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新年サムライ特別随想・前編 「ライジングサンⅡ/2011年への出撃!」

05/08/2011

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新年サムライ特別随想・前編
「ライジングサンⅡ/2011年への出撃!」

親愛なる読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。2011年が明けました、皆さんはどのような希望や抱負を持ち、元日の日の出をお迎えになられたのでしょうか? 先ずは皆様の益々の健康と繁栄と幸福をお祈りし、不肖、私サムライギターリスト、謹んで此処にご挨拶させて頂きます。つきまして、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

2作目アルバムのリリースを目前に控え、音源修正とCD付録のブックレット製作らの詰め作業に忙殺され、クリスマスと年末年始は問答無用にお預けでした。厳しい締め切りに追われるも、人間、死ぬ気でやれば何とかなるもので、年も明けた5日に一切の作業が完了し、予定日には無事、マスターファイルを印刷工場に納品しました。慌しい年も押し迫った或る日の深夜、日頃から私を敬愛するオーストラリア人生徒で大学生の青年が、アルバムリリースの前祝にと我が家を訪れ、この夜は私にしては珍しく朝まで彼と飲みました。「私にしては珍しく」というのは、永年の疲労からかここ暫く持病を中心に数々の健康上の問題が発生し、体に障る午前様迎えの酒宴は当分、遠慮していたワケなのです。科学的に根拠のない厄年とは言え、厄年齢には何かと体の故障もあると巷では言いますし、四十路が人生の折り返しとはもっとも頷ける話ですので、此処はひとつ若い気持ちを維持しつつ、私なりに用心していた訳です。

さて、この真面目で几帳面な青年生徒に熱燗を傾け、去り往く年の如何を尋ねますと、2010年は踏んだり蹴ったりの誠に宜しくない年だったらしく、それが証拠に、今夜はとうとう愛車に深刻な故障が発生し、某所で車を乗り捨てタクシーで此処までやって来た、とのことでした。車のトラブル云々からふと、「何処で聴いた話だったか?」と心当たりを探っていると、思い出しました。先日、友人のカメラマンが撮影作業を終え深夜、自宅前の路上でほんの僅か車を駐車していると、突然にして車が大破炎上、車載中の2万ドル相当の撮影機材が車と共に灰になったという、とんでもない騒ぎでした。警察の調べでは、不逞な輩がぶちまけた爆破物はガソリンではなく科学薬品だったそうですが、何れにせよ、恨みを買うはずのない彼に起こった事件には我々も衝撃を受け、ふさぎ込む彼には何と声を掛けて良いものやら、まったくをもって痛ましい年の瀬の出来事でした。

この他にも、知人の母親が動脈硬化で病院に担ぎ込まれ、緊急手術で予定していた彼の婚礼がキャンセルになったりと、何に祟られたのかこうした話が周囲で後を絶たず、私自身にしても後厄の仕上げだったような2010年は、総じて当りの悪かった年でした。そうした中、年末恒例に日本から購入します書籍が届くのを待つ間、ふと本棚の蔵書を整理していますと、ビニールに包まれた1冊の未読の古書が目に止り、これを独り静か寝床で開いてみることにしました。買った時は奇抜なタイトルに魅せられたのでしょう、ですが私にしては元々縁遠いトピックのせいか、時は流れて最初の頃の興味は遠ざかり、どうやらそんな理由で未開封だったようなのです。ところがこれが実際、読み始めてみると甚く面白く、その夜から雑念を忘れるほど夢中になったのでした。

ほぼ30年前に刊行されたこの本は、「宇宙開発事業の将来の、人類に対する実質的な効果とは何ぞや?」という疑問を、衛星開発という夢ある事業に永年奉職した著者が、その職歴的観点から件のテーマを冷静に考察したもので、第1部はビッグバンによる太陽系及び球体惑星群の誕生、地球上生物の発生と人類への進化、宗教史観とダーウィニズム、そして第2部の4次元空間とブラックホールへと話は続きます。ここまでは何の変哲もないテキストなのですが、どういう訳かこのあと話は意外な方向に進み、産業革命後の抱える地球の深刻な問題、東西冷戦体制に振り回される後ろ向きな宇宙開発、水力を中心とした電力開発の再度の見直し、原子力発電の合理性と放射性廃棄物の知られざる危険性、そして究極は、「世間が騒ぐほど宇宙空間はエネルギー開発の場には成り得ない」と決め付ける著者が、無責任なマスコミにはことのほか怒りを露にしながら、地球と人類の危なっかしい未来を「宇宙開発の空虚さ」という結論で締め括る、一風変わった内容の書下ろしでした。これだけのテーマを280ページそこそこで纏める訳ですから、話を端折った部分も若干目立ちましたが、30年前の読み物とは思えぬ新鮮さを感じる、読み手にも解り易い優しく穏やかな筆調が印象的でした。

