15/06/2019
シドニー映画祭で、主演映画『僕はイエス様が嫌い』が上映されることから、ゲストとして来豪された吉本芸人のチャド·マレーンさん。先月は来豪目前インタビューということで、メールにてのやりとりであったが、今回は貴重な滞在時間をさいていただき、映画のことはもとより、日本とオーストラリアのお笑いのこと、さらには今日本で大変な話題を呼んでいる「よしもとクリエイティブエイジェンシーの光と影」について熱く語っていただいた。
お忙しいところお時間ありがとうございます。オーストラリアにこられるのはいつぶりですか?
基本的4年にいっぺんだけ帰る感じです♪ オリンピックみたいやなー。
帰るのはいつも出身のパースですか?
世界中行きたい町がいっぱいあるのに、わざわざパースに行こうとは今まであまり思わへんかったけど、去年の8月頃、日本のラグビーチーム「パナソニック•ワイルドナイツ」さんがパースで試合をやるっちゅうので帰ったら、こともあろうに、ええところやったんです(笑)。知らん間にステキな町になってました。
若くてして日本に渡っていますが、オーストラリアが恋しくなることはありますか?
いや全然(笑)。最近のオーストラリア人のノリがどんなのかも分からんし(笑)。でもイメージで言ったら、オーストラリア人ってなんか地味でしょ?みんな「ええやつでいよう!」という感じがあって。カッコつけてないのがカッコいい、みたいなのは、一緒に暮らす分にはいいと思うけど、な〜んかイマイチ面白くない、、、僕が今、宇宙人目線で喋ってますよ(笑)。もっとヘンテコな感じ出してくれれば!というなんとなくのイメージになってます。
やはりそこが日本のお笑いが面白い理由でしょうか?
日本のお笑いはまず、圧倒的な人数の上で成り立っていることが大きいと思います。たくさんの変なのが変なことをやろうとしているから幅も奥行きも出来て、そんな中で細かいところまで追求する人がいるから面白い、と。あと、外国人に日本のお笑いについて聞かれたときに、「芸人になってなかったら犯罪者になってたであろう人がいっぱいいる」と、説明すると、みんなピンとこなくて(笑)。オーストラリアはどちらかというとインテリな人がコメディアンになっている気がして...コメディアンになる人の幅をもっと増やせば、もっと面白くなるのかな、と思っています。
分かりやすくいうと、僕の身内にひとりいるんですよ。僕、ぼんちおさむの弟子でして、師匠の一番弟子で僕の兄弟子になるのがジミー大西なんです。そのジミーちゃんとさんまさんの話が『Jimmy~アホみたいなホンマの話』というタイトルでネットフリックスでドラマ化されてて、海外でも少し話題になったんですが、そこに出てくるエピソードのひとつが興味深い。ジミーちゃんが先輩にご迷惑をかけたので、お詫びとして「反省を態度で見せろ!」と言われるんですけど、「身体を張って反省を示すしかない」と思ったジミーちゃんは、階段の手すりと自分のチン●ンに紐をくくりつけることにしたんです。「痛い!痛い!痛い!」と思いながら下半身丸出しで、ずっと階段の踊り場に立って我慢するんですね。笑わそうと思っての行動じゃなくて、純粋にこれやったら反省しているのが伝わる!と。実話です。もう、ただただ頭おかしいやん(笑)!ドラマを見た外国人はみんなドン引き(笑)そういう人たちが集まっている日本のお笑い界は、おもろいなー、と。オーストラリアのコメディアン、勝てっこないなー、と。そこで勝負しようとも思ってないやろけど(笑)
近年、日本のお笑いがアメリカをはじめ、世界各国でも認知されるようになってきました。日本で活躍するオージー芸人として、日本のお笑いを、ご自身を含め逆輸入したいといった思いはありますか?
