オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

カンジのLet it Rock -The Kinks-

バーシー

01/10/10


今回紹介するのはキンクスのライブアルバム『Live at Kelvin Hall / 1967年発表』。60年代、フーやスモールフェイセスらとともにモッズバンドとして若者からの支持を受けたキンクス。ビートルズを挙げるまでもなく、かっこいいバンドがたくさん存在した当時のシーンでも、個人的にどうにも放っておけないバンドがこのキンクスだ。



なぜってバンド名からして「The Kinks」なのである。直訳すれば“ザ・変態ズ”である。Kinkには他にも“ひねくれ”という意味があるわけだが、まさにこの2つのキーワードがこのバンドを、そしてソングライターであり中心メンバーのレイ・デイビスという人間を見事に表している。



紹介しておいてなんだが、この作品はロック史に残るライブアルバムなどではないし、キンクスにとっての代表作でもない。特別に演奏が凄いわけでも、録音技術が高いわけでもない。それどころかメドレーの箇所では演奏がグダグダになったり、ミキシングではオーディエンス(少女)の黄色い声援を過剰に乗っけたりと「んあ~」な部分も多い。



それでもやはり当時世界を席巻した“ブリティッシュ・インベイジョン”の一辺を切り取った貴重な記録であるし、また、初期の活動期間における彼らの魅力を網羅した完璧な選曲は、マニアから入門者まで分け隔てなくお勧めできるものだ。



デビュー当時のお家芸であったパワーコード全開の“You Really Got Me”と“Till the End of the Day”。労働者階級の視点で上流階級の人間を風刺したひねくれ度全開の“A Well Respected Man”。牧歌的な曲調と哀愁漂う美メロに合わせて、同じく上流社会を皮肉った代表曲“Sunny Afternoon”。孤独感や疎外感を無人島での生活に重ねてユーモアたっぷりに歌った“I`m on An Island”。これらの名曲を聴けば、このバンドのちょっと風変わりな魅力が自然と伝わるはずである。




キンクスはビートルズのような主役ではないし、ストーンズのような圧倒的なスター性があるわけでもない。しかし、キンクスは同じように主役ではない市井の人々にとってはどのバンドよりも“リアル”であり、また、ひねくれた精神性、および、そのひねくれたポップネスは、ブリティッシュカルチャーそのものを体現しているとも言える。



事実、70年代にはジャム、クラッシュなどのロンドンパンク勢が、90年代にはブラー、オアシスなどのブリットポップ勢がキンクスからの多大な影響を公言しており、そのねじれた魂がブリティッシュロック史の系譜に脈々と息づいているということがよくわかる。



やはり英国特有なのか、カラッとはならないキンクスであるが、だからこそ日本人にはしっくりとはまるようにも思う。ユーモアや哀愁がたっぷりと詰まった短編の文学作品のようなキンクスの作品群。この季節、シドニーの夜長にぜひキンクスをお勧めしたい。





TUNES



You Really Got Me

 http://www.youtube.com/watch?v=BeYtfNm3xBM&feature=related

 

Till The End Of The Day

http://www.youtube.com/watch?v=utiosGC7RKc&feature=related

 

A Well Respected Man

http://www.youtube.com/watch?v=AcSm0ShU8Y8&feature=related

 

I`m On An Island

 http://www.youtube.com/watch?v=kCEmR7JRoHk&feature=fvw

 

Sunny Afternoon

http://www.youtube.com/watch?v=1h1oRP7FfBw&feature=related

 

Milk Cow Blues

http://www.youtube.com/watch?v=qwDBepAv4KU&feature=related





※紙のチアーズ・2010年8月号掲載




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