オーストラリア・シドニーを楽しむための生活情報誌「チアーズ」

イベント

Kentaro Yoshida ヨシダ・ケンタロウ


Artboard 1
イベント期間 02/11/2019~08/03/2020

1871年設立の歴史あるオーストラリア最大の美術館、アート・ギャラリー・オブ・ニュー・サウス・ウェールズで、現在開催中のエキシビション、『JapanSupernatural』。180点を超える日本の美術作品が展示される当エキシビションのエントリーを飾るウォールアートが、〝ライブペインティング〟という形で、アーティストのヨシダ·ケンタロウ氏によって手掛けられた。今月のインタビューは、今国内外から注目を集めているアーティスト、ヨシダ・ケンタロウ氏にフォーカス!

今回アートギャラリーオブ・ニュー・サウス・ウェールズで行われている『JapanSupernatural』(以下ジャパン・スーパーナチュラル)のウォールアートを担当するきっかけとは?

一番最初にギャラリーからコンタクトを頂いたさいは、今回の展示ジャパン・スーパーナチュラルのグッズをデザインしてほしいという依頼でした。そのプロセスの中でアイデアを出していくと、予定よりも多い数のアイデアが商品化に採用されました。その内のひとつの「化け屋敷」というコンセプトをお題にしたグラフィックが、同ギャラリーのヘッド・キューレーターのジャスティン・ペイトンさんの目に止まり、「今回の展示で、ギャラリーの中に、今までの展示にはない新しいインパクトがほしい」ということで、壁画を描くオファーに発展しました。

江戸時代中期に描かれた浮世絵や、レジェンド・アーティスト村上隆氏などが手掛けた作品が並ぶ同イベントの入口に作品を手掛けた、率直な心境をお聞かせください。

お話をいただいた当初は、嬉しいという気持ちと、緊張でやばいなという気持ちが混ざり合った感覚がずっとありました。まず、普段よく描くモチーフのスカルを大きな壁画としてこんな由緒正しい場所に残せたのは純粋に嬉しいです。壁画を描いている最中にジャパン・スーパーナチュラルの展示を観させてもらう機会があり、浮世絵にしても村上隆さんの作品にしても、本やネットでしか観たことがないものが生で見れたときに、とても感動した自分と、本当にこんな方々の作品の入口に自分の絵があって大丈夫かなという不安な気持ちもありました。でも今は、本当に色々な年代、ジェンダー、人種の方から良いレスポンスをもらえているので、本当に参加できてよかったとホッとしています。

今回のイベントでは、日本の幽霊や妖怪を描いた作品が多く展示されています。イベントの趣旨はどういったものなのでしょうか。

日本のさまざまな文化がオーストラリアでも受け入れられていく中で、漫画やアニメといったビジュアルカルチャーもそのひとつだと思います。その中で日本の神話や民謡に出てくる妖怪(モンスター)ってとても独創的でバラエティにとんだ見た目をしているのに、そのことについてオーストラリア人にはまだ浸透していないということがアイデアのひとつだと、ジャスティンさんは話してくれました。その妖怪たちが葛飾北斎などの歴史的な美術作品に出てきて、次には水木しげるさんやスタジオジブリの漫画やアニメーションに出てきて、果ては村上隆さんの作中に登場します。その時代を越えた存在の続き方に、文化的な美しさと力強さがあるということを紹介したいのだとも思います。

Takashi MURAKAMI
'In the Land of the Dead, Stepping on theTail of a Rainbow' 2014 (detail)
acrylic on canvas mounted on wood panel 300 x 2500 cm
The Broad Art Foundation, Los Angeles
© 2014 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co,Ltd. All Rights Reserved
Photo: courtesy Kaikai Kiki


