オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

地球上で最も幸せな国バヌアツ

北村元

26/06/13




 














18世紀フランスの哲学者デニス・ディドロが書いた『ディドロの後悔』。


ディドロはあるとき、緋色のガウンを贈り物としてもらっていたく喜んだ。しかし、やがてガウンの見事さに較べて自分の書斎が貧相なのが気になり、ガウンに合わせて家具も次々と買い替えてしまった。そして気づいてみると、書斎は最新の家具に囲まれてかえって居心地悪くなってしまっていた…。


これはディドロの『私の古いガウンを手放したことについての後悔』という題のエッセイで、所有物の調和を求めて次々と物を消費してしまうことを、「ディドロ効果」と呼んでいます。


 


他人を見下しながら他人を押しのけて走ってきた20世紀。写真のここは、南太平洋はバヌアツ共和国のミステリー・アイランド。本当の名前はインユー島です。


 


英国の独立系シンクタンクが2006年に公表した「地球幸福度指標」で、地球上で最も幸せな国は、人口二〇万人の南太平洋の島国バヌアツ共和国でした。二位コロンビア、三位コスタリカと中南米の国々が上位を占めます。


 


面積一平方キロもない島一周を目指して歩き始めたら、日の丸を帆に取り込んだ船が一隻、沖から戻って来ました。真っ黒に日焼けした船頭さんが、もやいでいます。インディゴ・ブルーの美しい海と空を背景にした日章旗に私は目を奪われました。この船頭さんは、きっと自分の心のどこかで、日本のことを気に入ってくれているのでしょうか。その日本は一七八ヵ国中九五位。先進国と言われる国でも、ドイツ八一位、アメリカ百五十位でした。


 


アメリカ南北戦争時代の詩「悩める人々への銘」に人生論を加えた『無名兵士の言葉―人間を幸せにするものは何か』(大和書房)という本の中で、「求めたものはひとつとして与えられなかったが 願いはすべて聞き届けられた 私は 最も豊かに祝福された」という兵士の詩が引用されています。


 


著者の加藤諦三さんは、「この兵士が精神的成長を勝ち得て、苦しみをのりこえたのではないかと思います。すべてを手に入れたのに、願いはひとつもかなわなかったのが日本の現状ではないでしょうか」と話しています。


 


人はモノやカネ、地位、名誉、容姿などを得ることが、あたかも幸せであるかのように思い込んできました。


「わずかで満足できる。それが私たちのよさだ」…幸福度世界一位になったバヌアツの人の誇らしげな感想を大きな教訓にして、右肩下がりの時代に生きる私たち日本人は、今こそ、崩れない幸福を築きあげる必要があるのではないでしょうか。




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