オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

豊かな等高線・・・バリの棚田

北村元

25/06/13




 














都会育ちで、田舎にも親戚のない私は、「田毎の月」と言う意味が、分からなかった。長じて、石川県輪島の白米(しらよね)千枚田をみたときに、初めて「田毎の月」の意味が分かった。田の枚数は国指定部分で千四枚もある。二〇〇一年に国の文化財名勝に指定された。


 


写真は、世界三位の米の生産国インドネシアのバリ島の千枚田。バリ島は南緯八度の赤道直下に近い、火山としては若い島である。東京都の二倍半の広さに二~三千メートル級の山々を擁しており、平地は少ない。十一月から四月までの雨期は、年間降雨量は二千ミリを優に超え、稲作と棚田の美しさに寄与している。 二期作が中心で年二回の収穫が基本になっているが、三期作の地域も存在するようである。


 


狭い傾斜地を使って作られたバリの棚田は、幾何学模様を描きながら山から海まで続く。


「ジャティルウィの棚田」は、高い山の尾根の緩斜面に段差の低い、区画の大きな棚田が整然と続き、その眺めは雄大である。一方、「テガラランの棚田」は、ウブドに近いために観光客も多い。谷の急斜面に張りつくように造られたため段差が高く、区画の小さい棚田の造形美は見事だ。


稲作にかかわるすべての作業は神事として位置づけられ、深く信仰する人々によっていまも受け継がれている。神々と人々によって守られてきた「バリ島の棚田」。田毎に映る月の会座はさぞかし見応えあろう。


 


周辺の島からの移住者がバリ島に定着を始めたのは三千年から四千年前といわれている。火山からの噴出物と雨がバリ島の豊かな台地と森林を育んだ。移住者は、この豊かな森林と台地を開発し、棚田を造成し、生活を支えてきた。


千年以上も前から、火山帯の山岳の伏流水から湧き出る湧水の泉を利用した用水路が造られ、 テラオガンと呼ばれる、山を貫く手堀のトンネル用水路も造成され、棚田に水が引かれた。このトンネルの用水路を現在でも活用しながら、バリ島に美しく広がる棚田は、世界に冠たる灌漑施設とスバックという水利管理組織により、一千年の時を越え、神を崇め、自然を大切にしてきた人々によって営々と引き継がれ、維持されてきた。 まさに驚嘆に値する営みだ。


 


にはたずみ 流るる水の 絶えなくば


命つたえて 山の棚田に


 


農耕は 田人の夢と 祈りなり


山の斜面の 野辺を舞台の



蝸牛


 


バリの棚田を見ると、日本の田人のこの短歌を忘れることはできない。田人の気持ちはどこかで通底している。




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