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娯楽記事

UFC 110 in SYDNEY


総合格闘技のメジャーリーグ・UFCオセアニア進出 歴史はシドニーから始まる

23/03/2010

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総合格闘技(MMA)のメジャーリーグ・UFC、オーストラリア初進出。1万6000枚用意されたチケットは、発売当日わずか1時間で完売した。会場を埋めた観客は、約1万8000人。超満員札止め。この数字はACER ARENAが持っていたここ10年の記録を塗り替えた。期待感、熱気、試合内容、ニューヒーローの誕生、これらがすべて完璧な形で重なり合い、興行は予想を上回るほどの成功を収めた。この強烈な磁場の中心にいて、その強力な求心力となっていたのはミルコ・クロコップであり、ヴァンダレイ・シウバであり、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラだった。今はなき伝説の団体PRIDEが生んだスター選手たちである。2月21日はオーストラリアの格闘技シーンにおいて、まさに記念すべき日となった。新たなプロスポーツの参入という意味でも、今後この国のスポーツ文化に大きな影響を与えてくるだろう。武道・格闘技大国に生まれたものとして、また、オーストラリアに住むものとして、この大きな動向から目を離さないでいてほしい。

-Where does he belong to now? - 
ミルコ・クロコップ VS アンソニー・ペロシュ

日本ではヒョードル、ノゲイラらとともにPRIDEの全盛期を支えたミルコだが、2007年にUFCへ移籍してからは、同団体で2勝3敗と本来の力を発揮できていない。昨年9月の「UFC 103」で行われたジュニオール・ドス・サントス戦では得意の打撃で逆に圧倒され、戦意喪失し自分からギブアップする形でのTKO負けを喫した。当然、〝ミルコはもう終わった〟という声が上がっている。崖っぷちのミルコにとっては、一戦一戦が負けられない試合だ。
この日の対戦相手は、ベン・ロズウェルの予定であったが負傷により急遽、地元シドニーの総合格闘家アンソニー・ペロシュに変更された。おなじみの「ワイルド・ボーイズ」で入場してきたミルコ。トランクスにはクロアチア国旗とともに、日本の国旗〝日の丸〟も見ることができる。海外で戦う今も、気持ちは日本にあるということか。それとも一番強かったときの自分を思い出すためだろうか。オクタゴンに入って相手と向かい合うミルコ。無表情な顔つきは変わらないが、気づけば彼ももう35歳。さすがに少し老けたか。前に前にプレッシャーをかけていくミルコ。早くも左ストレート、アッパーをヒットさせる。ブラジリアン柔術がバックボーンのぺロシュは、タックルにいくが、ミルコは冷静に見切り、そのつど上からがぶる。手詰まりになったぺロシュに、ミルコは一方的に打撃を繰り出していく。2R、インサイドガードから顔面めがけて強烈な左ヒジを放つとぺロシュは大流血。ラウンド終了時、ドクターストップとなった。
結果的にはミルコの完勝であったが、対戦相手との格の違いを考えると、この結果を以って簡単に〝復活〟と言うことはできない。PRIDE時代のミルコであれば、もっと早く、もっと鮮やかなKOで勝利していたのではないか? そんな思いも頭をよぎる。PPVでは、第1試合という扱いであったこのカード。我々が見たいのはメインイベントの舞台で凌ぎを削るミルコだ。PRIDE時代を知るファンは、最高に強かったあのミルコをもう一度見たい、そう願っている。

-Return of the legend- 
ヴァンダレイ・シウバ VS マイケル・ビスピン

セミメインでの登場となったヴァンダレイ・シウバ。UFCでのニックネームは〝The axe murderer〟だ。会場で流れた選手紹介VTRには、桜庭和志を右フックでKOするシーンも。PRIDE時代と同じ、あのトランス曲〝サンドストーム〟が場内に流れシウバが登場すると、オージーたちは大歓声で迎え入れる。日本のレジェンドは、海外でもレジェンドとして認知されているようだ。一方のビスピンは、オージーにとって馴染みのあるイギリス出身の選手ながら、入場時からブーイングを受ける。完全にシウバ=ベビーフェース、ビスピン=ヒールという構図だ。UFCでの戦績は、1勝3敗と負け越すシウバだが、常に〝やるか、やられるか〟のスリリングな打ち合いを繰り広げており、その人気はまったく衰えていない。しかし、これ以上の負けが許されないのも事実。相手のビスピンは、UFC戦績9戦7勝の強豪だ。
距離を取り、テイクダウンからの攻略を狙うビスピンだが、シウバはその度にすぐ立ち上がり、スタンドの展開に戻す。フック、ローキックと攻撃の手を休めないシウバに対して、ビスピンは徐々に守勢に回る。2R終了間際には、タックルに来たビスピンをシウバがフロントチョークで捕らえ、渾身の力を込めたが、惜しくもラウンド終了のブザーが鳴り響いた。最終3Rも手数を減らさず打撃を放つシウバは、ラウンド終了間際、パンチの連打で強引に中に入ると、とうとう右フックをヒットさせ、ダウンを奪う。パウンドの連打で仕留めにかかったシウバだったが、再びブザーが鳴り、試合終了。3-0の判定で完勝したシウバは、オクタゴンの柵にまたがり、客席に向かって咆哮。大きな声援を以って復活を祝福された。 今大会で実現するはずだった、「ヴァンダレイ・シウバ VS 秋山成勲」というビッグカード。シウバは試合後のインタビューで「次に誰と戦いたいか?」と聞かれ、「アキヤマ」と即答した。この夢のカードがいつ、どこで行われるのか? 楽しみがまたひとつ増えた。

