オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

第126回「歴史力」

辰井

19/06/08




北京五輪への1枚の切符をかけた、星野ジャパンの激闘は多くの人の心を掴んだ。結果的には3戦全勝という見事な快挙も、試合中は予断を許さない展開が続き、テレビの前で一喜一憂した方も多いと思う。

この一連の戦いを観ていて思ったのは、プロスポーツとしての野球の歴史の深さ、そして凄さに他ならない。精神力が試されるシーソーゲームの展開であっても、日本の選手は個々の確かな技術力に裏づけされた組織力を見せ、他の3チームを凌駕した。特に最終戦となった台湾との一戦。猛反撃からの大量得点で、台湾チームの戦意が完全に喪失したのは誰の目にも明らかだった。



僅差での戦いを勝利へと導けるか、否か。その鍵はもちろん個人や組織の力に大きく左右されるが、その背景には確かに「歴史力」が存在する。

近年にプロ化したサッカーやバレーボール。いずれも強国との実力の差は明白だが、その実力を生み出しているのは歴史であるからだ。ただ、単に歴史が深ければそれで良いというものでもないのだろう。その競技を支える競技人口、その底辺力。何よりもスポーツとしての人気や魅力が持続しなければ、歴史自体を紡ぐことさえできない。

台湾戦に勝利し、胴上げをされる星野監督のもとに集まった選手たちの背中越しに、これまで日本の野球を支えてきた先人達の姿がオーバーラップしていたようでならない。来年の夏、熱い北京の晴れ舞台で戦う彼らの勇姿を、存分に堪能したいと今から胸が踊って仕方がない。

さて、約70年の歴史力をもつプロ野球に比して、プロレスも、力道山以来、約50年の歴史をもつ。紆余曲折はあったが、何とか存在し続けているというのが実情だろう。かつてのようなテレビのゴールデンタイムの中継もない。力道山、猪木や馬場に継ぐ人気選手も未だ現れていない。

しかしながらそれを理由に、ただ衰退の一途を辿っていると認めてしまってはいけないし、事実、そうではないと思う。今の時代だからこそ、プロレスができることを真剣に考え、それに取り組んでいく必要があるのだ。

個々の団体が、自分主体の存続を考えるのではなく、プロレス界全体を見渡して将来への発展の礎を築いていく。団体単独の興行形式が主流のプロレスでは、これは本当に大変なことなのだろうと思う。しかし、だからこそ実現する意義があるのだと思う。

キーワードは、「統一コミッション」という言葉か。

多くのプロスポーツがそうであるように、統一機構をもつということ。ライセンス発行による選手のプロ化。例えば、ドラフト会議のように、人材を業界全体に分配するシステム。大相撲のような「部屋制度」。フランチャイズ方式。エトセトラ、エトセトラ。

他のプロスポーツから学び、取り入れることができる要素はいくつもあると思う。全てを実現する事は困難であっても、少しずつ挑戦していくことはできるはずだ。先人から受け継いだものは、ゆるやかにでも確かに進化させ、次代へと残していかなければならない。それが今という一瞬を生きる人間の努めなのだろうと思う。



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