24/10/2018
バスケットボール日本代表ポイントガード
富樫勇樹選手 独占インタビュー
シドニー大学ブライデンズ・スタジアムにて8月10日、オーストラリア・プロバスケットボールリーグNBL所属のシドニーキングスと日本代表の親善試合が行われた。コート内でウォーミングアップする選手たちの中に一際小さな身長の選手がいる。アメリカNBAの下部リーグである Dリーグ(現Gリーグ)を経て、日本プロバスケットボールリーグのBリーグに所属している千葉ジェッツに入団した富樫勇樹選手だ。今回弊誌では、2014年から日本代表のポイントガードとして活躍する富樫選手にインタビュー!
本日(8月10日)対戦したシドニー・キングスの印象をお聞かせください。
6月29日に行われた日本対オーストラリアの代表戦で試合した選手もいましたし、1年前にレバノンにアジアカップで行ったさいに戦った選手もいましたので、もちろん強いという認識はありました。NBAでチャンピオンリングを獲得したアンドリュー・ボーガット(センター)選手もいましたしね。日本代表はフルメンバーで臨めませんでしたが、すごく良い経験になったと思います。シドニー・キングスはアジアの中でも頭ひとつ抜けて強いチームなので、こういうフィジカルと技術の両方があるチームと対戦することができてすごく良い経験になりました。
試合中、ピック&ロールのオフェンスが展開しづらそうでしたね。
そうですね。毎回対戦して感じるのがビックマンの上手さというか、位置取りといった部分が、他国と比較すると常にチーム全体で完成度が高く、そこをどう攻めるのかがポイントでした。以前のオーストラリア代表戦でも日本代表はニック・ファジーカス選手や八村塁選手に頼っていた部分があるので、彼らのいない今日の試合の、特に前半はなかなか攻めあぐねてしまったと思います。
シドニーのプロバスケットボールチームと対戦してみて、オーストラリアのリーグへ移籍を意識したりしますか?
オーストラリアに関しては2~3年前、それこそちょうどアメリカのDリーグに挑戦する頃なんですけど、当時オーストラリアのプロバスケットボールリーグNBL(以下NBL)にアジア枠があって、そのときにお話をいただいたことがあり、挑戦しようかなと思うことはありました。しかし、いろいろなタイミングが重なり、行くことができませんでした(アジア枠は今季2019年シーズンから復活)。オーストラリアは、世界のトップリーグNBAに何人も選手を送っている強豪国であり、すごく良いリーグだと聞いていたので、機会があれば挑戦をしたいと思いますし、常に自分が成長できる環境でやっていきたいと思っています。アメリカのDリーグを経験して感じたことは、日本のリーグだけではなく、他国のリーグも経験することはすごく大事なことだと思うので、若い世代の人たちにはまず1年でも国外に出て経験してほしいと思います。
2019年シーズンに千葉ジェッツと、海外挑戦ありきの契約をされましたが、どこか他国での挑戦をお考えですか?
いや、今の一番の目標はオリンピックに出場することなので特にはありません。自分がそこに向けて一番良い環境でプレーすることがベストだと思っているので、そこが海外なのか日本なのかというところをしっかり自分の中で判断していきたいです。海外に行ったからといって良いわけではないこともDリーグを経験して思いますし、もちろん試合に出る出ないでかなり変わります。チームスタイルによって自分のプレーができないことがけっこうあると思うので、そういう部分で一番良い環境を求めていきたいですね。
日本代表のチームメイト、比江島慎選手が初の日本人選手として、ブリスベン・バレッツと今シーズン契約をされましたが、どう思いますか?
