オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」
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Cheers インタビュー


世界を巡る日本人モデル

渡邊 譲治

22/09/2010

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世界遺産に魅せられて、各国を巡り続ける若者が真に見てきたものは、文化であり、人々の優しさであり、本当の世界の姿であった。2010年、旅の先に豪州・シドニーに辿り着いた若者は、モデルとして活動しながら、現地のありのままの生活の中で人々と触れ合っている。世界文化の縮図ともいえるこの国での日本人としての在り方を、旅人の言葉の奥に見る。

現在、シドニーのモデル事務所に所属しているということですが、どういった活動をされているのですか?

ショー、カタログ、ポスター、マガジンなど、モデル全般の仕事をさせてもらっています。シドニーでした大きな仕事としては、DAVID JONESやMARCSのファッションショーなどがあります。

日本でもモデルとして活躍されていたということですが、日本とオーストラリアでの仕事の仕方に違いはありますか?

オーストラリアの方がノリがカジュアルなので、仕事を楽しむことができますね。日本だとクライアントに気を遣ったりとかで、カチカチと仕事が進行していくんですけど、こっちはもっとファミリー的なノリが強いです。クライアント、モデルから、カメラマン、メイクアップなどのスタッフまで、「皆で楽しくやろうよ」という空気があってとてもやりやすいですね。

所属している「Priscillas Model Management」とはどういったエージェンシーなのでしょうか?

Priscillas Model Management(以下Priscillas)は、オーストラリアではビッグスリーに数えられるモデル・エージェンシーで、モデルの質も高く、一般の方々にも知られているような大きなところです。日本でいうと、オスカーやホリプロといった感覚でしょうか。

Priscillasに入ることになったきっかけは?

日本で所属していた事務所から紹介してもらいました。もともと海外を旅するのは好きだったんですけど、今度は海外に長く住んでみたいなと感じて、そのときに頭に浮かんだのが友達の多くいるオーストラリアでした。そこで「オーストラリアのモデル事務所を紹介してほしい」という話をして、写真やモデル歴を送った上で契約に至ったのが現在のエージェンシーです。契約時に〝オーストラリアではアジア人モデルのマーケットは小さいよ〟って言われたんですけど、それはそれで挑戦のしがいがあると思いやって来ました。

Priscillasの所属モデルを見るとほとんど全員が白人ですが、その中に混ざる数少ないアジア人(日本人)として、意識する部分はありますか?

事務所からは、「表現が〝Strong〟じゃなきゃいけない」っていう風に言われたことがあるんですけど、日本人は白人に比べるとどうしても顔立ちなどが薄くなるので、インパクトという部分は意識するようにしていますね。ただ、普通に写っても白人の陰に隠れてしまうと思うので、どう印象を残そうかと試行錯誤しています。オーディションなんかでもオーラ全開にして、ガツンと行くようにしています(笑)。

来豪する前から〝オーストラリア人の友達が多かった〟ということですが、そういった方々とはどこで知り合ったのですか?

海外での旅の途中に各地で知り合ったりとか、あと僕が六本木で運営していたバーで仲良くなったりしました。そうして遊ぶようになった外国人の仲間にオーストラリア人が多くいたんです。それで仲間もいるし、とりあえず来れば楽しめるだろうという思いが来豪に繋がりました。

これまで世界中の約40カ国を旅してきたということですが、最初のきっかけはどういったものだったのですか?

もともと日本史が好きで国内の史跡巡りをしていたのですが、18歳のときにテレビでアンコールワットの遺跡を見て「すげえ!」と思ったのが海外に出るようになったきっかけです。また実際にカンボジアに行ってみて、その国の貧しさであったりとか、学校の授業では教わることのない現実を見たのが強く印象に残って、「もっと他の国も見て回らないと」と感じたのがその後の旅の動機になりました。

世界を巡る中で起きた感動的な出来事、また、逆に最悪のひどい思い出として残っているエピソードを教えてください。

まず、最悪な出来事はブラジルで帰国の前日にパスポートを盗まれたことですね。結果的にはなんとかパスポートなしで帰ってこられたのでよかったんですけど、最初はパニックになりました(笑)。バスターミナルに座っていたら、あるおじさんが小さい声でぼそぼそと話しかけてきたんです。「何を言っているんだろう?」と思って耳を傾けて集中していると、間もなくどこかに行ってしまって、「何だったんだろう?」と思ったときにはもう腰に巻いていたはずのポシェットがなくなっていました。二人組になって、もう一方の仲間がポシェットを切って持っていくという手口だったんです。

完全にプロの手口ですね。

はい、まったく気付けませんでした・・・。良い思い出で印象に残っているのは、近いところで今年の2月に行った中東のシリアでの旅ですね。日本での一般的な評判でいくとシリアという国は〝怖い〟とか〝危ない〟というものになるかと思うんですけど、実際に行ってみて何よりも強く感じたのは、〝人がすごくやさしい〟ということでした。アラビア語の国なので言葉が通じないこともあったんですけど、常に周囲の人が助けようとしてくれたし、決して裕福ではないのに家に招待してご馳走をしてくれたりと、本当によくしてもらいました。他にもレバノン、ヨルダン、イスラエルなど、中東の国々を回ったんですが、報道されているものとは対極と言えるくらいどこに行っても人も治安も良くて、やはり実際に行って見てみるまではわからないなと改めて感じさせられました。

大学を終えてから、大手銀行でのサラリーマン生活を送っていたということですが、譲治さんはどんなサラリーマンでしたか?

