オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

reflection 「リフレクション」134


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世界遺産の美景の街のスカル文化

 オーストリアのハルシュタットは大昔から「塩の町」。この世界遺産の街の特産品は、「原始の塩」だ。ここの塩は、二億三千年前の原始の海でできた。約七千年前の岩塩坑が今もあり、塩の交易で大きく発展した。三千年前から世界最古の工場で塩を精製し、ハプスブルク家もここの塩を保護してきた。

 この街には、死者に対する独特の文化がある。教会に付属する納骨堂に陳列された頭蓋骨。およそ600。

 チェコ共和国やドイツに接するこのアッパー・オーストリアでは、かの有名なアドルフ・ヒトラーが一八八九年に誕生し、彼は幼年期の多くを過ごした。

 陳列はヒトラーの趣味かと思う向きあろうが、それは早とちりである。この文化の理解の一助に、ある一人の男性の強い想いを紹介する。

 「ハルシュタットが、素晴らしい死に場所であると思わないではいられない。私の最後の見納めの風景は、雪を被った山々、青色の湖、その湖水を泳ぐ白鳥の陰影。私がやがて向かう天国からは、こういう風景になるだろう。私は、永遠の休息を、かわいい村を見下ろせる納骨堂で費やすことができる」

 教会の左側の通路を抜けて、一六一二年に塩商人のアイスルが寄贈したとされる納骨堂へ。この納骨堂には、新しい墓を作った時、古い墓を掘り起こして出てきた故人の頭蓋骨と大腿骨が収められている。

 ここを永遠の休息場所としたハルシュタットの住人の頭蓋骨は上の段に、頭蓋骨以外の骨格は、オーストリア人たちの山小屋の薪と同じく、きちんと下段に積み重ねられている。故人の名前・生没年月日、生前の職業まで書かれている頭蓋骨もある。生前の金歯がついているものも。ヒヤー。

 頭蓋骨に描かれたモチーフには意味があり、アダムとイブの罪と死を象徴する蛇の模様、樫の葉(名声)、月桂樹(勝利)、蔓の葉(生命)、バラの花(愛情)といった具合だ。だが、東洋人にはなじめない頭蓋骨に文字や絵を描き続けてきたスカル・アーティストに生死観をきいてみたい。

 ハルシュタットは湖と急峻な山の狭い土地にはりつくようにして存在する小さな村。教会の庭園全体が墓地であり、そのすぐ下の地下に棺が埋まっている。納骨堂が建設された十二世紀当時火葬はなく、土葬用のスペースも非常に限られていたことから、埋葬後数年〜二十年後には遺骨を取り出して清め、頭蓋骨を納骨堂に納めていた。ハルシュタットの墓地の土地不足は火葬が大幅に増えて、今は解消されつつある。

 ところが、わがシドニーはいま墓地難。今年から一人一人のスペースが狭くなるハルシュタット化が進む。八畳間で永眠できると思ったら、四畳半で寝ることになる…そう考えた方がよい。

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