オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

その170 世紀末

北山時雨

17/08/11


さて、この欄もとうとう170回目を迎えることになった。丸々14年と2回目ということになる。嬉しくて悲しいというのはこういうときに使ってよいのか分らないが、なにやらそんな気がするのである。それにしても紙面で確認すると文字があまりにも小さすぎるので気をつけて大きくしようと思う。なに、分量を少なくするだけの話である。



どうも世の中の何かがだんだん煮詰まってきたような気がするではないか。色々な兆候を列挙してみよう。①10年前の同時多発テロ以来、アメリカはイラクとアフガニスタンに金を注ぎ込みすぎたとようやく気がついたようで、それもデフォルト寸前まで追い詰められてやっと方向転換しそうである(米ドル基軸制が変わるかもしれない)。②北アフリカのイスラム諸国は長すぎた独裁政権から脱しようともがき出し、エジプトでは大統領が退陣せざるを得なくなり、チュニジアはもう訳が分らなくなり、リビアではまだガダフィが頑張ってはいるものの、実質的には無政府状態である。その波はシリアやソマリア、そしてスーダンにまで及び、南スーダンが独立までしてしまった(イスラム国家が民主制移行となるかあるいは逆ブレして過激化するか)。③ヨーロッパの中はちょっと様相が違っている。EUという大きな経済圏の中で、それぞれの国の経済力に偏差ができて、一枚岩ではもうやっていけなくなってきたのだろうか。ギリシャ、ポルトガル、アイルランドの様相を見ていると、夢のような経済共同体が崩壊しかねない状況になっている(英仏独がいつ見放すか)。



大げさなことではなく、もっと卑近な例を挙げてみようか。例えば我が家に滞在しに来るお客様の食事のことである。最近になって、やれグルテンフリー(小麦粉および小麦由来のものが食べられない)だ、デイリー・フリー(乳製品がダメ)だ、ラクトース・フリー(乳唐を含む乳製品がダメ)だ、ベジタリアンでも卵は食べるけど肉はだめ、ベジタリアンでもイモ類とタマネギがダメ、卵は全くダメとか言ってくるのである。あらかじめ予約時に言ってくれればこっちも何とかやりようがあるのだが、その時になって言われると、もうこっちの頭がおかしくなる。それがひとりか2人ならお茶の子さいさいだが、この前は8人のうち6人が上記の組み合わせであったのである(そのうちひとりは妊娠中でアルコールと柔らかいチーズと生ものがダメ)。我が家は午後5時半ごろにサンセット・カクテルというものを出す。自家製のペイストリーの上に色々と美味しそうなものを乗せてニブルスを作るのだが、もうこの時点で上のグルテン、デイリー、ラクトース、ベジタリアン、妊娠でひっかかるのである。サラミは?チーズは? スモークサーモンは?

レバーパテは?と考えると複雑なパズルを解くようなややっこしさなのである。おまけに朝食のときも同じことを考えなければいけないのである。これは一体なんであろうか。ある種の食べ物にアレルギー反応が起きるということは、人体の免疫機能がおかしくなってきている証拠である。それも長い間の不摂生から来たということもあるだろうが、本人が気づかぬうちに殺虫剤や人口肥料などの農薬、遺伝子組み換え、予防接種、汚染、環境ストレスなどが積み重なってきているのではないか。以前もそういう人はいた。しかし非常にまれであった。人間の生物としての機能に大きな障害が出てきているような気がしてならない。



人間の健康以上に心配なのが地球の健康度合いである。今年は目に付いただけでもクイーンズランド州の大水害、クライストチャーチの大地震、東日本の大地震・津波と原発汚染、チリの火山噴火、アメリカの大風害、そしてここの所の熱暑と続いている。人間はいつの間にか自然を食い物にしているという意識をなくしてしまったから、その思い上がった根性を叩き直すために、少々痛い思いをさせておこうと誰かさんが考えたのかもしれない。そうすると近いうちにまた何かが起きると考えたほうが自然なのではないだろうか。



福島の原発問題で世界各国が原子力発電を考え直し始めたのはとても良いことのように思える。健康ということでもうひとつ心配なのが、人間の心の方の健康度合いである。ノルウェーで大量殺戮があって犯人を捕らえて見れば、イスラム過激派ではなく、全く対極にあるキリスト教極右翼であった。2083年に、ヨーロッパがイスラムを駆逐し新しい世界がやってくるという妄想に取り付かれたのである。オーストラリアに住んでいると多文化・多民族がすんなりと飲み込めるのだが、やはりヨーロッパは経済的にも追い詰められているせいなのか、あるいは我々が想像する以上にイスラム系移民の割合が増え、その影響が強くなりすぎたせいなのか分らないが、何しろ多文化・他民族という太っ腹な姿勢が崩れ、排外主義が頭をもたげようとしているように見える。オランダではっきりと反イスラムを謳った政党の党首が無罪放免されたニュースを見てその感を強くした。人間の心に「ゆとり」というものがなくなってきたのである。世も末なのである。そして何かが変わってゆくのである。

    User comments
    Comment1    ※10文字以下
    Comment4    ※8文字以下
    Comment2    ※30文字以下
    ・コメントは全角で500文字まで。
    ・書き込みはライターの判断で削除される可能性があります。
    ・詳細はチアーズ利用規約をご覧ください。

    関連記事

    その174 さてどうする?(2)

    20/12/2011

    北山時雨

    前回、世界人口が100億人になったとき、人間が生存する上で大変に困難なことが起きるであろうこと、...

    旅をする

    その173 さてどうする?

    06/12/2011

    北山時雨

    この10月31日に世界人口が70億人に達したという。以下読売オンライン版が伝えたところによると『...

    旅をする
    Banner3
    Side girl 20200116
    Side 2

    FOLLOW US

    SNSで最新情報をゲット!

    NEWSLETTER

    メールで最新情報をゲット!

    メールを登録する

    COUPON

    オトクなクーポンをゲット!

    全てのクーポンを表示