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風雲サムライギタリスト シドニー音楽街道を行く!


「ライジングサンⅡ/整列! 陸軍幼年学校の子供たち①」

05/08/2011

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新年サムライ 特別随想・中編
「ライジングサンⅡ/整列! 陸軍幼年学校の子供たち①」

発祥地の英国から世界各地に広がり、日本でも約90年の歴史があるボーイスカウトが岐路に立っている。ピーク時は全国で33万人いた会員は現在ほぼ半減。都道府県ごとの組織も統合を余儀なくされ、兵庫県では今春、18から14地区に再編される。少子化や子どもの習い事の多様化に加え、「野外でたき火をしないで」などの苦情が寄せられ、活動の場を追われている現状がある。「こんな時間に何をやってるんだ。早く帰れ」。西宮市のあるボーイスカウト団は昨年夏、午後9時ごろに公園で活動をしていたとき、近所の住民に怒鳴られた。夜間に行う「夜活動」には、暗がりでロープを結ぶ訓練をしたり、星を観察したりする目的がある。だが「最近は、夜に子どもがいると疑いの目で見られてしまう」とリーダーの大垣孝介さん(22)はため息を漏らす。
六甲山を活動範囲にする阪神間のある団は、かつて河原で自由にキャンプをしていたが、近隣から「たき火は危険」などの苦情が相次ぎ、数年前から活動先を公営キャンプ場に変えた。しかし拾ってきたまきや落ち葉を燃やせないなど細かい規定が多く、「本来の野外活動ができる場所は、今やほとんどない」と女性スタッフ(46)。宅地開発で伏流水が止まり、キャンプができなくなった場所もある。日本ボーイスカウト兵庫連盟の倉本武司事務局長は「少年の自立心やリーダーシップを育てる野外活動は、パソコン時代の今こそ大切な存在。地域の理解を得られる努力を続けたい」と話している。(木村信行、神戸新聞デジタルニュースより)


読者の皆様、ご機嫌如何でしょうか。先日、昔の写真が急遽入用になり、ダンボールに眠る色褪せた写真の束を物色していますと、大学時代の下宿仲間で今は港町の故郷に戻り、家業を継いだらしい友人と写る卒業時の写真が1枚、ハラリと床にこぼれ落ちました。ギターを弾いては夜明けまで語り、或る時は論文を助け合うなど、下宿での想い出は尽きません。明石海峡の風が凍てつく寒い夜、いつものようにコタツに足を伸ばし、2人してカップメン片手に無駄話を咲かせていますと、ふと急に、自分が如何に日曜日が嫌いな子供だったかを、くだんの友人は語り始めました。私も色々な意味で「日曜日が嫌いな子」でしたが、彼の場合はどうも異なるようで、その理由とは意外にも、或る幼年団体に所属していたからなのでした。あれから20年と少し。床に落ちた写真がこの夜の語らいを思い出させます。不肖、私サムライギターリストの新年随想、3部構成になりますその中編、では、この辺からお話を進めてみましょう…。

彼が口にした団体名の「日本海洋少年団」。私はこれに異常な興味を覚え、詳しくを彼に訊ねました。結索(けっさく、所謂ロープ結び)や手旗信号、重いオールで漕ぐカッター(短艇)に遠泳と、海軍四等水兵の新兵教練みたいなことをやらされたが、それらは社会に出ても何の役に立たない無意味な活動だった、一人っ子の自分を心配した漁師の父親によって嫌々入団させられた、とのことでした。自分も実は、カブスカウト(以下「カブ」と略す)に小学校時代の数年間、在籍していたと彼に打ち明けました。確かに、友人の海洋少年団と同じくカブでの活動は子供ながら、私にも辛いものがありました。日曜日早朝のゴミ拾いや炎天下の登山、真冬の駅頭で半ズボン制服姿の赤い羽根共同募金はまだ許せるも、ドリフの「8時だョ!全員集合」が見たい土曜の夜に、しんしん底冷えする甲山の麓で「炎の団結集会」と来た日には、これほど殺生な話はありません。また当時の私は、合宿する度に必ず風邪をひくほど虚弱体質だったこともあり、林間キャンプや商船大学での船内宿泊訓練など行ってしまえば最後、戦病兵の如く皆より一足先に家に送り帰され、まったく嫌なものでした。よくは覚えていませんが、恐らく友人と同様、脆弱な体を鍛えるべく親の一存で私を強制的に入団させたはずです(友人の場合は極真空手で体を鍛えていたので、虚弱ではなかった。また友人とは逆に、私は一人っ子ではなかった)。しかし、グズで運動がからっきしだった私にしては、彼ほどまでには団内生活が嫌ではなかった、というのも正直な気持ちでした…。

