オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

厄介な隣人

北山時雨

18/11/10


その昔、シドニーでエコツアーをしていた時、ツアー中にお客様から反論を受けたことが2回あった。信念としてエコツアーであるからには多くの解説とコメントがなければと考えていた。内容は多岐に渡り、オーストラリアの動植物の話から始まり、地形、気候、環境、地球の歴史、天然資源、そして食糧問題、特に食料自給率にまで及んだ。話はどうしても日本の将来は?という問題にならざるを得なくなる。例えば、現在の人口増加率のままで人口が増え続けると世界人口が100億人になるには何年かかるか、その時どのような問題が起こりえるか、それを回避するには…、というようなことで、別に日本の悪口を言った憶えはないのだが、どうも批判的に聞こえたらしい。40歳代のその男性は「日本に税金を払っていない人間(このオヤジのこと)が偉そうなこと言うな!」とかなりきつい口調であった。確かにオーストラリアに住んで、所得はオーストラリアで発生し、税金もオーストラリアに払っている。そのときは他の多くのお客様がいて争えない状況であったので「そうですか」としか言えなかったが、今ならどうなっていたか解らない。「税金云々」というその言い方はテロリストと同じ理論であると激論になっていたかもしれない。他人の意見を抹殺する方法に他ならないからだ。そしてもうひとりは女子高校生であった。別の日、同じ話をしている途中で突然「外国に住んでいるからって偉そうなこと言わないでください」と言ったのだ。このときは少しばかり反省したことを憶えている。なぜ反省したかといえば、このオヤジの話ぶりに「教えてやろうか」という気分がわずかに含まれていたからだ。何といっても高校生グループは全員バスの中で爆睡していたのだから。しかし「外国に住んでいるから云々」というのも抹殺の理論に他ならない。それにわずかの量の嫉妬心も…。住んでいる地が韓国や中国であったら果たしてそう言うだろうか?





さてそれで中国問題である。わが祖国を憂う気持ちは変わらないものの、上記のように、税金を払っている訳でもなく、外国に住んでいるからでもないのになぜ言うかといえば、ただ単に「わが祖国は、今少々危険な状況なのではないか」という思いがあるからである。すでに過去のことになってしまったが、世界中の人々が知っているように、沖縄の尖閣諸島沖で違法操業をしていた中国トロール漁船が、日本の海上保安庁の巡視船に衝突した(9月7日)。日本側はその船長を逮捕し、公務執行妨害容疑で那覇地検石垣支部に送検した(9月9日)。まあ細かいことは置いておくが、それに対し中国側は何と言って来たか。中国の楊潔チ(ようけつち)外相は日本の丹羽宇一朗大使を呼び出し「中国の漁船と漁民の拘束は違法だ」と抗議し、逮捕された船長らを即時無条件解放するよう求めたというのだ。これは一方的である。



その後の経緯は周知のように、温家宝首相が船長の即時釈放を公式な場で求め、次に対抗措置を一方的に次々と打ち出してきたり(レアアース禁輸等)、一方的に日中首脳会談を見送り、日本人4人を河北省石家荘市の軍事管理区域に侵入したとして拘束したり、訪日観光旅行を自粛する動きを中国の国家観光局が支持したりしてきた。まるで駄々をこねる子供のように。





日本側はどういうわけか中国人船長を処分保留で釈放したが(9月24日)それに対し胡錦濤政権は、中国人船長の釈放を決めた日本に対して、「謝罪と賠償」を要求してきた。言ってみれば強気の対日外交をして「揺さぶれば一層の譲歩」をするだろうと甘く見られたわけである。外務省幹部は「謝罪や賠償に応じる必要はない」と中国側の声明に不快感を示した(9月25日)、というが今の外務省は昔ほどではないにしろチャイナ・スクールそのままであろうから断固とした態度ではなさそうである。



ではなぜかくも傍若無人、厚顔無恥、破廉恥がまかり通るのか。確かに日本を追い抜き世界第二の経済大国になったという思い上がりがあるからだろう。あるいは独裁政権(中国は一党独裁政権の国家である)としては人民の目を政府に対してよりも外に向けさせなければ自分たちの政権運営上の失策や瑕疵を突かれるという恐れがあるからだろうか。あるいは独裁国家にありがちな極端な領土欲なのだろうか。あるいは自ら抗日デモを演出し(ウェブでデモや集会の呼びかけをしているというが一体誰がやっているのか?)、その上でデモや集会を弾圧し「飴と鞭」を使い分けているつもりなのだろうか。あるいは政権内部であれ、官僚組織であれ、そのように振舞わなければ自分自身の首が危なくなるか抹殺されるからだろうか。





いやいやこのオヤジは第一の理由として「嫉妬心」を挙げておきたい。日本はペリーの黒船来航(1852年)以降、明治維新(1868年)を経て国家建設を立派に成し遂げてきた。その中には、先進国に学び良く咀嚼し自らの血と肉にしたこと(世界中の物事を日本語で学べるということ自体大変な事業である)。あるいは日本という国家がその領土に比較して人口が多く、切磋琢磨という努力の性向を豊かに持っていること(中国の領土と人口と比較しての話だが)。あるいは簡単にいってしまえば民度が高いこと。教育レベルは平均してなおかつ高く(最近は他のアジアの国々に肩を並べられたらしいが)、富と生活レベルが均等に配分されていること。これらの条件がことごとく中国ではいまだに困難なテーマで、そこに大きな嫉妬心が湧き出てくる理由があるのである。考えてみれば日本くらい支配し易しいところもないのである。であるからこそ対抗措置を考えておかないとひどいことになるのではないか。国家の「嫉妬心」くらい恐ろしいものはない。それも隣国が…。



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