確かに、その著者が文中で強調する、「宇宙は死の空間なるが故に、『宇宙旅行』とはかけがえのない地球への感謝を体感・確認する行為」は、もっともかもしれません。実際問題、いくらスペースコロニーの開発が可能になろうとも、人類が地球上にしか生存できないのも是、事実です。しかし、そういったことよりも私が気になったことは、普段はあまり注意しない太陽の存在です。我々が日々当たり前に享受する陽の光に対し、日頃どれほどの感謝の念があるのか? もし明日、太陽が消滅してしまい、地球が未来永久に日の出を見ないことになれば、人類の生存は不可能なこと間違いなしです。確かに、太陽光には紫外線や赤外線等も含みますが、オゾン層で有害な物質がろ過されて地上に降る陽の光は、皮膚を通し体内にビタミンDを造ります。以前に診察に中った医師が私に、「君の場合、陽によく当たったほうが良いね」と指摘し、なるほど日光浴とはよく言ったもの室内にばかり居ると体には毒で、陽の光がまったく有難く感じる老医の話でした。

話を先頭に戻しまして、西の空が明るみ始めた頃、愛車の故障でしょげ込む青年生徒に最後の熱燗を傾けながら、私は、彼に或る提案をしました。「来る元日の早朝、新たな年を迎えるに当たって、2人で日の出に手を合わせに行こう。君と私はもちろん、私たちだけではない地球上の総ての人々が、無事に過ごせる1年であるようにと願いに…」と。これには甚く来るものがあった様子で、「そんなことは今まで考えたことがなかった。それは日本独自の慣わしなのか?」と彼は訊ねるも、話は直ぐに決まり、約束の早朝、私たちはボタニー湾に近い無人の断崖に立ちました。肌寒さを覚えるも、連日の快晴で空気は澄み空は晴れ渡った、日の出の参拝には絶好な日和の幸先宜しい按配です。断崖背後の丘陵上に据わる、いかめしいコンクリート土台が第二次大戦中のかつて、日本軍の攻撃から沿岸を守る濠州軍の要塞砲跡だったことを説明し、人類の果てしない愚行を2人で論じていますと、東部標準時間の午前5時47分定刻、真っ赤に染まった太陽が僅かな閃光を伴い、水平線の彼方から顔を覘かせました。2011年初の日の出、何と美しいものでしょう。その神秘さに見惚れるや、カサカサコソコソ、何やら足元の草陰で音がします。気が付けば驚くことに、辺りを這い回る無数の野ウサギです。そうか、忘れてた、今年は兎の年でした…。

新年に昇る希望溢れる太陽、その名はライジングサン! そう、歴史とは我々自らが創るもの。過去の過ちを改めたいのならば、我々にできることはただひとつ、昨日の失敗を憂うことなく今日の良心に生き、明日をより良くする努力に徹する他に道はありません。新たな時が刻む中、私たちは日の出の射光を背に、2011年という大海へと出撃を始めたのでした。


●順一T.ウエスト(じゅんいち たかばやし うえすと)
ギター講師、ソロギターリスト。過去15年に渡り、延べ400人以上の生徒を指導。1999年より、シドニーにて「サムライギター教室」を開講。日本での経歴は、神戸を中心にロックバンドのリードギターリストとしてセッションワーク等をこなし、現在、ソングライター、創作家として活動中。2001年、初のソロギターアルバム『Rising Sun/ライジングサン』をリリースし、同年、ギター教室を中心とした総合音楽業務を内容とする、サムライ・ミュージック・エンターテイメント社を発足。同社代表取締役。

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