北村元
25/06/13
シドニー、いや、オーストラリアで、シドニー大学は知の最高学府と言っても、持ち上げ過ぎではないだろう。そこに、小路と小路を結ぶ高さ二メートル強のトンネルがあって、大学公認の落書き場所となっている。早速行ってみた。
この壁や通路が、一見して美しいかどうかは、年代によってわかれるところだろう。シドニーユニに入る学才も気力も、画才もない私は、「あれはすばらしいですよ」と誰かに言われれば反論できる材料は何ら持ち合わせていない。
が、とにかく、汚ねぇ。そして、臭せぇ。このシドニーユニの落書きトンネルは、何を意味するのだろうか? 難しい試験を突破して入学してみたが、試験の点数が悪かったか、教授への批判など日頃の憂さを晴らす活路をここに求める学生がいるのだろうか。自己顕示欲? 自己満足? それとも、芸術? はたまた、他に落書きさせないように、大学当局の防衛策? シドニーユニの学生証を持っていないために、警備員から追い出された人もいるというから、学生証を持たない人は描かないほうがいい。
それにしても、学生のために、大学がこういう福利・厚生施設をもっているのは私には驚きだった。
日本最古の落書きは、一九九七年一〇月に奈良県の飛鳥池遺跡で出土された、石敷井戸の枠板(七世紀頃)に書かれた、「蓮華の葉」や「男女」の画だといわれている。
海外の史跡に落書きを残した最初の日本人がいる。
一六三二年(寛永九年)にカンボジアのアンコールワットを訪れた肥後国平戸藩(現在の長崎県平戸市周辺及び壱岐諸島)の藩士・森本右近太夫は、回廊の柱に父親の菩提を弔う落書きをしたといわれている。
落書きとは、本来書くべきでないところに、絵や文字などをいたずら書きすることであるが、公認の場所ができてしまったら、それは落書きとはいえない。しかも、社会風刺などがなくてはいけない。
昔から「三上」といって、文章を練りやすい場所というのがある。それは、馬上、枕上、厠上の3つだ。便所を使用している最中は、さまざまな思索が交錯する。それの発露が便所の落書きといえる。
持論だが、落書きはトイレに限る。可愛い主張がなくてはいけない。いつだったか、TOTOが募集した最優秀作品で「僕は今 何もいらない 紙以外」というのがあった。 こういうのが、文字で書かれていたら、楽しい。 「父左 ぼくも左に 飛ばす癖」…こんなのかわいいじゃないですか?
くやしかったら、こういうたぐいのものを英語でかいてみたら?…と思うのだが。
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