オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」
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Cheers インタビュー


ARCADIA MOTORS社長

相澤一己

壊れた車に再び命を吹き込む

16/12/2009

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諦めが肝心って言うけど、しつこいのもいい。

壊れた車にまた命を吹き込む仕事「Mechanic-メカニック-」。
車の普及が激しいシドニーで今走っている車は、日本をはじめ、ヨーロッパ、アメリカなど世界中から集められた外国車ばかり。しかし日本では廃車になるほど 走り込んだ車も多く、壊れては直してを繰り返している。壊れた車の持ち主はどこがおかしいのか、どうして動かないのか分からないが、「Mechanic」 は魔法のように簡単に直すのだ。
シドニーでそんな魔法をかけ続けているのが、「ARCADIA MOTORS」の社長、相澤一己さん。
オイルで黒くなった真っ赤な作業服を着て、その作業服をまくり上げた腕は良く陽に焼け、手にも爪にもオイルが染み込んでいた。それは私のイメージしていたとおりの自動車整備の"職人"だった。

まず、いつシドニーへ来て、どうしてシドニーを選んだのか聞いてみた。

「81年で、28歳の時。とにかくでかい所へ行きたかったんだよ。当時さ、『PLAY BOY』って雑誌知ってる?男が見るやつ(笑)。それに何だか、海外の行き方やら、ビザの取り方やらの記事があってさ、でかい所はカナダかオーストラリア だって書いてあって、俺寒いの嫌いだから、じゃあ嫁さん連れてオーストラリアにでもちょっと行ってみるかって(笑)。ほんとにただでかい所に行きたかった んだ」

ビザって学生とかで?

「いきなりパーマネント。なにしろ生まれて初めて行く海外だから、そのビザしかいけないんだと思ってた!整備士しながらチンタラやってたのもあるけど、英語がまったく話せないのにビザの申請全部自分でやってたから、25歳くらいの時に始めて、3年かかったかな」

そんな現実離れしたスタートを切り、シドニーに着いた後はどうしたのか。

「着いたその日はキングスクロスのホテル取ってあったからそこに行ったんだよ。まったく酒臭い街だなあって(笑)。そこには3日いたのかな。家を探さない と、と思ったんだけど、とにかく"Hello"って言われても何のことだか分からないくらい英語が出来なくてな。移住者を助ける駆け込み寺みたいな所があ るって聞いて、すぐ駆け込んだ(笑)。そこに来た日本人は俺が初めてだって言ってたから、海外へ出るのに日本人はちゃんと計画立てて行くんだなぁ、って感 心したよ。でもそこでいいスタッフに出会ってさ、その人、休みを使って家を探してくれたり、無職だけど一応パーマネントだから失業保険出るって教えてくれ て、その手続きまで手伝ってくれたんだよな。失業保険は当時2週間で250ドルだったっけね。家賃は週55ドルで、ボンダイのきたない部屋だった(笑)」

家は見つかったけれど、仕事はどうしたのだろう。

「4ヶ月くらいかかったなぁ、やっぱり英語がネックがでね。向こうが何言ってるのか分からないから、公衆電話で嫁さんが書いてくれたカンニングペーパーを ひたすら朗読。"I'm looking for job、I'm looking for job"って(笑)。で、段々向こうが言ってる"OK"とかは聞けるようになるわけよ。すごいゆっくり"See you tomorrow"とか言ってくれてやっと分かった。で、三菱の整備工場で働かせてもらったんだけど、金がなくて工具が買えないんだよ。だって当 時ドルが強くてさ、1ドル250円だったから、片道の航空券で25万とかするんだぜ?こっち来るだけですっからかん。結局おもちゃみたいな工具しか買えな かったよ。一緒に働いてるオージーのメカニックはいいもん持っててさ、そんなのに比べるとやっぱりおもちゃみたいな工具だと仕事も遅くてね。しかも英語が 話せないわけでしょ?バカにされたなぁ」