カブでイジメに遭った人の話をよく耳にしますが、元来にして虚弱で引っ込み思案な私が、幸いにして辛い思いをした記憶がなく、班内にリス(入隊直ぐの最も下の階級)は私ともうひとりのみということもあり、シカやクマの年長者からは随分と可愛がられました。水のない場所での食器の洗い方や、レンザティックコンパス(照準器付き軍用方位磁石)の使い方など、それらは成人してからも何かと役に立ちました。六甲の宿営地ではイノシシ親子が迷い出て大騒ぎになったり、どしゃぶりの雨が降り始めたテントで過ごす夜は家では味わえぬ、堪えられなく愉快なスリルがありました。今から考えると、我慢することや何かに挑戦すること、そして、「自分を一歩前に押し出す勇気」を知らぬ間に、集団生活から学び取ったのだと思います。自分を一歩前に押し出す…、人生にとってこれほど大きな収穫はありません。結局、ボーイスカウトに上がる前に私も退団してしまいましたが、カブでの体験は後々私の人格形成に少なからず、影響を与えたと思うのです。

余談ですが、阪神タイガースや当時の阪急ブレーブス(オリックス・バッファローズの前身)と、私の通った小学校の学区内にはそれら球団選手の邸宅が多く建っていたことから、日曜日の朝っぱらから呼び鈴を片っ端に鳴らしては、出て来た家人に頼んで野球帽や画用紙に選手のサインを貰い、それらが幾ら集まるかを学校で競うタチの悪い遊びが当時、横行していました(競争があまりにも白熱化し、苦情が寄せられたのか校長から禁止令が出た)。カブを退団し暫くした或る日曜日の朝、私も他の野球少年らとつるみ、阪急電車今津線の仁川駅に近い某選手宅の門前でウロウロしていたところ、偶然にも、カブで世話になった隊長とそこでバッタリ出くわしたのです。足早歩調の隊長は以前と変わらぬ調子でサッと私に敬礼すると、「いつでも遊びに戻って来いよッ!」と笑顔を残し、上流のキャンプ場の方向へと颯爽と去って行くのでした。その時、何故か私は白けた場に残されたような、バツが悪い気まずさを覚えました。自分が特に野球狂少年なワケでもなく、さりとて日曜日に何か有意義なことをするでもなし、暇つぶしで他の子たちと下らない遊びに高じている、そんな自分がとても恥ずかしくなったのです。ここでも何かを達成することのできなかった自分、大切な「何か」を捨ててしまった自分、面倒なカブから解放されて嬉しいはずがなぜか空しい日曜日、拭えぬシミのようなものが眩しい隊長の笑みを思い出す度に、心の何処かに後々残ったのでした…。

さて、カブ脱落組ですので私には発言権はありませんが、冒頭の神戸新聞の報道には一抹の寂しさを通り越し、怒りさえ覚えます。かつては焚き火の煙など問題にならなかったキャンプ場、その残地森林との境界ぎりぎりまで宅地開発を許してしまったのは誰か? 夏の夜に子供たちを外に導き、河原で星を観察させたり海岸で六分儀を教える、それの一体どこが悪いのか? 火の怖さなどそこら辺の大人よりも知識は豊富になりますし、そもそもスカウト活動(斥候または偵察の意味)ができないのなら、そんなものはボーイスカウトでも何でもありません。塾通いに忙しく外で遊ばなくなった当節の子供たちを観、私の子供の頃以上に彼らには脾弱さを感じます。そう考えると、グループ活動の意義や野外での生活様式を教えるボーイスカウトそして海洋少年団は、今日の日本社会だからこそなおさら貴重な存在とも思えるのですが、少子化が手伝うとあっては言わずもがなです。「社会で何の役にも立たない無意味な活動…」と吐き捨てるように言った友人に、そのとき私は割り切れないものを感じつつも、苦笑いで場を取り繕うだけなのでした…。(次回に続く)


●順一T.ウエスト(じゅんいち たかばやし うえすと)
ギター講師、ソロギターリスト。過去15年に渡り、延べ400人以上の生徒を指導。1999年より、シドニーにて「サムライギター教室」を開講。日本での経歴は、神戸を中心にロックバンドのリードギターリストとしてセッションワーク等をこなし、現在、ソングライター、創作家として活動中。2001年、初のソロギターアルバム『Rising Sun/ライジングサン』をリリースし、同年、ギター教室を中心とした総合音楽業務を内容とする、サムライ・ミュージック・エンターテイメント社を発足。同社代表取締役。

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