21/06/2014
ウエスタンシドニー・ワンダラーズで2年間活躍し、レジェンドの名を残して、オーストラリアを去った小野伸二選手が、次のステージに選んだ札幌の地に足を踏み入れた。J2コンサドーレ札幌(以下コンサ)は、6月14日現在、22チーム中16位。J1に昇格しては降格…そんな歴史を繰り返して来たコンサにとって、小野選手は“救世主”にほかならない。ワンダラーズからの移籍説が流れはじめた今年の1月から、道民はこの日をどれだけ待ち望んだことか。
6月8日、小野選手が北海道入りを果たした。到着した新千歳空港にはおよそ200人のサポーターや40名の報道陣が詰めかけ、花束も贈呈された。「予想以上の人に迎えられてビックリ」と話していた小野選手だが、翌日には、コンサ57年の歴史上初となる、ファンを交えての公開入団会見が、札幌市の大通り公園で開催された。特別に設置されたステージには、報道陣が150名、抽選で選ばれた80名のサポーター、そして日本が生んだ“天才”をひと目見ようと駆けつけたファン300名など、大勢の見物客が集まった。また、スポニチはこの日、9月8日の東京オリンッピック開催決定以来の号外を、『J1使者だ 小野』という大きな見出しで配布した。通常は3000部刷られる号外も、この日は3倍以上の1万部。小野選手に集まる期待が、手にとるようにわかる。
「サッカーを通じてこの札幌をもっともっと盛り上げて、J1に上がれるようにやっていきたいと思います」と意気込むと、大声援に包まれた。
あらゆるチームからのオファーがある中、コンサを選んだ理由に、小野選手は「やりがい」と「しっかりしたチームのビジョン」を挙げた。J1に上げないといけない、そしてしっかり定着させないといけない。その責任感にやりがいを感じた一方で、「結果だけではなく、いいサッカーを見せる」というチームのビジョンにも強く惹かれた。「クリエイティブにやろうと思う一方で、『戦う』ということが薄れている」とチームを指摘する野々村社長は、「シンジは両方、両極端ができる」と述べ、司令塔として、チームの得点能力を高めるほか、若手選手の指導役としてのポジションにも期待が寄せられている。
ワンダラーズでは21の背番号を担った小野選手は、背番号「44」でJ1昇格のに挑む。「コンサドーレで誰もつけていない番号。そして真っ白な気持ちでスタートできれば、という思いを込めました」。過去には「8」「18」「28」と、「8」に愛着がある小野選手だが、“天才”は「4+4=8」としっかりイメージしていた。また赤と黒の縦縞ユニフォームの背面には、「ONO」ではなく、WSWで定着した「SHINJI」の文字が刻まれた。
「僕もひとりの人間ですし、スーパーなサッカー選手ではないですので、自分ができることというものは限られていますが、ただ自分が先頭に立って、必死にやっているところを見せれば、若手も何かをしなければいけないということに気づいてくれると思います」。WSWのポポビッチ監督が以前、「シンジはクリエイティビティとプロ意識をチームに、特に若手選手にもたらす」「いつも誰よりも先に練習に現れ、手を抜くことなく真剣に取り組む」などと絶賛していたことを思い出す。「ひとつの歯車がかみ合えば、いい成績を残せるチームだと思う。少しでもプラスになれる材料を提供できたらと思います」。ゼロからスタートしたWSWが2年連続で決勝戦までたどり着いたように、長年低迷し続けて来たコンサに小野選手が化学反応を起こすのは、もはや時間の問題だろう。
WSWで「サッカーの楽しさを思い出した」と以前語ってくれた小野選手。清水時代は、試合に出場するどころか、ベンチ入りを果たさないこともあった。しかし、ここオーストラリアで、彼はたしかにサッカー人生に新たな息を吹き込んだのだ。第二の黄金時代が到来だ。今年でプロ17年目となる小野選手の活躍から目が離せない。弊誌では今後も同選手の活躍を追って行く見込みだ。なお、Jリーグの次期選手登録開始が7月18日のため、公式戦出場は最速で同20日、ホームでの大分戦となる。
2シーズン目を終えたWSWから、小野以外にも数人の主力選手が去ることとなったのでここで紹介したい。
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ユセフ・ヘルシ #17 90分間ペースを落とさず全力で走る、WSWの主力選手ヘルシは、パース・グローリーとの2年契約が決まった。サッカーキャリアの中でWSWで過ごした2年間は最も濃く、影響があったと話す“フライングダッチマン”ヘルシが、Aリーグでの第2のアドベンチャーを開始する。 |
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アーロン・ムーイー#10 WSWの結成にあたり、主要メンバーであったムーイーは、先きごろプレミアリーグのマンチェスターシティに買収されたメルボルン・ハーツへの移籍が決まった。報道では、同クラブの“オーストラリアン・マーキー”として加入し、司令塔としてMFを務める。 |
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ジェローム・ポレンツ#6 2シーズン続けてスタメンDFとして活躍した、甘いマスクが人気のフルバック、ポレンツは、母国ドイツへの帰国が決まった。現在複数のブンデスリーガのクラブと交渉中だというが、以前小野が所属していたボーフムへの移籍が濃厚と一部で言われている。 |
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マイケル・ビューチャンプ#5 昨シーズンはキャプテンを務めた、センターバックのビューチャンプ。しかし、サッカールズのスピラノビッチの加入から、ベンチを温めることが多くなり、契約延長のオファーはなかった。過去10年で9つのクラブを点々としてきたジンクスか…。 |
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アダム・ディパッゾ#3 左利きのディフェンダーとしてポポビッチ監督に重宝されていたディパッゾ。WSW側から契約延長のオファーはあったが、その内容に同意できず、リリースされた。チームメートいわく、サッカーを引退して、まったく別の道を歩むとか?! |
ウエスタンシドニー・ワンダラーズで2年間活躍し、レジェンドの名を残して、オーストラリアを去った小野伸二選手が、次のステージに選んだ札幌の地に足を踏み入れた。
14日のサンフレッチェ戦を見事勝利で飾り、オーストラリアでは初の快挙となるACL準々決勝へと駒を進めたWSW。最高のプレゼントをチームに残して日本帰国をすることとなった小野は、6月半ばから新天地コンサドーレ札幌に合流する。小野のラストゲームを御覧ください。
AFCチャンピオンズリーグと平行して過酷なスケジュールをこなしてきたリーグ戦終盤ではあったが、蓋を開けてみれば2位通過でファイナルシリーズに駒を進めることができたWSW。しかしファイナルシリーズを迎える前に4月15日のAFCアウェイ戦、22日のAFCホーム戦の試合が残っているため余談を許さない状況が続く。そしてAFCホーム戦の3日後から、いよいよファイナルシリーズへと突入。小野のプレーをオーストラリアで見ることができるのも、残すところAFCを含めてあと3試合のみとなった。小野が移籍した昨シーズンは、リーグ
AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)が開幕し、未経験の過密スケジュールで乱調気味と言わざるを得なかったWSW。3試合連続での黒星から迎えた、3月12日のACL、貴州人和(中国)とのアウェイ戦を何とか勝利で収めることができ、復活の兆しを見せつつある。今後、小野のプレーを見ることができるのは、3月14日時点でリーグでは24節を含め、残り4試合のみ。このまま2位をキープしてファイナルシリーズに突入することに期待したい。
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