オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

チャンピオンカーニバル

辰井

20/06/08




全日本プロレスの代名詞、チャンピオンカーニバル。他団体の選手も参戦し、過酷な総当たりのリーグ戦を展開する。今年の決勝戦に駒を進めたのは、新日本プロレスから参戦した棚橋弘至と、VOODOO-MURDERSから本隊への復帰を果たした全日本プロレスの諏訪魔だった。


両者ともに全日本、新日本のこれからを背負って立つべき選手。当然のことながら団体の威信がかかっていると言えるが、それを超えたところにある個人の思いが爆発した試合だったように思う。ひとりのプロレスラーとしての諏訪魔、棚橋の「現在」が見事に表れていた。チャンピオンカーニバルは全日本の諏訪魔にとってはホーム、逆に棚橋にとってはアウェイという状態を生んでしまうのは仕方がない。棚橋はそのことを十分に理解した上で全日本ファンからのブーイングを楽しむかのように振る舞っていた。新日本プロレスでは絶対的なベビーフェイスである彼にとってみれば、こうした体験は今後の成長のためにも必要だったのかもしれない。


しかし諏訪魔との戦いの終盤、棚橋にブーイングを浴びせるファンは皆無だったように思う。純粋に2人の戦いだけに心を奪われ、そんなヒマを与えてもらえなかったからだ。これはファンにしてみれば最上の経験であり、またレスラーにしてみれば冥利に尽きる瞬間であると思う。


試合の主導権は最後まで両者の間で均等に張られたまま、その緊張の糸が切れる瞬間のカタルシスのためだけに、その場にいた全ての人間が同じ感動と興奮を味わうことができたのだろう。


プロレスの醍醐味を、久しぶりに思い出した。幼い頃にテレビにかじりついて感じていた、あの感動。プロレスを愛する者ならば、誰しもが心の中に大切に保管している原点への回帰。大げさな言い方かもしれないが、素直にそう思える試合だった。


 


戦いに勝利した諏訪魔には、デビューからわずか3年半でのチャンピオンカーニバル優勝という箔がついた。しかし、その大いなる最短記録がかすんでしまうくらいに、諏訪魔自身が輝いていた。「ジャンボ鶴田の再来」と言われながらもヒールへの転向など、短いキャリアの中にあっても、怒濤のプロレス人生を歩んできた諏訪魔。短いからこそ、その密度と濃度を大切にしてきた結果なのだろう。優勝した諏訪魔には、これからの全日本を背負って立って欲しいと願うファンの声援が送られていた。


一方、破れた棚橋も、この敗戦によって益々魅力が増したことは疑いの余地がない。「俺が一番、カッコいい」というキザな台詞も、それが彼の魅力と思えるほどに板についてきた。レスラーとしてのキャラクターを徐々に確立しつつあるのは、誰の目にも明らかだ。本拠地である新日本で、彼がその個性と魅力をさらに発揮してくれることを、期待して止まない。


将来、この2人がそれぞれのキャリアを積んだ後に、絶対的なエースとして再び対峙する日が来ることを考えると、少年の頃にプロレスに抱いていた気持ちが再び甦ってくる。来週のこの時間まで待てない、と。


そんなプロレスを見せてくれた2人に、感謝。


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