06/01/2020
オーストラリアの東部で猛威を振るうブッシュファイアー。Rural Fire Serviceによると、山火事のピークシーズン前にも関わらず、すでに4人が死亡、724棟が失われており、被災面積は270万ヘクタールにも及ぶとされている。また今回のブッシュファイアーにより、コアラの生息地の3分の1が焼失したといわれ、コアラの専門家は政府に対して緊急な対策を要求している。今回は意外と知られていないコアラの生態に触れつつ、現在コアラを取り巻く状況、そして今私たちができることについて考えてみたい。
WWFオーストラリアによると、約2ヵ月に渡り各地で燃え続けるブッシュファイアーにより、350頭~1000頭のコアラが犠牲になったほか、多くのコアラが火傷や煙による被害を受け、治療がいまもなお懸命に続けられている。また今回のブッシュファイアーは、コアラの生息地を集中的に襲い、その3分の1が焼失したと言われ、多くのコアラが行き場を失っているほか、今後の生態系への影響も懸念されている。
オーストラリアではブッシュファイアー以前に、森林伐採によるコアラの生態系の破壊が長年議論されており、史上最悪といわれる干ばつも、問題をさらに悪化しているのが状況だ。すでに生息するコアラの95%が失われたといわれ、このままでは早くて2050年、2100年までには確実に絶滅すると専門家は見ている。また、2012年にはオーストラリアの連邦政府が、豪東部に生息するコアラを、絶滅の危険性が高い「危急種」に指定している。
ご存知のように、コアラはオーストラリア固有の動物であり、他の大陸では見られない。しかしオーストラリア国内においても、自然界でコアラが生息するのは、オーストラリアの東部と、一部の南部にある森林地帯やユーカリの林のみとなっている。今回のブッシュファイヤーで被害を受けたのは、ヌーサ、ガネダ、シドニーの3ヵ所を結ぶ“ザ·コアラ·トライアングル”といわれる、コアラの重大生息地のため、「危急種」に分類されているコアラの危機がさらに加速してしまう恐れがある。
草食性であるコアラの主食はユーカリで、必要な水分もユーカリから取るため、水は飲まない(渇水や病気のときなどは、飲むこともある)。コアラという名前も、アボリジニ語の「水を飲まない」に由来すると言われている。
ユーカリは食物繊維が多く、また毒素もあるため、ほかの動物たちは基本的にユーカリを食べることはできない、いわば独占状態であるのだ。コアラはユーカリを食べるさいににおいをかぎ、毒や栄養分がどれだけ含まれているかを感じ取って選んでいるといわれている。コアラのゲノムを解読した研究でも、コアラのゲノムには解毒酵素の情報を持つ部分が、他の哺乳類の約2倍あることがわかっており、また臭覚器のゲノムにも、臭いを嗅ぎ分けるのに役立つ遺伝子が多く見つかっているという。
毒を体内からすみやかに排出できるコアラだが、ユーカリの栄養価は非常に低く、エネルギーを消耗しないように、1日の大半を寝て過ごす。はじめてオーストラリアでコアラを見たヨーロッパの開拓者が、コアラをナマケモノの一種と勘違いしたのも理解できる。
一方で、毒に強い分、コアラには薬が効かないのが、同種を絶滅に追い込むもうひとつの理由だ。ユーカリの毒をすみやかに排出するように、薬もあっという間に外に出してしまう。そのため、コアラを脅かすクラミジアなどの病気の対処を難しくしている。
オーストラリアには600種類を超えるユーカリが生息すると言われているが、コアラが実際に食べるのはこのごく一部と言われ、コアラによっては生涯一種類の木しか食べないものもいるほど、選り好みが激しい動物だ。そのため、今回のようにコアラの重大生息地が被害を受けると、火災自体から逃れることができても、その後食糧不足によって餓死してしまうケースも少なくない。焼けたユーカリが再び葉をつけるのは、早くて数ヵ月後と言われ、1日200~500グラムのユーカリの葉を食べるコアラにとっては死刑宣告に近い。
1日の大半を木の上で過ごすコアラだが、近年、伐採や干ばつにより、住処や食料を失ったコアラたちが、やむ終えず木から降りてくる姿がよく見られるようになった。力強い手足や鋭い爪、そして優れたバランス感覚で木の上で生活できるコアラも、地面に降りると、動きは非常に鈍く、多くが交通事故に遭ったり、犬や肉食動物に襲われたりして命を失っている。今回のような山火事で逃げ遅れてしまうコアラは大半だ。
今回のブッシュファイアーで注目を集めた野生コアラのルイス。火災現場に残されていたルイスを、通りがかった女性が、自身のシャツを脱いで、ルイスをくるんでレスキューした。その救出の映像は世界中に広がり、大きな反響を呼び、多くの寄付金が病院に集まった。しかしルイスはひどい火傷を負っており、その症状も悪化していったため、安楽死させられた。
ユーカリの葉から得られる水分で十分だった“水を飲まない”コアラも、その状況が近年変化してきた。山火事からレスキューされたコアラが、ペットボトルから水を飲む姿を見た方も多いと思うが、シドニー大学が発表した研究によると、コアラは状況に応じてドリンクステーションから自発的に水を飲むことが分かり、また夏の季節はドリンクステーションを訪れる回数が倍になったことも分かった。毒素の強いユーカリの葉の1日の摂取量は限られているため、干ばつにより水分が不足している現在のような状況は、ドリンクステーションがコアラの命綱になる。
コアラが絶滅の危機にいるのは、実は今回が初めてではない。19世紀ごろには、コアラ撃ちが娯楽のひとつとして楽しまれており、その後はコアラの毛皮目的で乱獲されるようになった。コアラの数が激減したことを受け、各州ではコアラを保護する法律ができ、徐々にその数はまた増えていった。しかし、コアラが保護されている一方で、コアラの生息地は十分に守られていないのが現状で、開拓はどんどん進み、コアラは行き場を失っている。2016年にはAustralia Koala Foundationが政府に対してコアラ保護法を策定しているものの、施行には至っていない。
里親プログラム
1年間コアラの里親として資金を提供し、野生コアラの保護の手助けをする。Australia Koala Foundationより可能。コアラ1頭につき月30ドル、コアラの親子の場合は月50ドルを1年間コミット。里親のサティフィケートがもらえるほか、その他ギフトもプレゼントされる。またブリスベンのKoala Foundationを訪れたさいには、サポートしたコアラに実際会うこともできる。
リポート
コアラに限らず、ケガをしている動物を発見したさいは、Wildlife Rescue Serviceに連絡しよう。WIRES: 1300 094 737
コアラショップ
帰国が迫っている方は、“Save the Kola Shop"で、コアラをモチーフにしたオーストラリア産のお土産を購入してみてはいかがだろうか。収益がAustralia Koala Foundationに寄付され、コアラとコアラの生息地の保護に直接利用される。
寄付
Australia Koala FoundationやWWF Australiaを通じて寄付をすることで、植樹プログラムや、コアラのケガや病気の治療費、コアラ保護区の維持や管理、調査など、幅広い分野で使われる。
参考資料
Australia Koala Foundation
https://www.savethekoala.com/
WWF Australia
https://www.wwf.org.au
National Geographic Australia
https://www.nationalgeographic.com.au/
Rural Fire Service
https://www.rfs.nsw.gov.au/
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チアーズ編集部
電話番号
02 99668955
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