僕は高校の頃に初めて日本のお笑いに出会ったんですが、オーストラリアのコメディアンが社会問題を斬ったり、政治批判とかを面白おかしくやってるのに対して、日本の芸人がもっと純粋に「笑わしたろ!」という気持ちで挑んでるように感じたので、日本のお笑いがその分だけ強い、と感じました。だから「日本でモノになれば世界どこでもやっていける」と思って走り出したら、気づいたら20年間、ずっと同じところでジョギングしてて。自分が海外に行くキッカケを作りそびれた(笑)。
んで今、海外にいる芸人たちでいうと、ピースの綾部君やウーマンラッシュアワーの村本君、渡辺なおみちゃんなどが頑張っていて、ゆりやんレトリィバァも有名な番組に出たりして、たいしたもんや!実は僕がよしもとの養成所・NSCでゆりやんの講師もしてたんですけど、昔から知ってる僕の目からして、あの子のいいところも悪いところも全部あの番組で出てしまってて(笑)「あと、もうひと押し!」ですね。ちょっと話が逸れますが、実は彼女の同期で「ぬゅぬゅゅゆゅゅゅゅゅ」という子も居て、彼女の方こそがとんでもないお笑いモンスターなんですけど、まだ誰も彼女のことを知らない。得てして、「ほど良く才能ある人」が勝つねんな〜と、考え深かったです。まぁ、みんな後輩なので、上からモノを言ってますが、彼らの方が先に海外に出てるから、逆に僕の方が後輩か。いや、最初から僕が海外で頑張ってるか。いや、どうでもええわ(笑)みんな、好きなことをやったらええねん!
海外における日本のお笑いについて最後なんですが、僕が注目しているのはウエスPです。海外では「ミスターウエクサ」と呼ばれてるけど、全裸になってする「危険なテーブルクロス引き」のネタをやってる彼こそが日本のお笑いの結晶だと思うんです。彼は日本全国から毎年何百人もやってくるNSCでやりあって、10年後に生活できているのが3組ほどと言われる激戦のなか最後まであきらめらないで、苦労して、十数年貧乏な生活をする中で、やっとあのネタにたどり着いたと思うんです。日本のお笑いが奥深くて幅広いからこそ、あのようなお笑いが出てくると僕は思うんです。ほんまにすごいことやと思います。「これがジャパニーズ・コメディーか!」と思われたら、なんかイヤですけどね(笑)
なので、それを僕がひとりでやろうとしても、ひとりで何ができるねんて思うんですね。日本のお笑い界全体が作りあげるべきのものだから。気が遠くなるとことがあるけど、おもろいからやってみたいと思っています。長い?(笑)
今回はシドニー映画祭で主演映画『僕はイエス様が嫌い』が上映されるため来豪されました。このような形で母国に「ゲスト」として訪れるのはいかがですか?
今まで映画祭でいうと松本人志監督の作品で、カンヌ、ドービル、ロカルノ、トロントなど、「これでもか!」というぐらい豪華なイベントにたくさん連れて行ってもらい、すごく貴重な経験をさせて頂いてるんですが、全部が「英語字幕を作った翻訳家として」の参加で、なんだか、不本意(笑)でも今回は、ちゃんと演者として呼ばれてるから、嬉しい限りです。日本語を覚えて、日本でお笑いが取れるようになって、ここ20年間頑張って、やっと報われたな〜、と。唯一のちょっと惜しいところといえば、芸人は言葉だけが武器なのに、今回の作品で僕、一言も喋ってないんです(笑)台本を読んで、びっくりしたもん。「終始無言って!」いつになったら、うまくいくんやろ?(笑)
奥山監督ははじめからチャドさんをキャスティングすると決めていたそうですが。
そうなんです。「ええセンスしとるな!」と思いました。パックンとか厚切りジェイソンでなくて、チャドで(笑)。でも、ひとつだけ心配がありました。僕がずっとロン毛で、なんとなく「イエス様っぽい」感じだったから声をかけてもらったのかな、と思ったんですが、その直前、監督の知らぬ間に、僕が別の仕事でめっちゃ短髪になってたんです。オファーを出したのに、いざベリーショートのチャドに会ったら、監督の目が点になるんちゃうかな、と思って(笑)でも、ルックス故のキャスティングではなかったみたいです。監督はただただ、チャドの「ネジがちょっと足りない感じ」が欲しかっただけだそうです。やかましいわ!ネジが足りないんとちゃうねん。人より多いんじゃ!(笑)
映画制作時は21歳と、と、とても若い監督さんで、今回の作品も大学卒業制作として挑んだ初めての長編作でしたが、若い監督なので気を使ったりはありましたか?
