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Japanese Film Festival


話題の日本映画をシドニーで上映 Japan Film Festival 2017

29/11/2017


 

 

白石和彌監督

 

ショートインタビュー

 

 

犯罪&ミステリー
彼女がその名を知らない鳥たち
出演者:蒼井優、阿部サダヲ、竹野内豊、松坂桃李、村川絵梨
監督:白石和彌
Sydney 11月18日(土) 8:10pm - 10:20pm
Sydney 11月25日(土) 8:10pm - 10:20pm
Ages 15+

 

 

ストーリー

十和子(蒼井優)は、8年前に別れた黒崎(竹野内豊)のことが忘れられず、仕事もせずに同棲している陣治(阿部サダヲ)の稼ぎだけを頼りに生活していた。十和子は陣治のことを「下品で、貧相で、地位もお金もない」と嫌悪していたが、陣治は十和子が愛おしく、異常な執着心を持っていた。ある日十和子は水鳥(松坂桃李)という黒崎を思い出させる男性に出会い次第に水鳥に夢中になっていく。しかし、水鳥との関係を否定するかのように付け回してくる陣治。一方「黒崎が長らく行方不明である」という情報が十和子の元に届き、陣治の普段の異常な行動から陣治がこれに関係しているのではと考え始める。陣治がとった想像をはるかに超える行動とは。

 

 

脚本化するうえで最も意識したことは何ですか?

 

これまで実録ものを中心に撮ってきましたが、小説を映画化するにあたって原作に惚れ込めたのは、僕にとってはものすごく大きなことでした。この映画は、原作者の沼田まほかるさんの力に支配されている作品になっています。仏像を作る仏師の人たちの「私たちは木くずをはらっているだけ。木の中にいる仏を出しているだけなんです」という言葉を読んだことがあるのですが、感覚はそれに近い。まさにちょっとずつ余計なものをはらいながら映画を作り上げていった感覚で、今まで撮ってきた映画とはそこが違うような気がしています。

 

役者の新たな顔を引き出す点も、白石組ならではだと思います。蒼井優さんとご一緒した印象を教えてください。

 

この世のものではないと思えるような美しい瞬間があると同時に、自分がブサイクに見える角度もすべて知っている。それを平気で使いわける女優です。動物的であり、母性も持っていて、菩薩のような顔のなかに殺意をないまぜにした表情を出すこともできるんですよね。僕はレンズの長さというよりもカメラと被写体の実際の距離感をすごく大事にしているんですけど、今回どんどん蒼井さんに近づいていってしまいました。完成した映画を観て十和子の中に強さを感じたのですが、それは平坦ではない人生を歩いてこられた、まほかるさんの持つ強さなのではないかと思ったんです。僕は男なのでやはり陣治に肩入れしていたのですが、もっと十和子の気持ちを入れた映画にするべきなんだろうか?と悩んだこともありました。でも結果的にバランスがとれたのは、その強さを蒼井さんが体現してくれたからなんですね。僕も蒼井さんもまほかるさんにはお会いしていないのですが、彼女のような女優だとあれくらいどっぷりと入り込んで体現することができるんだなと、僕自身が教えてもらった感じです。

 

阿部サダヲさんはビジュアルの作り込みも強烈でしたね。

 

阿部さんはこういう汚れた役をやりたかったんじゃないかと思います。誠実は誠実なんだけど、見てくれが汚くてやることが下品で…っていう。阿部さんの中には、脚本に忠実に演じようというルールがあるように感じました。関西弁なので現場でのセリフを変更したり増やしたりしたら大変かなと思ったのですが、言ったことに対応してくれるので僕もだんだん調子に乗ってどんどん増やしてしまって(笑)。多くは結局、編集で落としてしまったのですが、その過程があったからこそ自然と阿部さんの中に陣治が入っていったように思いますね。それと見た目に関しても、僕や男性スタッフはどんどんアイディアが出てきて。爪をネイルでガタガタにしたらとか、歯を汚くしたり、差し歯を外してものを食べるとか。それも楽しんで受け入れてくれましたね。

 

松坂桃李さんの下衆っぷりには、どこかユーモアも感じられました。

 

松坂くんは役柄についてはもちろんのこと、映画全体の中で自分のポジションや役割は何かをすごく考えて、理解している役者ですね。その上で本当に誠実にこの薄っぺらい役に取り組んでくれました。松坂君は『かの鳥』の撮影の直前に、『娼年』という舞台をやっていたこともあり、少し説明しただけで、「カメラはこっちですか? じゃあこう脱ぎますね」みたいにすごいスピード感で理解してくれる。ベッドシーンもすでに達人です(笑)。

 

竹野内さんも暴力的な役で今までにはない役柄でしたよね。

 

非常に暴力的な役なので、竹野内さんの中に役を落とし込むまでは色々と話しました。黒崎というのは野心が空回りして流されていく、弱くて生き方が器用ではない人間なんだろう、と。撮影に入る前からひげの長さも竹野内さん自らミリ単位で確認してくださって、本当に真面目な方で驚きました。天然記念物のような役者だと思います。全員が今までに見せたことがない顔を見せていると作品を観た方から感想をいただけて、〝白石組に出るということは新たなチャレンジをすることなんだ〟という流れができたことは僕にとっても大きいし、本当に奇跡の4人だと思います。

 

監督にとっては本格的な大人のラブストーリーになります。新たなことに挑めたという手応えは感じていますか?

 

僕自身はラブストーリーを撮るというよりも、愛の話になるだろうという意識で撮っていました。一般的にイメージするラブストーリーとは構造がかけ離れているので、てらいなく挑めたのかな、と。ずっと一緒にやってきたスタッフが「『凶悪』を超える代表作になったんじゃない?」と言ってくれて、僕もそう思っています。『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』のような映画は完成するとお腹いっぱいになるし、ひどい描写も多いからしばらくの間は自分でもう一回観たいとは思えないんです(笑)。でも『かの鳥』は、僕自身が今一番もう一回観たいと思える。こんなことはなかなかないんじゃないかと。〝愛の映画〟というよりも〝恋の映画〟が多い日本映画界の現状の中、愛とは無縁の映画を撮ってきた僕みたいなものがこういう映画を作れたことが、よかったんじゃないかなと思っています。

 

 

 

プロフィール

白石 和彌監督 / 1974年12月17日生まれ、北海道出身。95年に中村幻児監督主催の映像塾に参加。以後、若松孝二監督に師事し、行定勲監督や犬童一心監督などの作品にフリーの演出部として携わる。10年に長編監督デビューを飾った『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で注目を集める。長編監督作2作目となるノンフィクションベストセラーを映画化した『凶悪』(13)で、新藤兼人賞2013金賞をはじめ、第37回日本アカデミー賞優秀作品賞・脚本賞ほか各映画賞を席巻し一躍脚光を浴びる。16年には、現役警察官の有罪判決で世間を騒然とさせた稲葉事件をモチーフとした原作を映画化した『日本で一番悪い奴ら』と、日活の成人映画レーベル“ロマンポルノ”45周年を記念し発足した『日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト』第3弾を務めた『牝猫たち』というまったく違うジャンルの作品を手掛けた。今後の公開待機作は、役所広司主演『孤狼の血』など。


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