オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

reflection 「リフレクション」135


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ブラーニー・ストーン

 写真は、アイルランド南部、コーク州の街ブラーニーにあるブラーニー城。建造途上で建設中止になったような外壁。十五世紀半ばに、マンスター王コーマック=マッカーシーにより要塞として建造され、幾人もの手に渡った。

 ブラーニー城の頂上の城壁にブラーニー・ストーンという石があり、この石にキスすると雄弁になれるという言い伝えがある。マッカーシーは、「紀元一四四六年、強大なるコーマック・マッカーシーによって建設せり」という銘をラテン語で石に刻ませ、城の塔の上部に取り付けたのが、ブラーニー・ストーンの淵源になるのかなと思う。

 ブラーニー・ストーンは、城主のコーマック・マッカーシーが、当時のエリザベス女王に雄弁さとお世辞でやんわりとかわし、降伏せずに忠誠を誓い、当時強大な力を誇っていた女王に巧みな言い逃れや上手な褒め言葉で、まんまと自治権を獲得することができたことに由来するという。

 当時のエリザベス女王は「ブラーニー」という語を「調子のよいお世辞や甘言」という意味で初めて用いた。

 この石へキスするには、命がけの思いがする。その石は、出し狭間の中にある。これは、胸壁の持ち送り支持構造の間に開いた床の開口部で、そこから城壁の下にいる攻撃者に向かって岩石や熱湯、熱した油等を落として城を守る戦術の一つの構造。

 以前は二人がかりで足首を押さえてもらってぶら下がらなければ、ブラーニー・ストーンにキスできなかった。現在では、仰向けになって鉄の柵につかまればキスができる。が、それでも目を開ければ下まで吹き抜けで、結構怖い。

 年間四十万人がこの石にキスをして行くという。私が本を書くために現地を訪問したのは、今からちょうど四十年前。石は変色し…表面のぬんめり感に嫌悪した。軽くキスをしただけで、すぐハンカチで唇をぬぐい、水で洗った。

 いつだったか、アメリカ旅行情報サイトのトリップアドバイザーが「世界一不衛生な観光スポット」に選んだ。見事な選択眼だった。ウィンストン・チャーチル元英首相からスコットランドのコメディアン、ビリー・コノリーまで、多くの著名人の名が掲載されているが、本当にしたのだろうか。

 辞書によれば、Blarneyという語彙には、【名詞】お世辞、甘言。【動詞】 【他動詞】〈人に〉お世辞を言う、〈人を〉甘言でくどく、とある。

 神父プラウトは『雄弁になって、恋しい婦人の寝室に忍びこんで恋人と語るもよし、政治家になるもよし』と書く。

 日本は今統一選挙の季節。昨今、民主主義のもとで、反民主主義の人物が世界的に選ばれる現実。分断を叫ぶ雄弁は不要だ。黙々と平和の民意を汲み上げる非ポピュリズムの実行型の政治家の登場を願いたい。

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