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ドキュメンタリー映画「牡蠣工場」が SYDNEY FILM FESTIVALにて上映

想田和弘監督 ショートインタビュー

27/06/2016

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ドキュメンタリー映画「牡蠣工場」が
SYDNEY FILM FESTIVALにて上映

 

想田和弘監督


ショートインタビュー

 

想田和弘監督が手がけたドキュメンタリー映画『牡蠣工場』が6月18日にSYDNEY FILM FESTIVALのプログラムとしてイベントシネマで上映される。本誌では上映に先駆けて、想田監督にショートインタビューを行った。年々グローバリズムが忍び寄る過疎の町を舞台に、想田監督の描いた「観察映画」をぜひ楽しんでほしい。

 

 

 牡蠣工場 

観察映画第6弾
上映時間:145分
ロカルノ国際映画祭正式招待作品
Classification 15+

 

 

 

 

ストーリー


舞台は、瀬戸内海にのぞむ美しき万葉の町・牛窓(うしまど)。岡山は広島に次ぐ、日本でも有数の牡蠣の産地だ。養殖された牡蠣の殻を取り除く「むき子」の仕事は、代々地元の人々が担ってきた。しかし、かつて20軒近くあった牛窓の牡蠣工場は、いまでは6軒に減り、過疎化による労働力不足で、数年前から中国人労働者を迎え始めた工場もある。東日本大震災で家業の牡蠣工場が壊滅的打撃を受け、宮城県から移住してきた一家は、ここ牛窓で工場を継ぐことになった。そして2人の労働者を初めて中国から迎えることを決心。だが、中国人とは言葉が通じず、生活習慣も異なる。隣の工場では、早くも途中で国に帰る脱落者も。果たして牡蠣工場の運命は?

 

  

本作は「観察映画」の第6弾ということですが、「観察映画」とはそもそもどのようなものなのでしょうか。

 

予定調和を避けるため、事前のリサーチや台本作りをせず、ぶっつけ本番でカメラを回しながら目の前の現実をよく観察して映画を撮るという方法論であり、スタイルです。また、観客にもご自分の目と耳で観察してほしいので、ナレーションや説明テロップ、BGMを使いません。

 

観察映画『牡蠣工場』が生まれたいきさつをお伺いしてもいいでしょうか。舞台である岡山県牛窓の牡蠣工場との出会い、そしてどのような部分にひかれたのでしょうか?

 

牛窓は妻・柏木規与子の母親の故郷です。その関係で近年は夏休みを牛窓で過ごすことが多く、滞在中に現地の漁師さんたちと知り合いになりました。漁師さんたちはみんな70代か80代で、家業を継ぐ人もいない。色々と話を聞くうちに、彼らの生活をドキュメンタリー映画として撮らせていただきたいと思い立ちました。その舞台が牡蠣工場になったのは偶然です。仲良くなった漁師さんが牡蠣工場のオーナーだったので、撮らせていただくことになりました。

 

「過疎の町にグローバリズムがやってきた」と見出しにありましたが、想田さんの手がけた本作のコンセプト、映画を通して視聴者に伝えたいことをお聞かせください。

 

僕の映画に「伝えたいメッセージ」というのはないんですよ。牛窓の牡蠣工場の世界に突然放り込まれたかのような、疑似体験を楽しんでいただければそれで十分です。その体験から何をお考えになるのかは、観客ひとり一人違ってしかるべきです。

 

イベントシネマに訪れる方には本作の特にどのような部分に着目してほしいですか?

 

僕が自分のドキュメンタリーを「観察映画」と称しているのは、僕が目の前の世界をよく観察して映画にするという意味だけでなく、観客のみなさんにもご自分の目と耳で映画の世界を観察してほしいと願っているからです。で、観察するさいの着眼点はひとり一人異なるでしょう。それぞれの気の赴くままに見ていただければ嬉しいです。

 

本作を撮影していくうえで、被写体は撮られることに慣れていない現地の方たちが対象となるわけですが、撮影時に問題など起こりましたか?

