28/02/2018
『一寸のムシにも五分のタマシイ』著者で元ワーキングホリデーメーカー
岡涼介さんにインタビュー!
「日本なんかクソ食らえだ!」そう思って、1999年にワーキングホリデーで日本を飛びだした岡涼介さん。日本では何度も挫折を経験した彼が一念発起し、NSW Business Collegeにて経営学とマーケティングを学んだことで人生が変わり始めた。その後University of Western SydneyでITを学び、卒業後にはシドニーで大手日系や外資系でITエンジニアとして勤務。オーストラリアで過ごした最後の3年間はIBM Australiaにも従事した。2011年の日本帰国後も、シニア・システム・アーキテクトとして活躍している岡さん。そんな彼自身の挫折や失敗から学んだ教訓が詰まった著書『一寸のムシにも五分のタマシイ』が昨年10月に出版され話題を呼んでいる。今回弊紙ではワーキングホリデーメーカーの先輩であり、『一寸のムシにも五分のタマシイ』著者、そして元弊誌コラムニストの岡涼介さんに出版後の気持ちを伺った。
今回が第一作目の作品となります、『一寸のムシにも五分のタマシイ』ですが、タイトルに使 用されているこのことわざは、著書を通して岡さんご本人を比喩されているのでしょうか。著書のテーマを簡潔にお聞かせください。
タイトルは私自身の「生き様」と読者に感じてもらいたいメッセージとして選びました。一言で表すと「雑草魂」です。社会に出れば学歴などそれほど関係なく、本気でやる気があれば道は開ける。どんなちっぽけな存在でも「譲れない意地」があるという思いを表現しています。他の人と違う道を進んで行くことに対しての不安は誰でもあると思いますが、ハングリー精神を忘れずに常に前進するという攻めの気持ちが人を成長させると感じてもらえると幸いです。
著書を執筆しようと思ったきっかけとはどのようなことだったのでしょうか。
以前チアーズさんでSuccessful mindというコラムを書かせていただいていた頃に、週2、3冊ぐらいのペースで本を読んでいました。また社内で「読み会」を立ちあげたりするほど本から学べることが多いことを感じていました。そして一冊の本に著者の考え方や人間性が凝縮されており、本を読み終わる頃には著者が昔からの知人になっていました。そのため本を通じて読者と繋がることができれば良いなと思い出版を決意しました。
著書の特徴として、要所要所に幸せに生きるための教訓が掲げられているのが印象的でした。どのような方が主なターゲット層でしょうか?
本の主なターゲットは10代、20代の若者ですが、その年代の親たちにも人生はさまざまな生き方があり、子供たちは無限の可能性を秘めていることを感じてもらいたいと考えています。出版などが決まるずっと前から本を書き始めていて、本の中にある教訓は常日頃から感じているものを執筆中に挿入しました。
海外生活においての教訓の中で特に印象的だったのが、「『習うより慣れろ』での経験が人間を成長させる」という言葉だったのですが、これはどういった教訓なのでしょうか。
人はテレビで見たことやネットで知ったことで賢くなった気分になってしまいます。ただ本来は実際に経験して、初めて物事が自分のものとなるし、知識だけでは知らないと大して違わないと感じています。多分、一人でもできる領域に達することで人は成長するんだと思います。子供(後輩)が失敗する前に、あれはダメ、これはダメと言う人が日本には多くいるようです。ただ失敗を含めての経験なので、まずはやらせて、自分で「成功・失敗」の経験を積ませることが大切ではないでしょうか。そのような環境で育って、初めて次にどうするかの判断が自分でできるようになるのだと思います。
岡さん自身が以前に留学を経験されていたことが文中には綴られていましたが、留学中の読者には著書を通して、具体的にどのようなことを伝えたいでしょうか。
留学かワーキングホリデーかなどの形にこだわりを持つ必要はなく、海外生活で日本の良い所/悪い所をきちんと理解してくることが大切だと考えています。
ワーキングホリデーは使い方によって、帰国後の就職に不利に働いてしまうとも言われています。これから日本に帰国するワーキングホリデーメーカーなどの若者がいま何を学び、どのように準備をしたらいいでしょうか。
海外生活から吸収して、学んできた貴重な経験をないがしろにするような企業であれば「こちらから願い下げだ!」ぐらいの気概を持ってよいと思います。たった数年の海外生活でも日本でのほほんと過ごしているより倍以上の濃い経験をすることは可能です。またそこから新しい自分を発見できる可能があるかもしれません。要するに、人が何と言っても自分自身が納得した時間を過ごせればそれは一生の宝となります。
中学2年生の頃に実の母親をガンで亡くされています。それから何をするでも諦め癖がつき、周りのせいにして過ごしてきた少年だったことが赤裸々に語られています。低かったモチベーションをあげるきっかけとはどのようなことだったのでしょうか。また、その後留学をするきっかけとはどのようなことだったのでしょうか。
最初はモチベーションを上げるために本を読んだりセミナーに行ったりしました。ただどんなことをしても次の週には元に戻ってしまう場合がほとんどでした。そこで以前に会ったオーストラリアの叔父のことを思い出し、環境を変えないと自分は変わらないと考えたことが最終的な理由です。ただし最初は特別な目的があったわけではなく、単純に「海外生活で英語ができるようになればカッコいいな!」というものでした。
オーストラリアに来た当時の印象をお聞かせください。
オーストラリアの第一印象を一言で表すとeasygoingですね。あまり細部にとらわれずコアな部分が間違えていなければよいという感じであり、とても新鮮でした(困ったことも多々ありましたが)。
留学当初はLower Intermediateとの英語の評価を受けていた岡さんが、大学進学後、ITエンジニアとして大手日系や外資系への就職を経てIBMでの勤務を果たしています。一方で同じようなチャンスを与えられたケースでも、岡さんのように人生を順調に進めることができない方もいると思います。岡さんが局面において、人と違うことをしてきたと思える行動や思いなどはありますか?
