オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

reflection 「リフレクション」137


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どこで死ぬかよりどこで埋葬されるか、か?

 長らく「病院で亡くなるのが当たり前」だった日本。自宅死はとっくに減り、病院死も減少傾向。今や、施設死が増加の一途だ。家族の誕生と死亡も家庭内で手を掛けることなく、より便利なサービスを求め、病院に任せた。それが豊かな暮らし方であると思い込んでしまったことにも、一因があるのではないか。

 この写真は、ベトナム中部で、たまたま私が乗っている車から撮った光景だ。逆光の上に、揺れる車の中から撮ったので、うまく撮れていないのはお許しを頂きたい。バイクが棺を運んでいる。日本ではみられない。ベトナム北隣りの大国、中国には面白い話がある。

 タイ国勤務のときに私と同時期だった中国専門家の樋泉克夫教授(愛知県立大学外国語学部教授)から聞いた話だ。戦前の中国には、棺の帰郷を専門に扱う業者があり、街には「包運霊柩」「包拉霊柩」などと書いた広告が貼られていたそうだ。これは、中身の入った棺の宅配業者とでも考えればよい。当時の満州では、運棺は、主に葬儀屋の主管だったが、葬儀や結婚式に仮小屋を作る棚舗業者だとか、「客桟」(きゃくさん、かくざんの読み方がある)という伝統的な旅館などが引き受けたらしい。

 満州へ中国の他の地方から出張してくる運棺業者で目だったのは、山東省の業者だった。清朝末期、満州への漢民族の移住が認められるようになった。すると、一旗揚げようと山東省から人々が満州へとなびいた。流入者が多い分、満州で亡くなる山東省出身者が多くなるのは、自然の理。山東省からの出張運棺業者が登場してきた。彼らは、満州入りし、満州各地で運棺依頼者から注文を受け、渤海に面した営口や安東でジャンク船に積み、黄海を渡った。

 もっと驚かされるのは、棺に入らず故郷に帰る死体があった。趕屍人(かんしびと)という死体運搬のプロが大金で請け負い、無事に故郷に運び届けたという。立たせたまま死体の両脇に天秤棒を通し、二人一組で前後を挟んで風のように走る。その姿は、まるで三人が一列縦隊で駆け抜けるようだったという。昼間は旅館に寝て、夜の帳が下りる頃起き出し、三人が身支度を整えて旅館の店さきに立つ。趕屍人の連れている黒猫が死体の周りを一周し終わると、運搬人の二人が足踏みをして呼吸を整える。すると、遠目には、まるで三人の息があい、一緒の動作をしているように見えたというのだ。趕屍人は、いつもホーホーホーと、まるでサンタのように低い声を出して、駆け抜けていく。

 こうまでして、故郷の土に執着する彼らには脱帽だ。

 どこで死を迎えるかという問題を抱える我々日本人だが、大国の方は、どこに埋葬されるかを古から考えていたのであろう

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