ケンタロウさんが描かれたウォールアートのコンセプトをお聞かせください。

一番メインの壁画は「化け屋敷」という考えをベースにそれを同ギャラリーの建物に当てはめたものです。その後、ジャスティンさんからのオファーからの経緯で話を進めていくうちに、ギャラリーのエントランスホールをすべて壁画で埋めつくせるようなアイデアはないかとも聞かれました。その時に「百鬼夜行」のアイデアのもと、ギャラリーの建物から出てきた妖怪たちがホール全体をパレードしている感じだと、四つの壁画に関連性も生まれるし良いのではないかと考えました。そのアイデアをギャラリーのディレクターのマイケル・ブランドさんを含めたギャラリーの皆さんに話したところ、気に入っていただけたので今回の壁画のプロジェクトを実行する運びになりました。

オーストラリアでアートの基礎を築いたケンタロウさんにとって、今回の作品はある種、西洋と東洋の融合的なテイストに仕上がっているとも言えるかもしれません。今回作品を描かれるにあたり意識したこと、注目点などありましたらお伝えください。

先ほどもお伝えしたように、最初は本当に自分なんかのコミカルな絵でこんな由緒正しきギャラリーに壁画を描いていいのかなと少し困惑しました。それでもギャラリーの皆と話していくうちに、本当に自分のいつも描くような絵を描いた方が良いんだということに気づきました。そうやって気持ちをスイッチできてからは、いつもの感じで描きながら制作自体をとても楽しめました。注目点としてはグッズもそうですが、実際に展示されている浮世絵からコンテンポラリーアーティストの方々の作品に登場する妖怪のリストを事前にいただき、それを元に同じ妖怪を自分のアートワークにも散りばめたので、実際の展示の作品と僕の壁画やグッズを照らし合わせて観てもらえたらと思います。

HYAKKI-YAGYO

今回のイラストにはAR(拡張現実)技術も取り入れられていると伺いました。これはいったいどのようなテクノロジーなのでしょうか。

ARとは人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術で、簡単に言うとスクリーン越しに元々存在するもの(グラフィック)が動いたり変わったり、視覚的に拡張されていくという技術です。今回このARによるアニメーションは当初からの予定ではなく、Appleのイベントをギャラリーがホストするということで、急遽Appleのクリエイティブの方とアニメーターの方と一緒に作成しました。

今回描かれた4つの作品を仕上げるのに、どのくらいの作業時間を要するのでしょうか。

トータルで10日間、ギャラリーからスケジュールをいただいていました。その間は営業時間内に描かなくてはいけなく、毎日ライブペイントという形になったのは、正直少し大変でした。

すべての工程をひとりでされたのでしょうか。

今回はアシスタントの方を2人つけて頂けたので、当初の予想よりもスムーズに進めれました。いつもひとりで壁画を描くことが多かったので、チームを組んでやれることの有難さと、完成度の高さを今回のプロジェクトを通して学ぶことができたと思います。

BAKE-YASHIKI


同イベントのメインとも言える村上隆氏の「死者の国に差し込んだ『虹』の尻尾を踏んだ時」を観て、どのように感じましたか? 何か次作につながるインスピレーションのようなものは受けましたか?

村上隆さんの作品を生で観たときに、レイヤーに次ぐレイヤーで本当に圧倒的で、圧力をすごく感じました。それはひとりで作れる作品ではないと一目でわかるし、チームで手掛ける作品のパワーを目で学べました。それに加えて、日本的な色だったりモチーフが思ったより直接的に使われていて、こういうこともできるんだという気づきもありました。村上さんは日本の2011年の3・11の津波以降、もう一度日本をテーマに作品を作り出したと聞きます。僕も日本生まれの日本人ですし、そのアイデンティティは忘れずに、改めてものを作っていきたいなとは思いました。

これから訪れる方へ今回のイベント全体の見どころなどをお伝えください。

北斎や広重の浮世絵から水木しげるの浮世絵パロディのイラスト、村上隆さんのスカルプチャーからペインティング、松井冬子さんの日本画と、とにかく内容が濃く見応えがあると思います。日本でもこれらの作品を一度に観れることは中々ないと思いますので、とてもオススメです。そのついでに僕の壁画とARのアニメーションも観て楽しんでいただければ幸いです。