渡豪して最初の後悔は英語の勉強をあまりしていなかったことでした。この時点で、日本できちんと勉強していた人とスタートラインが明確に違い、成果を出すために、人の倍以上の努力が必要でした。他の人と同じように生活しては絶対に追いつけないと思い、苦しかったですが、日本人のいないアコモデーションや仕事を探し、少しでも英語力を伸ばすように努力しました。また、経済的な理由から大学も3年で絶対に卒業しないと行けないというプレッシャーがあったため、学校とバイトの往復の毎日、休みはホリデーだけという感じで生活をしていました。バイト代で生活費を稼ぎながら、単位を落とさないように勉強する生活から「事前に準備をする大切さ」「毎日少しでも勉強する重要性」を学び、日々成長している自分を感じていました。この苦しい時期の貴重な経験があったので、手に負えないような仕事であっても乗り切ることができる能力が身に付き、会社で評価されるようになったと考えています。分岐点となる局面で評価されるかどうかは、大事な場面で腹をくくれるかどうかではないかと思います。
著書の中ではオージーの働き方にも触れています。オージーと日本人の働き方についてそれぞれどのように感じていますか?
一般的に日本の人は会社や上司に評価されるために仕事しています。例えば、効率的な良い方法があったとしても上司に評価されないと思えばその方法をとりません。一方でオーストリアの人は結果がすべてです。過程にはあまりこだわらず、結果を出せば誰にも文句は言われないという考え方です。双方ともに一長一短があるので良い所と悪い所を見極め、そこから最善策を引き出せるのが自分の長所だと感じています。また、仕事におけるコミュニケーション能力の重要性を感じ、同僚や顧客との日々のやり取りに気を使って来たこともプラスに働いていると思います。そのため、職場が日本であってもオーストリアであっても、自分の立ち位置は変わりません。
著書の冒頭では、本を読むことの重要性を綴っていましたが、大学進学のさいにインフォメーションテクノロジーの利便性と重要性を感じています。岡さんにとって紙と電子はそれぞれどのような立ち位置で考えていますか?
紙と電子の違いは単なる媒体の違いだと考えており、ユーザーの需要に応じて最善の媒体を提供することでマネタイズすることができると思います。読み返したり熟読したい内容であれば本や雑誌などの紙媒体の方が絶対に便利ですが、ただ流して読む程度の内容(最新のニュース)であればオンライン媒体で十分だと考えています。
日本からオーストラリアへ渡り、その後日本へ帰国し、今年再びオーストラリアへと戻ってくると伺いました。2度目のオーストラリアでの生活ではどのような計画を立てていますか?
日本に戻って約8年間暮らしましたが、日本は物価も安く、サービスも充実しているので本当に暮らしやすいです。また、仕事も私生活も順調なので、オーストリアに戻ることに対して腰が重くなっていたことは事実です。ただ日本は便利過ぎるので、子供たちには違う生活と価値観を感じてもらいたいと考えて再びオーストリアへ戻ることに決めました。一例を挙げると、日本の教育では、人と違うことをよしとせず、協調性という言葉ですべての子供を同じフレームに押し込め個性を伸ばす努力をしません(没個性)。逆にオーストリアは良い所を伸ばす教育なので、それが子供たちの将来の糧になると信じています。
今後のご予定をお聞かせください。
2回目の渡豪は、再度5年後に日本へ戻ったときに設立を計画しているIT専門学校への準備期間と考えています。現時点で明確な具体案があるわけではないので、最終的にどのような形になるかまだ分かりませんが、これからの数年間は色々な意味で人生の大きな節目になると予感しています。
『一寸のムシにも五分のタマシイ』
内容紹介
「日本なんかクソ食らえだ!」そう思って日本を飛びだした著者。日本で何度も挫折したちっぽけな存在でも、物事を前向きに捉えて行動すれば、何かが起きる。人生は一度きり。あなたの人生をどのようなストーリーにするか、決めるのはあなた自身です。読めばやる気がみなぎるエッセイ。著者自身が挫折や失敗から学んだ教訓が、あなたを変える! Do it now! (今すぐ行動! )
プロフィール
岡涼介
現Pega Japanシニア・システム・アーキテクト。前、日本IBMセールス・スペシャリスト。
1999年にワーキングホリデーで日本を飛び出し、オーストラリアNSW Business Collegeで経営学とマーケティングを学ぶ。その後University of Western SydneyでITを学ぶ。卒業後シドニーで大手日系や外資系でITエンジニアとして勤務しオーストラリアで約10年を過ごす。最後の3年間はIBM Australiaでソフトウエア・エンジニア、問題解決コーチに従事。オーストラリアの月刊誌にコラムなども連載。日本ではITmediaのオルタナティブ・ブログのブロガー。2011年に日本に戻り、IBMで英語クラブIBM Makuhariトーストマスターズを設立し、President/Vice Presidentとしてクラブの立ち上げ、運営に奮起。また震災後に少しでも被災地の人々の役に立ちたいという想いから「検見浜でEnglish」(英語クラス)を立ち上げ、被災地などへ寄付を開始。今年で7年目に突入し、新たに「英語でGoグローバル」というクラスを仲間と一緒にスタート(「親子でGoグローバル」は中止しているが「英語でGoグローバル」は現在も活動中)。日本人では珍しい、Marriage celebrant(オーストラリアNSW州の資格で牧師のように結婚を法律的に認めることができる)の資格保持者。
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