オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

共生の文化 タイ・スラタニ

北村元

25/06/13




 














タイ南部のスラタニという町…に猿の訓練学校があるというので、ある日、出かけてみた。


 


校長先生のフルネームは、ソンポーン・サエコウ先生。いかにも動物に優しい、人のよさそうな中高年の壮年だ。それもそのはずで、スラタニとは「善人の町」という意味で、タイの王様ラーマ六世が命名した。


 


ソンポーン先生が、猿に木登りをさせてココナッツの収穫を教え始めたのは、一九五七年。両親がココナッツ農家であったため、ソンポーン先生は、ココナッツ収穫のために猿を伝統的に使ってきた。 農家の人の中には、思った通りに猿が行動しなかったときに、例えば、猿が熟したココナッツを木の上に残したときなどは、しばしば猿に体罰を与えていたという。彼の仏教の先生が、より良い方法で猿を教えるべきだ、と彼に勧めた。


 


そして、ソンポーン先生は、猿の訓練学校を創立した。猿の能力を最大限に引き出す訓練ができる人と周囲の人は言う。ソンポーン先生は、たったひとりの校長兼教員だ。やがて、彼の訓練学校は地元で有名になり、南部タイはおろか、タイで最も有名な猿の学校になった。生徒に対する優しさと寛大さで評判となり、すでに二十年この分野で王座を守ってきた。


 


野生の猿は近くの森で捕らえられて、学校でココナッツを収穫するために訓練される。学校は、主に豚尾猿(ぶたおざる)という種類の猿を訓練する。


 


先生の最初の仕事は、猿に新しい環境が快適であると感じさせることだ。これは、猿を訓練する上で最も重要で最も難しい。猿の面倒見を最大限に良くすることでこの難題は克服できるのだが、決して殴打したり体罰は加えない。根気の要る仕事だ。


 


三ヵ月のコースを終えると、次の三ヵ月コースでは、各々の猿は、幹からどのようにココナッツを回転させて収穫するか、落下したココナッツをどうやって持ってくるか、どうやって車両に積み下ろしするか、外皮を剥がすために、どのように労働者にココナッツを手渡すか、皮をむいたココナッツをどのように一度にふたつ、バッグに詰め込むか、そして、どのように自分自身のロープを体に巻くかを学ぶ。訓練を積んだ猿は、一日におよそ七百~千個のココナッツを収穫することができるようになる。これらの技術は、農家の人のかなりの時間と労働を省く。


 


実習授業を終えて、ソンポーン先生とくつろぐお猿さん。愛情あふれたソンポーン先生の笑顔が美しい。ぬるい井戸水で汗を流すのも、お猿さんにとっては、共生と至福のひとときのように見える。




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