オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

第124回〜「逆風」

辰井

17/06/08


今回はプロレスからは少し脱線して、世間を賑わしている日本スポーツの事を徒然に。


今、相撲界が大変な騒ぎになっている。依然として着地点が見えない朝青龍問題に加えて、今度は新弟子の死亡事件。いずれも大相撲協会の監督責任と管理能力が問われている。現在、2人の横綱はいずれも外国人力士。幕内でも同じような状況が見受けられる。新弟子の数も年々減少の一途を辿っているという。テレビ中継の視聴率に反映されるように、世間一般的な相撲人気も低迷。若貴ブームはかつての幻か。日本固有の国技は今後、どうなってしまうのだろうか。


柔道の世界でも大きな変化が起こった。国際柔道連盟の総会において日本が理事国から外れることが決まった。これは1952年に日本が同連盟に加盟してから初めてのことだという。日本発祥のスポーツであり、今では世界のスタンダードとなった「JUDO」を象徴しているかのような出来事である。


さらに逆風は続く。先の「アマレス世界選手権」において、日本のエース・浜口京子がまさかの誤審で敗れ去った。技を仕掛けたにも関わらず、相手のポイントとして判断された。浜口本人も、父親であるアニマル浜口も強く抗議したが、それでも判定は覆らない。後味の悪い始末である。しかしその後の対応が迅速だった。日本協会の会長が閉幕後に審判団を緊急招集し、判定基準の統一を図る講習会を実施した。かねてから日本女子レスリングに不利な判定が続く中、来年の北京オリンピックを睨んだ先手を打った格好になるだろう。


危機に陥った時に真価を発揮することが、難しくもあり、また必要なことだと思う。平時にいくら大言壮語しても、それはただの虚しい響きしか残さない。緊急時にこそ、発言力と行動力が試される。逆境を好機と捉え、打開のための布石をきちんと打つこと。


リーダーであれば、それこそが最も大切なことではないだろうか。


相撲界には残念ながら、そのようなリーダーは存在しないようだ。世論の反応にあまりにも鈍感で、ただ自分達の世界観だけに執着しているように見える。日本の国技を任されているという認識はあるのだろうか。国技を守ることよりも、自分達の立場や地位を守ることに視線が向いていないだろうか。そんなふうに思えて仕方がない。マスコミはこぞって相撲協会の「自浄能力」に期待すると言う。第三者的で傍観とも言えるスタンス。それは責任を自らの背に負わないからこそ言える、優等生的な言葉だとも思う。反転、それでは国民には果たして日本の国技を誇り、そして今の状況を憂う気持ちがあるのだろうか。果たして僕の中に、相撲を愛でる気持ちがどれほどにあるのだろうか。


世界中、どこに行ってもその国の国民は、自国の国技を誇りに思っている。10数年前、当時シドニーで同居していたニュージーランド人の友人が、ことあるごとに自国の国技「ラグビー」を自慢していたことをふと思い出す。自国の文化を愛すこと。自国のスポーツを大切にすること。それが自国を敬うことに繋がることは、机上の空論でもなければ、絵に描いた餅でもない。この当たり前のように思えることが、いつからか失われつつある。今回の一連の事件で日本の国技である相撲について考える日は、まだまだ続きそうだ。


 


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