-Birth of an Aussie hero-
ジョージ・ソテロポロス VS ジョー・スティーブンソン

今大会には数人のオージーファイターが登場したが、その中でもUFC4連勝(すべて一本勝ち)という実績を持つソテロポロスは、世界レベルでの活躍が期待できる一線級の選手だ。メルボルン近郊ジーロング出身のギリシャ系オージーで、柔術の黒帯を保持し、さらにビクトリア州のアマチュアボクシング・タイトルを獲得したこともあるトータルファイター。過去には元修斗ファイターのエンセン井上の下でトレーニングを積んだこともあり、2006年には修斗・横浜大会で青木真也とも対戦している。対するジョー・スティーブンソンは、UFCで10戦7勝のキャリアを持ち、BJ・ペンとの王座決定戦を行ったこともあるライト級のトップコンテンダー。実績ではスティーブンソンが断然、格上となる。
地元代表として入場してきたソテロポロスには、会場が割れんばかりの大歓声が巻き起こる。浅黒い肌でいわゆるアングロ・サクソン系とは明らかに容姿の違うソテロポロスだが、あくまで〝オージー〟として同胞たちからの熱烈なサポートを受けていた。こういったときのオーストラリア人の一体感には圧倒される。他民族国家ならではの興味深い特性を見た気がした。
試合は格上のスティーブンソンに対して、ソテロポロスが打撃、寝技の両方でリードし続け、マウント、スイープ、ラバーガード、アームバー、オモプラッタなど、高度なテクニックを披露。観客はその一挙手一投足を、ときに歓喜し、ときに落胆の声を上げながら見守る。オージーの総合格闘技への理解度が気がかりだったが、寝技や組技の展開も十分に把握し、華麗なムーブには大きな反応を見せていた。完全に試合をコントロールしたソテロポロスは3-0の判定で勝利。勝ち名乗りを受けながら、オーストラリア国旗の入ったTシャツを着ると、沸き起こった大きな歓声に会場が揺れた。
大物ジョー・スティーブンソンを破るという金星とともに、連勝を5に伸ばしたソテロポロスは、これで一気にトップクラスの仲間入りを果たしたといえる。内容でも名勝負と呼ぶにふさわしいファイトを展開し、最も良い試合に贈られる〝ファイト・オブ・ザ・ナイト〟という賞を獲得するなど、観客を魅了した。いかなるスポーツでも、その発展に自国のスター選手は必要不可欠。オーストラリアにおけるMMA人気の主軸となるスター選手がこの日、誕生した。

-For the pride- 
ケイン・ヴェラスケス VS アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ 

2007年のPRIDE消滅から3年、〝柔術マジシャン〟ノゲイラは今もメインイベントの舞台に立っていた。UFC移籍後は苦戦する試合も多くなっているが、2008年2月にはティム・シルビアを破ってヘビー級暫定王者となり、また、2009年8月にはランディ・クートゥアに勝利するなど、最前線で戦い続けている。対するはケイン・ヴェラスケス。デビューしたのが2006年で、日本のファンには馴染みがないが、これまで7戦して7勝6KOという戦績を誇る驚異の新鋭だ。オールアメリカンに2度選出されたレスリングの強豪でありながら、強烈な打撃を武器にして、これまでKOの山を築いている。ヴェラスケスにとってはビッグネームを対戦相手に迎え、真価を問われる一戦。ノゲイラにとっては、再びヘビー級タイトル争いに加わるためにも負けられない大事な一戦だ。
試合はお互いに打撃を交換し合う形で始まった。静かな展開だが、ヴェラスケスが様々なパンチ、キックを織り交ぜて放つコンビネーションは非常にキレがある。クリーンヒットこそないものの、ノゲイラはこのヴェラスケスの動きに対応できていないようにも見える。そう感じたのも束の間、その瞬間はすぐにやってきた。試合開始わずか2分、左ストレートを打ち終えたノゲイラの顔面に、ヴェラスケスが左、右、左と3発のパンチを打ち込むと、ノゲイラは力が抜けたようにダウン。意識が飛んだ状態のノゲイラに、ヴェラスケスがだめ押しのパウンドを連発すると、レフリーがすぐに試合をストップした。
無敗の怪物ぶりを見せつけて、衝撃のKO勝利を収めたヴェラスケス。90年代からMMAを支えてきたノゲイラが、2006年にデビューしたばかりの新鋭に一蹴されるという現実。進化し続けるMMA。今、確実に世代交代の波が押し寄せている。MMAはまた次のステップへと向かっているようだ。

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