レストランやショップからのイラストやデザインの依頼なども受け付けているのでしょうか。

この数年はコマーシャルの仕事から、知り合いやローカルのスモールビジネスまで、幅広いクライアントの方たちとお仕事をさせていただいています。最近は日本からの依頼も増えてきました。それに加えて不定期ですが、個展をしたりグループ展に参加したりといった感じです。

いままでどういった場所でウォールアートを描かれてきましたか?

マンリーのローカルのサーフショップやバーバーから、ブランドのPRキャンペーンのために店内に描いたりとさまざまです。去年は壁画の仕事がまったくなくて、今年は割と多い方なので、このまま壁画も点々と色んなところに残せていけたら良いなと思っています。

今後の予定をお聞かせください。

とりあえず年内でメルボルンにひとつ壁画を描きに行かせてもらう予定です。あとは来年初頭に、ずっと住んでお世話になったマンリーとそのローカルの友達たちに、ありがとうを込めたパーティのような個展を企画しています。詳細が決まりましたらぜひ皆さんにも気軽に遊びに来てもらいたいです。今後も色々なお仕事ができたら良いなと思っています。

Profile
Kentaro Yoshiuda

UTSビジュアル・コミュニケーション学部を卒業後、現地広告代理店での勤務を経て、本格的にグラフィック・アーティストとして活動を開始。国内最大級サーフイベントや、ボンダイで行われた国内唯一のボールスケートボードの大会「Vans Bowl-a-Rama」でのライプペイントを始め、ConverseやLevi's、BillabongなどのアパレルブランドやSingle-Oなどのリテールへのアートワークを提供、Blink-182のUSでのツアーのポスターデザインを手掛けるなど多岐に渡り活躍中。

https://kentaroyoshida.com
@kentaro_yoshida

拡張現実を体験!
Artivive
アプリをインストールして「HYAKKI-YAGYO」(上)と「BAKE-YASHIKI」(左)にかざせば、ARアニメーションが紙面上で楽しめます。

日本美術の大型エキシビション
Japan Supernatural

葛飾北斎から村上隆まで、180点を超える日本美術作品を展示するエキジビション、『Japan Supernatural』。300年以上にも渡り日本で語り続けられてきた妖怪や幽霊、化け物、ものののけなど、日本の“スーパーナチュラル”を題材に、大型インスタレーションやミニチュア彫刻、イラスト、浮世絵ウッドブロックプリントなど、あらゆるジャンルのアートが展示される、同ギャラリー史上最大となる日本アートのエキシビション。

開催期間:11月2日(土)~2020年3月8日(日)
会場:Art Gallery of New South Wales
チケット:大人$25、コンセッション$22、
メンバー$18、ユース(12-17歳)$12
ファミリー(大人2、ユース3)$62
WEB: https://www.artgallery.nsw.gov.au/exhibitions/supernatural/

User comments

コメントを書く

お名前
10文字以下
パスワード
8文字以下
タイトル
30文字以下
コメント ・コメントは全角で500文字まで。
・書き込みはライターの判断で削除される可能性があります。
・詳細はチアーズ利用規約をご覧ください。


関連記事

イベント 02/11/2019~08/03/2020

Kentaro Yoshida ヨシダ・ケンタロウ

21/11/2019

チアーズ編集部

1871年設立の歴史あるオーストラリア最大の美術館、アート・ギャラリー・オブ・ニュー・サウス・ウェールズで、...

アート
Side girl 20190702
Side 2

FOLLOW US

SNSで最新情報をゲット!

NEWSLETTER

メールで最新情報をゲット!

メールを登録する

COUPON

オトクなクーポンをゲット!

全てのクーポンを表示