本稿を書いている
11月5日、アメリカ合衆国の次の大統領がオバマ候補に決まった。1年以上の長きに及ぶキャンペーンを制し、8年ぶりに民主党が政権を奪還、そして何よりも初の黒人大統領の誕生である。合言葉は「CHANGE!」。ストレートに改革を訴求する言葉と巧みなスピーチで大衆の心を掴んだ。今後は混迷する世界の中でどのようなリーダーシップを発揮するのか、また日本との関係はどうなっていくのか、期待と不安混じりで見続けていくしかない。
ということで、今回は超大国アメリカのプロレス事情について少し。これまでにも何度かご紹介したが、まあ折角なので(決して他にネタがない訳ではありません…)。
現在のアメリカのプロレスと言えば、「WWE」である。超大国の中の、超巨大プロレス団体。野球で言えば巨人と西武を足して、阪神を掛けたような存在である。競争相手を次々と買収し、その組織と興行を巨大化させていった。
日本のプロレスと確実に一線を画していることは、試合や興行内容の「シナリオ」の存在を認めている点で、プロレスを完全なショーとしての「スポーツエンターテインメント」として位置づけている。ちなみに、それだと日本のプロレスにも「シナリオ」はあるのか?ということになるが、これについては読者の想像にお任せするしかない。
試合内容を競うというよりも、綿密に練られたシナリオに沿って試合や物語がドラマ仕立てで進行していくという感じで、テレビの連続ドラマを毎回観ているような気になる。選手同士の抗争なら驚くほどでもないが、時には選手の私生活にまで踏み込んだ展開を見せるので、時として、「それはちょっと、やりすぎでは?」とドキドキしてしまう。もちろん、これも「シナリオ」の一種であるので、100%全てが本当ではないのだろうが、そのあたりの「フェイクドキュメンタリー的」な手法は、観客の心を十分に掴んで話さない。僕はケーブルテレビで放送されているものを時々観る程度だが、それでも観るたびに最後まで観てしまう。
そして驚くことに、テレビの放送枠がひとつではない。WWEという団体の中に、ふたつのリーグが存在し、それぞれが「RAW」と「Smack Down!」という番組タイトル(リーグ名)として、別の曜日に放送されている。これはテレビでの衰退が顕著な日本のプロレスでは考えられないことである。そして一定時期ごとに、このふたつのリーグ間で選手の移籍が行われる。これにより、新たなストーリー展開が付加され、飽きのこない質を保っている。通常の放送で物語を煽って、特番的な放送枠でその決着を見せるという大河ドラマの様相。一体誰がシナリオを考えているのかと疑問に思ってしまう。ちなみに日本のケーブルテレビでも、
ちゃんと別々に放送されている。
選手の「人種の多さ」を見れば、やはりアメリカは多民族国家なのだと納得してしまうし、CM中に挿入される「危険だから真似はしないように!」などの啓発映像も、何となくアメリカ的だなと思ってしまう。多方面に気を配りながら、その中で許される(?)ことを最大限にショーとして成り立たせる。エンターテイナーの真骨頂である。このあたり、何となく大統領選に通じるものがあると思うが、どうでしょうか…?
とにかく、一度、「WWE」を観てください。多分、オーストラリアのレンタルビデオショップでも数多く並んでいるはずです。筋のくだらない映画やドラマを観るより、十分に満足させてくれますから。