入社したての頃は大きな責任を負わされるわけでもないので、1年くらい気楽にサラリーマン生活を送っていたのですが、年功序列や終身雇用という銀行の特徴もあって、老後までの自分の人生がすべて見えてしまったときに「ここにはいられない」と感じ、退社しました。先が見えてしまったときに、一度きりの人生をこのまま終えたくないと強く感じたんです。

英語は我流で習得されたのですか?

学校とかには行かず、独学でやりました。最初は映画を英語字幕で観たり、ひたすら単語を覚えたりして、ちょっと喋れるようなったなと感じてからは、海外に出てひたすら実践で学びました。現地のコミュニティに入っていって、友達を作るのが一番いい英語学習法だと思います。そういった場に入っていけないという方も少なくないと思うんですけど、僕の場合は、〝シャイ〟とか〝おとなしい〟という日本人の一般的なイメージを覆してやろう、日本人ってこんなに楽しいんだって思わせてやろう、という気持ちで飛び込んでいます。

言葉や文化の異なる人々とコミュニケーションを取るときに一番大事なものは何だと思いますか?

う~ん、酒ですかね(笑)。万国共通で「とりあえず乾杯しよう!」ということになるので。それと世界には英語の通じない地域もたくさんあるんですけど、あきらめずに伝えようとすれば、最後には必ず伝わるんだと思います。極端に言えば、言葉なしでも仲良くなれるんだと思うんです。日本人は伝わらないと思うとすぐあきらめてしまう傾向にあると感じるのですが、伝わるまでトライし続けることで、きっと分かり合えるはずです。

海外での旅が人に気付かせてくれるものとはどういったものですか?

僕の場合は、日本人って恵まれているな、贅沢だなと感じさせられますね。日本にいて日本の水準で暮らしていると、日常のけっこうどうでもいいようなことにくよくよしてしまうと思うんですけど、世界を見ると、それ以上の重荷を背負わされている人たちはごまんといるわけじゃないですか。普通に生活していけない子供もたくさんいたりして、そういうのを目の当たりにすると、それまで悩んでいた小さなことは気にしなくなりますよね。それと各地で様々な人々と出会ったことで、もっと色々なことを許容できるようになって、視野や価値観が広がったと思います。

不況が叫ばれる中、実際に〝恵まれている〟と感じている日本人は多くないですよね。

そうですね。当然、日本には日本の苦悩があるわけですけど、それにしても日本人は「人生もう終わり」みたいなことをすぐに言いがちだと感じます。仕事をクビになったりして挫折すると、まだ人生が終わったわけじゃないのに「もうお終いだ」となってしまう。旅をしていると海外の人から、「日本は裕福で、生活もしっかりしているのになぜ電車に飛び込むんだ?」と聞かれて、説明に困るときがあります。逆にキューバという国は社会主義国ですごく貧しいんだけれども、自殺率は低いみたいなんです。貧しいんですけど、現地で見ていると、人々に笑顔が溢れていて、人生を楽しんでいるというのが伝わってくるんですよね。それに比べて、日本人からはあまり笑顔を見ることができないような気がします。良い国に住んでいるんだから、日本人はもっと笑っていいはずなんですけどね。それはもったいないことだと感じます。

譲治さんが今後、目指していくものはどういったものですか?

まだ行っていない国のひとつにスペインがあるのですが、来年の夏あたりにバルセロナに行こうかなと考えています。スペインもファッションが盛んな地域なので、ぜひまた現地でモデルとして挑戦してみたいですね。まだ長期的なビジョンというのは、はっきりと言えないのですが、人生のときどきでその後の道しるべとなる前兆のようなことが起きるように思うので、そういったものを掴む感覚を大事にしながら進んでいきたいです。

海外のオーストラリアという地に住む日本人にどういった風に過ごしてほしいと望みますか?

せっかく海外にいるわけですから、オーストラリアや海外の文化に飛び込んでいってほしいと思います。常に外に出るようにしていれば、色んなきっかけが転がっているはずです。待っているのではなく、自分から動き続けることが大事だと思います。動けば必然的に色んなものに当たるはずですから。大多数の方々にとっては、限られた時間であり、今しか経験できないことだと思うので、有意義に海外生活を送ってほしいと思います。

渡邊譲治
1982年生まれ、東京都出身。法政大学在籍時、バスケットボール部で活躍しながら世界中を旅する。これまで訪れた国は、38ヶ国。1年間のサラリーマン生活を経て、バーの運営とモデルの活動をした後、2010年4月に来豪。現在、ワーホリメーカーとしてシドニーに滞在し、モデル活動中。著書『track -世界遺産-』(東京図書出版会)。


 

CHEERS 2010年10月号掲載

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