、中村監督に衣裳合わせのときにいただいた言葉をヒントにしました。積極的で活発、というイメージをいただいたので、あとはセリフを覚えて現場に行って作っていく感じでした。

 

確かに活発で好奇心が強い女性ですよね。

そういう意味で、冒頭の現象を目の当たりにするシーンでは、恐怖というよりは好奇心の割合を大きくしました。物語を引っ張っていく存在で、恐怖の現象に対して、好奇心や関心の高さがラストに導くカギだと思ったんです。久保さんがミステリー研究会の部長をやっていることも併せて、そういう現象に引き寄せられていくということも自然に演じられればと思いました。原因や事の発端は何だろうとか、プロセス的なところに興味があるということは強かったと思います。

 

竹内結子さんとの初共演はいかがでしたか?

竹内さんは、リアクションが柔軟に変わる方でした。監督もその姿を見ているのが面白いと仰っていて。監督の指示に対しての反応もとても速くて、やっぱりすごいなと。それに、とても綺麗な方で見とれてしまいました。そこで、私が竹内さんに抱いた印象と、久保さんが竹内さん演じる「私」に抱く感情をリンクさせました。でも普段の竹内さんは、「私」とは全然雰囲気が違うことにも圧倒されましたね。

 

印象深いシーンを教えてください。

出会う人たちがみんな変人というのが印象的です(笑)。久保さんが取材に行くたびに変人に出会う。みんな気持ち悪くて、怪しいという。不動産屋役の杉山ひこひこさんなんて、アンドロイドみたいに話されていて。不動産屋として全然信頼がないけど、大丈夫かなって(笑)。皆さん面白かったです。

 

現場での中村監督の演出はいかがでしたか?

振り返るスピードとか細やかな指示が多かったです。印象的だったのは、「ビックリマーク3個」って言われたこと(笑)。声までは出ないけど、ちょっとした恐怖の表現が必要とされるシーンでは、「ビックリマークをあともう1個足して!」などの指示がありました。監督が確固たるビジョンをお持ちだったので、そこに自分を当てはめにいくという感じでした。

 

中村監督自身の印象も教えてください。

作品を拝見して、お会いする前は、ちょっと天邪鬼と言いますか、シャイと言いますか。直球にいかず、感動的なシーンでもさらっとやりのけてしまうし、ホラーもちょっとコミカルだったりするし。面白みやおかしさがあるのが、監督のちょっとねじれている部分なのかなと思っていました。この作品でお会いして、「今まで直球にやってこなかったけど、今回は恐怖を真っ当に描きたい」と仰っていたのが印象的です。いつもとは違う姿勢だったんだと思いますが、やっぱり最後は「意地悪な映画にしたい」とも仰っていて。この結末じゃないですか(笑)。でもそれが新鮮な感覚でした。みんな優しさを求めるし、最後にわずかでも救いのある映画が多い中、こんなにも穢れが残るようなラストで、本当に意地悪だなと(笑)。読後感のようなものが新鮮で、たまらなく魅力的だし面白かったです。

 

ラストは本当に意地悪でしたね(笑)。

結局人間的な狂気に戻るんですよね。この作品では心霊的な部分の方が大きいのかなと思いましたが、元を辿れば人間なんだな…って。悪意と言うより、純粋な欲望が生み出したものだと思いますが、欲が一番怖い。私は幽霊よりも人間が怖いと思いました。これをホラーと感じるか、ミステリーと感じるか、悲劇と感じるか、そのバランスは人それぞれ違うと思いますが、私は「悲劇」という感想が一番強かったです。

 

最後に…。もしご自分が久保さんと同じ目に遭ったとしたら、どうしますか?

すぐに引っ越します(笑)。荷造りして、すぐ家を出ます!

 

 

Profile
1996年生まれ、熊本県出身。2008年、『Give and Go -ギブアンドゴー-』(監督:森英人)で映画初出演。2010年、『告白』(監督:中島哲也)に出演し、一躍脚光を浴びる。その他の主な映画出演作に、『貞子3D』(12/監督:英勉)、『アナザー Another』(12/監督:古澤健)、中島監督の『渇き。』(14)、『リトル・フォレスト 夏・秋/冬・春』(14、15/監督:森淳一)、山崎貴監督の『寄生獣』(14)『寄生獣 完結編』(15)など。『ツナグ』(12/監督:平川雄一朗)、『桐島、部活やめるってよ』(12/監督:吉田大八)他で、日本アカデミー賞優秀新人俳優賞など各賞受賞。テレビでは、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13)や「ハードナッツ! ~数学girlの恋する事件簿~」(13)など。最新作は、『シェル・コレクター』(監督:坪田義史)がある。


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