 

本編にもあるように、中国人の労働者が牡蠣工場に到着するさいに、工場のオーナーから「もう撮影をやめてくれ」と言われました。やはり「外国人を受け入れる」という初めてのことをされるわけですから、不安になられたのだと思います。

 

想田さんの中で、本作のテーマにもなっている日本が抱えている問題のひとつである「過疎化」や「跡継ぎ」の問題について答えにたどり着いていますか? どのような日本の未来を描いていますか?

 

答えはないですよ。これは日本だけでなく世界の問題だと思っています。

 

ご自身が映画監督になるきっかけとなった出来事や人物、映画などはありますでしょうか?

 

小津安二郎の映画には影響を受けました。

 

同作品では東日本大震災の被災者の方にもスポットライトが当たっています。熊本地震を知ったときには、スイスにいらっしゃったようですが、ジャーナリストとしての想田さんは、熊本地震をどのようにとらえていますか?

 

僕はジャーナリストではないですが、熊本地震については、原発は危険すぎるからやめるべきだと、改めて思いましたね。

 

現在ニューヨークに在住されているとのことですが、国際社会の問題という観点から、先のオバマ大統領の広島訪問をどのようにとらえていますか?

 

オバマ氏が広島を訪れたことは大きな一歩だとは思いますが、「原爆を落としたのは間違った行為だった」ということが表明されずに、あたかも自然災害のように扱われてお茶を濁されてしまったのは残念でした。日本人の大半が歓迎ムード一色で喜んでいたのには違和感がありましたね。

 

 

 

想田和弘プロフィール

映画作家。1970年栃木県足利市生まれ。東京大学文学部宗教学・宗教史学科卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。93年からニューヨーク在住。NHKなどのドキュメンタリー番組を40本以上手がけた後、台本やナレーション、BGMなどを排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリーの方法を提唱・実践。観察映画の第1弾『選挙』(07年)は世界200ヵ国近くでTV放映され、米国でピーボディ賞を受賞。ベルリン国際映画祭へ正式招待されたほか、ベオグラード国際ドキュメンタリー映画祭でグランプリを受賞。第2弾『精神』(08年)は、釜山国際映画祭とドバイ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞、マイアミ国際映画祭で審査員特別賞、香港国際映画祭で優秀ドキュメンタリー賞、ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭で宗教を超えた審査員賞を獲得するなど、受賞多数。2010年9月に『Peace』(観察映画番外編)を発表。韓国・非武装地帯ドキュメンタリー映画祭のオープニング作品に選ばれ、東京フィルメックスでは観客賞を受賞。香港国際映画祭では最優秀ドキュメンタリー賞を、ニヨン国際映画祭では、ブイエン&シャゴール賞を受賞。2012年に合計5時間42分の2部作長編『演劇1』(観察映画第3弾)、『演劇2』(同第4弾)を完成、ナント三大陸映画祭で「若い審査員賞」を受賞。2013年、『選挙2』(同第5弾)を日本全国で劇場公開。2015年には『牡蠣工場』(同第6弾)を完成させ、ロカルノ国際映画祭に正式招待される。著書に『精神病とモザイク』(中央法規出版)、『なぜ僕はドキュメンタリーを撮るのか』(講談社現代新書)、『演劇VS映画』(岩波書店)、『日本人は民主主義を捨てたがっているのか?』(岩波ブックレット)、『熱狂なきファシズム』(河出書房新社)、『カメラを持て、町へ出よう 「観察映画」論』(集英社インターナショナル)、共著に『街場の憂国会議 日本はこれからどうなるのか』(晶文社)、『原発、いのち、日本人』(集英社新書)、『日本の反知性主義』(晶文社)、『観察する男 映画を一本撮るときに、監督が考えること』(ミシマ社)など。

 

 

 

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