比江島選手の移籍は色々な選手の刺激になったと思いますし、特に彼の性格的なところで、ああいう選手が海外に挑戦するということでみんなビックリしたと思います。海外では生活できないだろう…っていうような性格なので(笑)。1人で英語でのコミュニケーションを取れるっていう感じでもないのに、そんな選手が1人で海外挑戦するっていうのはほかの選手たちにも本当によい刺激になったので、活躍してくれることを願ってます。
NBLに日本人選手が増えることを筆者も願っています。
そうですね。NBLはすごく良いリーグだと思いますし、せっかくアジア枠があるので、チャレンジャーが増えてほしいですね。
ワーキングホリデーや留学生たちに贈る、富樫選手が考える英語や留学の重要性とは。
正直、自分の場合は英語を使って仕事をしたいという気持ちがまったくないのですが、やっぱり高校3年間をアメリカ留学して、いわゆる英語が話せる、普通にコミュニケーションを取れるレベルの英語力が付いてからは世界が広がりました。それこそ海外挑戦するさい、もし自分のスキルがそのレベルにあったとしても英語が話せなかったら、海外挑戦しに行けるかと言われるとすごく悩むと思うんです。今はまったくコミュニケーションの問題がないので、その心配はなく海外に行けますけど。そういう部分で思い切って高校3年間アメリカに渡り、英語を学べたことで世界が広がって、バスケの人生としてもそうですし、バスケの選手として日本でもアメリカ人と英語でコミュニケーション取れるということは大きなアドバンテージになっていますね。英語が喋れるから良いっていうわけではないし、もちろん人によって英語をどう使いたいかはそれぞれ変わってくるとは思いますが、海外に住む、日本から飛び出すということは良い刺激になると思うので、バスケ関係なく、留学というものは本当に良い経験になると思います。
オーストラリア在住でバスケットボールを楽しむ日系の子供さんたちに向けてメッセージをお願いします。
オーストラリアはトップレベルの選手たちを間近で見ることができる恵まれた環境です。彼らを観て学ぶのはスキルアップにすごく大事なことなので、ぜひオーストラリアでたくさんプロの試合を観てもらいたいなと思います。今後オーストラリアで揉まれてBリーグを目指す選手が出てきたら面白いですね。トップレベルの選手を見て成長していってもらいたいなと思います。
取材を終えて
試合後に快くインタビューを受け入れてくれ、写真撮影などにも応じてくれた富樫勇樹選手。目が真っ直ぐで、今までに取材で出会ったプロ選手と同様にプロ特有の集中力や熱さなどを試合中も試合後も感じた。身長が低い富樫選手がアメリカNBAのサマーリーグに挑戦し、日本人史上2人目となるNBAとの契約を勝ち取り、日本ではトッププレイヤーとして日本バスケ会を牽引している姿は本当に輝かしい。バスケットボールはどうしても身長ありきのスポーツ。それでもその中で一際小さな身体の選手が30センチ近く、もしくはそれ以上も身長差のある選手たちを翻弄し、得点やアシストをする姿は、m日本人に限らず小柄なプレイヤーたちにすごく良い刺激になっている。まだまだ日本人は英語が話せないという理由で海外挑戦をする機会が少ないが、英語力や本来なら気にするべきではない些細なことを理由に海外挑戦を諦めたり、悩んだりすることなく、富樫選手のように海外にどんどん出てきて挑戦していただきたいと願う。今回この記事を読まれた方々もぜひ一度、Bリーグはもちろん、NBLや日本代表の試合を観て、バスケットボールの楽しさを感じていただきたい。(文/写真:池谷 宥斗)
富樫 勇樹(トガシ ユウキ)選手プロフィール
1993年7月30日生まれ、新潟県新発田市出身、身長167cm
ポジション:ポイントガード
日本プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の千葉ジェッツ所属。高校時にアメリカの高校に留学し、卒業後の2012年には日本のプロバスケットボールリーグ「bjリーグ」の秋田ノーザンハピネッツに入団。1年目にbjリーグ新人賞を受賞し、2年目にはアシスト王を獲得し、ベストファイブにも選出される。2014年には日本人2人目となるNBA選手契約をDallas Mavericksと結ぶ。2016年に開幕したBリーグでは千葉ジェッツの司令塔としてプレーし、アシスト王を獲得。2017年には天皇杯でもチームを優勝に導き、オールスターゲームでMVPも獲得。
富樫 勇樹選手所属 千葉ジェッツの試合日程
2018-2019シーズンは10月4日から始まり、合計60試合が 行われる予定
試合日程はこちら:https://chibajets.jp/schedule/
チケット購入はこちら:https://chibajets.jp/ticket_info/
Sydney Kings VS比江島 慎選手の所属するBrisbane Bulletsの試合日程
■シドニーで開催される試合
12月29日(土) @Qudos Bank Arena
2月3日(日) @Qudos Bank Arena
■ブリスベンで開催される試合
1月25日(金) @Brisbane Convention & Exhinition Centre
2月1日(金) @Brisbane Convention & Exhinition Centre
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