人にはみな「タイプ」があんねんなー、って思います。「匂い」で分かってしまうモノ。例えば、僕の相方は怒られ役。僕はどちらかというと気を遣われるタイプ。「外国人だから」とかではなくて。線が細いし、なんとなく出してる空気が気を遣わせる(笑)。厳しい日本の芸能界の中でも上下関係が厳しいといわれる吉本でやってきたけど、割とひょいひょいと生きてこれたので。だから、監督は「自分が若いから」僕に気を遣ってた訳ではないと思います。もっとも、監督はそんなことよりも、「とにかく面白くしよう!」ということに専念したと思うので、それが正しい挑み方だと思います。
今回の映画の撮影で一番印象深かったエピソードを教えてください。
監督が一番気にかけていたのが、子供たちに芝居をさせると、芝居くさい感じになってしまうことです。特に小さい頃から劇団などに所属していると「〇〇の事務所の○○と申します、よろしくお願いいたします」と声を張って言うんですが、それが子供っぽくなくて、気持ち悪くて。監督もそれをわかっていたので主演の子供ふたりには台本を渡さなかったんです。「現場でまた言うから、あとはその都度、自分の言葉でたのむ」と。その方がいきいきとした言葉、リアルな言葉になるんですね。そこまでは監督の意図が理解できるんですけど、撮影前に一回は集まって台本読みをしたんです。当然、キッズたちには台本を渡してないから、そこだけ飛ばすんです。僕は主演の子どもとふたりっきりのシーンばかり。本読みの際、ずーっとなにもすることがない。すごい不思議な台本読みでした(笑)
お笑い、俳優、翻訳と多方面で活躍されていますが、今後の目標はありますか?
※6月17日号の誌面にて公開。
最後に今日本では「吉本の光と影」という報道が話題になっています。光が山里亮太さんと女優の蒼井優さんのご結婚で、影がカラテカ·入江慎也さんの闇営業ですが、芸人さんの立場からしてどう思われますか?
※6月17日号の誌面にて公開。
世界各国から映画が勢揃い!
Sydney Film Festival
フェスティバル期間:6月5日(水)~6月16日(日)
会場:State Theatre、Event Cinemas George Street、
Dendy Newtown、Ritz Cinema Randwick、Hayden Orpheum Cremorne、Hoyts Entertainment Quarter、Casula Powerhouse
チケット:大人$21、コンセッション$18、ユース(17歳以下)$14、シニア$12.50
※T&Cはウェブサイトをご覧ください。
WEB: https://www.sff.org.au/
僕はイエス様が嫌い Jesus(All Ages)
日本では5月31日公開が開始される、22歳の新鋭映画監督、奥山大史の初長編昨。地方のキリスト教系の小学校に転校したユラが、「神とはなにか」を問い始める。小さなイエス様役の、豪出身の芸人で俳優のチャド•マレーンが来豪!
日時•会場:6月14日(金)6:10pm •Event Cinemas George Street
6月15日(土)4:30pm •Event Cinemas George Street
Profile
チャド·マレーン
オーストラリア·パース出身。37歳。NSC21期生。1997年、15歳のときに留学生として兵庫県に来日し、日本のお笑いに出会う。98年に再来日し、大阪NSCに21期生として入学。翌年、加藤貴博とコンビ「ジパング上陸作戦」を結成。主にボケを担当。『M-1グランプリ』では8年連続準決勝進出。2009年、コンビ名を「チャド·マレーン」に改名。本業の漫才以外に、俳優、翻訳家、作家、コラムニストなど、幅広いエリアで活躍。2017年には著書『世にも奇妙なニッポンのお笑い』(NHK出版新書)を発表。
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