この時期が1番格好悪かった時期なのだろう。そんな時期をこう語る

「仕事が朝8時からで、もちろんバスで行ってたんだけど、車で行ったら20分30分なのに1時間かかるわけよ。そこで30分のタイムロス。朝の30分は本 当に惜しいよね。で、5時くらいに仕事が終わって、それから6時から9時まで国で運営してる無料の学校へ行ってたんだけど、初日に1から10までのレベル でクラスに分けられるんだ。大体日本人は4か5からのスタートらしいんだけど、俺、1からね。"エー、ビー、シー"なんて言わされて(笑)。そこには6ヶ 月行ったかな。仕事のほうはやっぱりコミュニケーションも取れなくて、しかもまだ工具は高くて手が出なかったから、相変わらず仕事は遅いわけ」

どのくらいで認められるように?

「うん。それでもコツコツお金を貯めてきて8ヵ月後に車買ったんだ。けど、やっぱり安いだけあってすぐ壊れちゃってさ。まあ整備士だから自分で直せるし、 部品をバラして仕事場持っていって、洗ったり、直したりしてたら、工場長が"カズキそんな事できるのか?"って聞いてきて、"できるよ"って言ったら、そ の作業とか見てて、それからかな。今まで本当に簡単な仕事、新車点検とかそんなことしかやらせてもらえなかったのが段々難しい仕事とかやらせてもらえるよ うになってきて。工具だっていいの買えるようになったら一応仕事はできるから、前より全然仕事は早いわけよ。その時今までバカにしてきてた周りの奴らの目 が変わったね。給料も上がったし。普段仕事をする時も工具を借りればよかったんだけど、その時借り方が分かんなかったんだよ。"Giveじゃおかしい し・・・"って(笑)」

そんな相澤さんがその後、「ARCADIA MOTORS」を立ち上げるまでの道のりが気になった。

  「そこでは4年ぐらいやって、次はガソリンスタンドの整備工場に行ったんだけど、そこでヨーロッパやアメリカの車を覚えたね。そこはイギリス人と見習し かいなかったんだけど、そのイギリス人が2ヶ月くらいして突然オーナーとケンカして辞めちゃってさ。俺と見習しかいないのにヨーロッパ車とかアメ車がどん どん来るの。困ったね。日本と、こっちでも三菱の工場だったし、日本車しか分からないから、とにかくいろんな所で直し方を聞きまくった。そこでも4年くら いやったけどいい経験になったなぁ。その後は、知り合いがこの「ARCADIA MOTORS」と同じ場所で整備工場を出すことになって、雇われ店長として働いてたんだけど2、3年位した時突然そこが差し押さえられちゃって。もう土地 も金も全部持っていかれちゃってさ。でもその差し押さえ担当の人に、いついつまでにこの金額を払えるならここの土地を譲りますよ、みたいなこと言われて、 買ってくれる人を探して探して。そしてやっと8年前くらいに、生意気にもこの『ARCADIA MOTORS』が自分の名義になったんだよ。昔はバカにされながら雇われてたのにね(笑)」

何に恵まれていたと思いますか?

「出会った人だろうね。来た時からいい人に出会えてきたからここまで来れたと思う。始めに、着いたばっかりのとき家を探してくれた、あのスタッフから感謝しなきゃな。55ドルの汚ったねー部屋だったけど(笑)、ありがたい」

最後に夢を叶えるには?という質問をした。

「諦めちゃダメだよね。もうダメかなと思っても、ちょっとでも光があれば何とかなる。何とかなるじゃなくて、何とかしちゃう。諦めが肝心って言うけど、 しつこいのもいい。もうダメだって所までしがみつく。恋愛も一緒、しつこいって言われても、言い続ければいつか向こうも諦めるもんだよ(笑)」

何もなかったところから始まったシドニーの生活で、ただひた向きに好きなことをやり続け、ひとつの結果としてこの「ARCADIA MOTORS」を立ち上げた。『好きこそ物の上手なれ』。そんな言葉を教えてくれた人だった。印象的だったのは昔の苦労話をする時にも、絶対にネガティブな言葉を発しなかったこと。「前を向き続ける」。これが相澤さんの成功の答えだろう。

Arcadia Motors Pty Ltd

190 West St Crows Nest NSW 2065
ph: (02) 9955 0125

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